リアリストの思考

かつてサラリーマンの平均年収は600万だった。ちょっと身
振りがいい企業で700〜800万だったと記憶する。若い人は
知らないだろうが、一億総中産階級と呼ばれた高度成長時代
である。以降バブルの栄華と退潮、リーマン・ショックを経
て、日本経済は低迷の一途を辿っている…というのが大筋で
の見立てである。私がとくに指弾したいのは小泉・竹中内閣
時代に推し進められた新自由主義だ。この愚策によって非正
規労働者が増え、彼らは企業の単なる雇用調整弁の対象とな
り、不安定な生活を余儀なくされた。アルバイトの時給を現
在1,000円と仮定したら、今や年収200万も夢のまた夢だろう。

一体どうしてこのような世界になってしまったのだろう?
年末から新年にかけての朝日の論調は醜くかった。要するに
かつての栄華を振り返るのではなく、低成長時代を受け入れ、
それに合わせて自身の私生活もシフトせよ、という説教だっ
た。身の丈にあった暮らしといえば何やら文学的だが、実際
は「お前の未来などない」という死刑宣告であり、恫喝であ
る。きっとこの状況のままではバブルを謳歌し優雅なセカン
ド・ライフに手を出している団塊の世代と、現在の若者たち
との間で階級闘争が発生するだろう。そう、村上龍の近未来
小説のように。

若い人と話していて心が痛いのは、もう年金なんか当てにし
ていないという恨み節があること。それだったら今この一瞬
を享楽的に刹那的に楽しめばいいという逆張りがあること。
そこに、かつて日本を支えた中間層の心の豊かさを伺うこと
は出来ない。内田樹や想田和弘といった”リベラルな”論客が
成長しなくてもいいという新たな神話に歩を合わせている様
などまさに噴飯モノであり、知性の退廃という他ない。金銭
で買えないものがあると流布するのは、持っている者たちの
戯れ言に過ぎない。もっと平たく言えば、ある程度の蓄えが
あってこそ心の平静が保たれ、それが音楽や文学といったカ
ルチャーに結び付き、知的な思考の源泉となる。私のような
リアリストは少なくともそう考える。

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# by obinborn | 2017-01-19 01:25 | one day i walk | Trackback | Comments(0)  

追悼:リチャード・イングイ〜あなたに出会えて良かった

リチャード・イングイの訃報が届いた。チャールズ・イング
イとともにソウル・サヴァイヴァーズのヴォーカルとソング
ライティングを担った素敵な兄弟だった。ガレージ・バンド
に始まり、アラバマのフェイム・スタジオを訪れ、最後には
フィラデルフィアの地でシグマ録音を敢行する。その歩みに
ブルーアイド・ソウルの時代が凝縮されていたような気がし
てならない。ぼくが彼らを知ったのはブルーズ・ブラザーズ
がEXPRESSWAY TO YOUR HEARTを取り上げていたから。
ソウル・サヴァイヴァーズの原曲は67年の9月、全米チャー
トで堂々の4位に輝いた。既にヤング・ラスカルズはデビュ
ーしていたけれど、サヴァイヴァーズの情熱もなかなかだっ
た。リチャード・イングイさん、豊かな音楽のありかのこと
をぼくはあなたから学びました。願わくばその土地がこれか
らも耕され、来るべき収穫の季節を迎えますように。

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# by obinborn | 2017-01-17 02:19 | one day i walk | Trackback | Comments(0)  

音楽ビジネスの変遷と自分

輸入盤店の老舗である新宿レコードが代替わりするニュース
を今朝聞きました。ぼくが最初にお店を訪ねたのは大学生の
時で、確か高田馬場での会合の後ブルース・コバーンのLPを
買ったと記憶しています。けっして閉店ではなくあくまで世
代交代とはいえ、ひとつの時代が終わったことを実感させら
れます。レコード店だけではありません。レコード会社、音
楽雑誌、そして肝心の音楽家などあらゆるミュージック・ビ
ジネスに関わる人たちが、今変革の時代に晒されています。

個人的なことで恐縮ですが、音楽の文章を書き始めてから今
年の2月で27年めを迎えます。まあぼくの場合は有名な音楽
評論家の方々と違って、好きな音楽自体がマイナーな分野(
SSW、スワンプ、パブ・ロック、ルーツもの)に偏っていた
せいか、今でもほとんど零細企業のようなものですが、その
間に出会った友人たちは何よりもぼくの宝だと思っています。

そもそもぼくはサラリーマン出身なので、いわゆる音楽業界
の慣習(夕方におはようございますなど)に未だ馴染めない
部分があります。またミニコミ誌を作っていたこともあり、
いつでもそっちに戻っていけるという感覚があります。譬え
が適切かどうか判りませんが、ロス・ロボスが「オレたちは
クラブで演奏することから始まった。売れなくなったらまた
いつでもバー・バンドに戻っていくよ!」(セサース・ロサス)
と発言したことに頷くのです。

ぼくが現役で頑張れるのは正味あと10年前後かな。お陰様で
幾つかの成果を書籍という形で残してこれました。レコード
会社も音楽出版社もかつての栄華を懐かしむのではなく、適
正規模に戻り、もっとマイナーな音楽を開拓していければど
んなに素晴しいことでしょう。

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# by obinborn | 2017-01-16 09:52 | one day i walk | Trackback | Comments(0)  

1月15日:パワー・ポップとパブ・ロックの合同新年会DJでした!

本日(15日)は渋谷TANGLEにて、パワー・ポップとパブ・
ロック・チームの合同新年会DJでした。来てくださった方々
ありがとうございました!以下私のプレイリストです。
*    *    *
UTOPIA/I JUST WANT TO TOUCH YOU
EDGER WINTER GROUP/RIVER'S RISING
RICK DERRINGER/ROCK'N' ROLL HOOCHIE KOO
THE McCOYS/HANG ON SLOOPY
DAVID BOWIE/HERE COMES THE NIGHT
THE WHO/PICTURES OF LILY
THE WHO/I CAN SEE FOR MILES
THE WHO/MY GENERATION
RASPBERRIES/GO ALL THE WAY

〜ONE MORE MILE TO GO〜

GRAND FUNK RAILROAD/ THE LOCO-MOTION

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# by obinborn | 2017-01-15 23:56 | rock'n roll | Trackback | Comments(0)  

サム・クックと冬の歌

大好きなサム・クックの『ハーレム・スクエア・ライブ』を
聞いています。自分にとってはマーヴィン・ゲイとダニー・
ハサウェイとアリーサ・フランクリンとオーティス・レディ
ングそれぞれのライブ・アルバムと同じくらい恒久の輝きを
放っている名盤です。

とにかく聴衆とのコール&レスポンスや演奏の臨場感が半端
なく凄く、サムのよく伸びるハイトーン・ヴォイスとキング・
カーティス楽団との緊密な連携には、本当に感動させられま   
す。1963年1月12日にフロリダ州マイアミにある黒人向けの
クラブで収録された『ハーレム』ですが、実は長い歳月の間
黙殺され続けた挙げ句、やっと陽の目を見てRCAレコーズか
ら正式にリリースされたのは、1985年になってからのことで
した。

63年の社会情勢を振り返ってみましょう。アメリカに限って
みても、公民権のための運動はまだ志半ばでした。それどこ
ろか実際にはもっとひどい差別が平然と行われていた時代で
す。私がドニー・フリッツに直接尋ねた時、彼はこう言って
いました「俺はアーサー・アレクサンダーと二人で南部一帯
をツアーした。よく言われたよ”何で黒ん坊なんかと一緒にい
るんだい?”と。俺はそいつに言ってやったよ”一緒に音楽を
やりたいだけさ!”とね」

今再び、トランプ新大統領の出現によって、アメリカ社会は
混乱の時を迎えてしまいました。海の彼方の人ごとではあり
ません。本来ならば仲良き隣人のはずの日本人と韓国人との
関係が、靖国神社や慰安婦の問題で再び冷え込んでしまいま
した。私たちは今まで一体何を学んできたのでしょうか?

サムは「NOTHING CAN CHANGE THIS LOVE」のなかでこ
う歌っています「きみの瞳の彼方にはアップル・パイが見え
るよ。シェリー・パイのよう。アイス・クリームのよう。ぼ
くは意味なくきみに降参してしまうよ」単なるラブソングが
いつしか人種の壁を超えながら伝わってきます。それがサム・
クックの無垢な声で歌われます。聞き手であるぼくたちはい
つの間にか、サム・クックの歌に夢中になっています。

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# by obinborn | 2017-01-13 21:43 | Trackback | Comments(0)  

1月13日:川上弘美の小説と、ヴァン・モリソンの音楽と

川上弘美さんの連作小説『どこから行っても遠い町』を久し
ぶりに読み直してみた。まずこの人は文章が上手い。参考に
なるとかならないとかいった次元ではなく、書かれた活字か
ら登場人物の息遣いがふわりと立ち上がり、日常の何でもな
い風景や暮らしぶりがくっきり立ち現れる。また掌に収まる
かと思ったら、今この瞬間にも零れ落ちてしまうような切な
さを秘めている。男女の行き違いが、加齢による喪失と気付
きが、大きな時間のなかで自分を見つめることが、さらりと
提示され、またすぐに彼方へと消え去っていく。こんな珠玉
のような作品と再び出会えたことを噛み締める。

音楽も同じことだ。ヴァン・モリソンの歌やソングライティ
ングに示されるのもまた、大きな時間と小さな暮らしのこと。
恒久の流れのなかでの自問や、何かを愛でる心のありかのこ
と。これまでも何度かレビューを書いてきたので、ここでは
繰り返すのを最小限に留めるけれど、少ない音数のなかで多
くを伝えるというヴァンの語法が、近年はより冴え渡ってい
る。抑えた歌唱がじっくりと周りを見渡し、低くなってしま
った声域が、かえって人生の陰影を味方に付けている。そん
な彼の歌を聞ける喜びは何物にも代え難いものだ。

冬至を超え、柚子風呂を終え、七草粥を食べながら正月が終
わった。今年はどんな人たちと出会えるのだろう。どんな人
たちを失ってしまうのだろう。夕方5時の買い出しに出掛けた
ら、以前よりも残っている陽射しが見えた。少しだけ伸びて
いく自分の影を感じた。

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# by obinborn | 2017-01-13 18:39 | one day i walk | Trackback | Comments(0)  

そして木下弦二は今日も歌う


小尾さん、メールありがとうございます。
今日は昨日の機材の引き取りに隣街珈琲に再度お邪魔しました。
店主の平川克美が三波春夫の「チャンチキおけさ」について教えてくれました。
三波春夫はシベリア抑留経験があり、絶望した人たちに明るく歌いたい、という意図があったということだそうです。
「お客様は神さまです」は「神に向かって歌っている」と言い換えても良いのでは、とも仰言ってました。
私は誰でもがそうであるように、先行きに対する不安と明るい兆しが見えない世の中に潰されそうになる毎日ですが、
「お前は歌わせてやる、その代わりに絶望に沈む人たちを笑顔にしろ」と誰かから言われているような気がしました。
できるかわかりませんが。(笑)
もう少し頑張って見ます。

(昨年末のメール書簡より・弦二くんの原文まま)

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# by obinborn | 2017-01-13 14:44 | 東京ローカル・ホンク | Trackback | Comments(0)  

窮屈な言葉、自由な音楽

ある方がブログで最近のニール・ヤングに関して、ポリティ
カルな意識は解るけど、かつてあったようなメロディが乏し
くて音楽的な魅力は今ひとつと書かれていた。また本当に危
機的な状況ならば音楽どころではないのでは?とも。すごく
正直な意見だと思った。ロック・ファンというのはとかく”
生き様”を至上価値として重視し、ディランやヤングならど
んなつまらない作品でも一生付いていきます!的な人たちが
多い。またそうした態度を貫くことがロックだと勘違いして
いる。その部分ぼくは少し違うんだよな。たとえ偉大なディ
ランでもヤングでもエリック・クラプトンでも、駄目なアル
バムを出したらちゃんと指摘する。そういう批評精神をぼく
は大事にしたい。

もう少し観点を換えてみるなら、多くの優れたアーティスト
たちが20代に瑞々しい”名盤”を生み出したことは偶然ではあ
るまい。最も感受性が強く、また吸収する力もある時期にレ
コーディング・アーティストでいられた彼らの幸せを感じず
にはいられない。むろんベテランになっても過去の栄光に溺
れることなくクリエティヴィティを発揮している音楽家はい
る。ぼくの知るところでは『ニューヨーク』のルー・リード、
『センチメンタル・ハイジーン』のウォーレン・ジヴォン、
『COYOTE』の佐野元春などだ。それらはぼくにロックであ
ることの価値を改めて問い掛けてくる傑作だった。

むろん個々の音楽家の”手癖”やワンパターンを愛おしく思う
時はある。それは一人の人間はそれほど変われないのだとい
う生きた証明であろう。新しい作品がたとえ過去の模倣であ
ったとしても、愛するアーティスト/バンドはぼくにも沢山い
る(例えばジョン・フォガティやデイヴ・エドモンズ)それ
でも、もう一人の自分は冒頭のブロガーさんに共感するので
ある。

今日たまたまあるフォーク・シンガーのFBを読んでいて、嘘
寒くなった。その方は自分のアクースティック・ギターに「
大きな変化は小さな願いから」といった旨のステッカーを貼っ
ていた。彼にとってはウディ・ガスリーに似たそれを模したの
だろう。しかしそうして貼られた標語より、もっと豊かにイメ
ージを喚起し、聞き手を遥か遠い土地へと誘っていくのが音楽
の役割ではないだろうか? 窮屈過ぎる言論が跋扈する2017年
の初めに、ぼくはそんなことを考えてみた。

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# by obinborn | 2017-01-10 17:58 | rock'n roll | Trackback | Comments(0)  

下北沢『ストーリーズ』

下北沢の「ストーリーズ」は昔から好きなロック・バーである。
最近はなかなか行けていないのが残念だが、店主の落合さんは
ぼくが最初の本を書いた97年夏、家の留守電にお祝いのメッセ
ージをくれた。またその本が07年の夏に増補改訂版として再び
出た時は、新宿のイベントまでわざわざ足を運んでくださった。
ヴェルヴェッツやルー・リードを愛する落合氏とダウン・トゥ・
アース志向のぼくとでは一見ミスマッチに思えるかもしれない。
しかし時代に流されず、自分のポリシーを守るという点では相
通じるものを感じてきた。こだわりという意味ではこの「スト
ーリーズ」はアナログ専門で、CDプレイヤーは置いていない。
それが奇異に映った頃もあっただろうが、今では時代が一回り
して元に戻ったという印象すら受ける。薄緑色に塗られた木目
のカウンターだけのこの小さな店は、そんな長い歳月をずっと
生き抜いてきたのだった。久し振りに落合さんと再会したのは
2016年秋に行われたヘロンのライブ会場にて。そこでもみんな
と馬鹿騒ぎをするのではなく、ひっそりと壁際に奥様と立たれ
ていた様子が心に残っている。ちなみに店名はデヴィッド・ブ
ルーの『STORIES』から拝借したものであり、そのジャケット
を模したコースターを差し出してくれるのが嬉しい。お察しの
通り、皆んなとつるむのが好きな連中にはあえてお薦めしない。
その代り、個人であることを尊ぶ人たちには佳き伴侶となる店
に違いない。「ストーリーズ」は密やかな交差点であり、そこ
を行き交う隣人たちが、それぞれの物語を語り合う場所だ。

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# by obinborn | 2017-01-09 02:38 | one day i walk | Trackback | Comments(0)  

ボブ・ディラン〜悲しきベイブ

昨年はボブ・ディランの年だった。ファンが浮かれ、メディア
が騒ぎ、レコード会社が特需とばかり大喜びした。だけどもう
こういう馬鹿騒ぎはいい加減にして欲しい。以前も少し書いた
けど、ノーベル受賞後のディランの煮え切らない態度を見てい
ると、彼自身が”権威の側”に名を連ねてしまうことを誰よりも
恐れているのではないか?と深読みしたくなる。そしてさらに
重要なのは、エリオットがいてケラワックがいてギンズバーグ
がいて、そうした過去の偉人たちが築いてきた連綿とした系譜
のなかにたまたま自分もいるのだ、と明言したディランの謙虚
な心映えだろう。

基本的にメディアと大衆の関係というのは、その年のニュー・
イヤーズ・モデルを作り出し、熱狂し、飽きたら冷たく扱い、
最後には三面ゴシップ記事で腐すという方向で成り立っている。
よくテレビで「あの人は今どうしてる?」の芸能人特集が組ま
れる。かつて名を成した子役が現在東京ガスの検針員をやって
いる様が、以前はアイドルとして頂点に立った者が今は全国の
スナックを渡り歩きながら歌う様が逐次報告される。当事者に
してみれば「もういい加減ほっといてくれ!」というのが本音
に違いない。

かつて60年代の中頃にディランがウッドストックで隠遁生活を
始めたのは、自分を追い回すマスコミの喧騒から逃れるためだ
った。フォークの神様と崇められ、左翼運動に利用され、英雄
伝説のなかで消費されてしまうことへの本能的な回避だった。
そう考えると、最初の人気絶頂時に書かれた「悲しきベイブ〜
IT'S AIN'T ME、BABE」の歌詞が、なお一層暗示的に響いてく
る。

俺の窓から出ていってくれ
せいぜい好きなやり方で出ていくがいい
俺はきみが欲しがっていた男じゃないし
きみが必要としていた男でもないんだ ベイブ

きみは言っていたね 誰か強い人を探していると
正しかろうが間違っていようが 自分を守護してくれて
どこのドアでも開けてくれるような人が欲しいと

冗談じゃない
俺はきみが求めているような男じゃないし
きみが必要としていた男でもないんだ ベイブ
(悲しきベイブ)

実際には男女のすれ違いを動機に書かれた歌なのかも知れな
い。それでも最初のきっかけを超えて多義的な様相を帯び、
聞き手それぞれの事情に当てはまっていくのがポピュラー音
楽の面白さだ。今この「悲しきベイブ」を聞き直すと、まる
で冬の朝のように孤独なディランの姿が浮かび上がってくる。
かつては何も持っていない青年だった。今では多くのものを
持っている大人だ。ノーベルを受賞しようがしまいが、夏は
終わり、枯れ葉の季節がやって来て、いつか寒い朝を迎える。

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# by obinborn | 2017-01-08 05:24 | one day i walk | Trackback | Comments(0)  

イアン・マクレガンの思い出

デヴィッド・リンドレー&エル・レイオーXが来日したのは
1989年の春だった。スタジオ盤ではウィリー"スミッティ”
スミスがキーボードを弾いていたが、急遽ツアーに帯同した
のは、当時LAでバンプ・バンドを率いていたイアン・マクレ
ガンだった。そのニュースを聞いて嬉しくなった私は東京公
演のすべてに駆け付けたのだった。

その際読売ホールで撮った写真が、年末の大掃除でふと出て
きた。恥ずかしながら、その時のマックとのツーショットを
公開しよう。彼はフェイセズが解散してからやっと10数年が
経った時期であり、自身のソロ・キャリアに磨きを掛けてい
た。風貌も若さを留めている。私のことを顧みれば当時まだ
30歳になったばかりだった。写っているアルバムはジョニー
・ジョンソン初めてのソロ作。このプレゼントをマックはと
ても喜んでくれた。翌90年3月に行われたロニー・レインと
のツアー時にも私はマックと再会し、ハグし合った。何より
彼が「オビ!」と声を掛けてくれたのが嬉しかった。

あれから長い歳月が経った。膨大な時間の流れを受け止める
一方で、まるでつい昨日の出来事だったような錯覚にも陥っ
てしまう。どちらが本当の実感なのだろうか?それでも彼は
もう亡くなってしまった。その事実を受け止めるまでに私は
かなりの時間を要した。

エル・レイオーXが渋谷クアトロ公演を終えた後、マックは
会場に出て来てハイネケンのビールを差し出してくれた。そ
の時に貰った缶は、大切な一品として今も部屋の片隅にそっ
と置かれている。

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# by obinborn | 2017-01-07 01:27 | one day i walk | Trackback | Comments(0)  

ローリング・ストーンズ〜先鋭と大衆性

最初のGOT LIVE IF YOU WANT ITが人気にあやかった疑似ライ
ブだとしたら、グリン・ジョンズをプロデューサーに据えた『
GET YA YA YAS OUT』はもっと自覚的なライブ・アルバムだと
言えるだろう。新加入したばかりのミック・テイラーの凄さを
見せつけ、時代考証としてはオルタモントの悲劇を想起させる。
そんな意味でもこのアルバムに特別な感情を抱くファンは少な
くないのでは?

本作は1969年の11月27日と28日に行われたN.Y公演の2日間
(昼夜計4回のステージ)から抜粋された作品であり、今であれ
ばB.B.キングとアイク&ティナ・ターナーがオープニング・アク
トを飾った完全版がリリースされている。黒人音楽と共振したス
トーンズという意味でも聞いておきたい。そしてチャック・ベリ
ーの「CAROL」と「LITTLE QUEENE」が原曲より遥かにスロー
ダウンされ、粘っこいビートとともに新解釈されている点に、当
時トレンドになりつつあったスワンプ・ロックの萌芽を感じる。
実際この69年に彼らはアラバマ州マスル・ショールズを訪れ、
「BROWN SUGAR」「WILD HORSES」フレッド・マクドゥエ
ルの「YOU GOTTA MOVE」の3曲をレコーディングしている。

米公民権運動の盛り上がりとパリ革命の時代を横目で睨みつつ、
「俺ら貧しいロンドンっ子は、ロックンロール・バンドで歌う
だけなのさ」と「STREET FIGHTING MAN」で俯瞰したミック
・ジャガーに驚愕する。その一方には酒場に集まる人々の心情
に寄り添った「HONKY TONK WOMEN」がある。いわば新進
の気勢と大衆的な娯楽との止揚(アウフヘーベン)をストーン
ズはまさに実践したのだった。

英作家ニック・ホーンズビーの自伝的な小説『ハイ・フィデリテ            ィ』には、こんな一節がある「ねえ、あなたが付き合ってい
るのは、BROWN SUGARに合わせて”フ~フ~!”なんて拳を
振り上げ騒いでいる愚かな人たちなのよ」そんなガール・フレ
ンドを、主人公はこう宥める「いいかいダーリン、ぼくはもう
そんな時期をとっくにやり過ごしたんだよ。ぼくはストーンズ
が愛おしい。最新のダンスには付いていけないけど、マーヴィ
ン・ゲイのWHAT'S GOING ONを聞いて今も感動する。もっと
素直にならないかい?」

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# by obinborn | 2017-01-06 17:37 | rock'n roll | Trackback | Comments(0)  

NRBQ『GOD BLESS US ALL』

NRBQ史上最強のメンバーによる87年4月のライブ盤が
『GOD BLESS US ALL』だ。今ではテリー・アダムズ
&Qといったニュアンスで活動しているが、この頃はテ
リー(kbd)ジョーイ(b) アル(g)トム(ds)と強者揃い
で、各自の個性が際立ちつつ全員がバンドに貢献すると
いう得難い時期だった。そしてホール・ホウィート・ホ
ーンズが帯同していた。

やはりアル・アンダーソンのキレキレ・ギターが凄い!
そこにピアノとクラヴィネットを両刀使いするテリーが
タメを張り、リズム隊がしなやかなビートで合流すると
いう贅沢さだ。録音された会場はハートブレイク・ホテ
ルといういかにもな名前のラウンジで、全米のロード・
ハウスを回ってきたQに相応しいものとなっている。ク
ラブ・バンドらしく親しげに語りかけてくるロックンロ
ールがどこまでも愛しい。まさに最高のバー・バンドだ!

カバーではビリー・スチュワートの名バラードSITTIN' IN
THE PARKとジョー・タナーのSHAKE, RATTLE &ROLLを
演奏している。なお同時期のQのライブ盤に『DIGGIN'U
NCLE Q』があるので、そちらも姉妹編として併せて聞い
ておきたい。そっちでは何とカラオケでビリー・ジョエル
の「素顔のままで」まで歌っている(笑)

私がNRBQを観たのはこの時から10年以上も経ってからの
ことで、既にアルは脱退していたが、それでも99年と2000
年に行われた吉祥寺のスターパインズ・カフェ公演は今も
心に残る最高のステージとなった。一時期あまりに情熱を
注いだバンドだけに、それからはどうしても後日談的にな
ってしまうことを許して頂ければと思う。なお最後にQサ
ウンドの秘密を解くようなテリーの発言を引用しておこう。

「かつてのセロニアス・モンクはどんなロック・バンドよ
りもスウィングしていたよ!」

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# by obinborn | 2017-01-06 00:13 | rock'n roll | Trackback | Comments(0)  

音楽に罪はない

そもそも何でぼくが差別問題を書くのかといえば、ぼく自身
が外国に行った際に蔑まれたことがあったからだ。サンフラ
ンシスコではJAP!と、ロンドンではYELLOW,GO HOME!と
言われた。むろん、逆に現地の人々との温かい交流もあった
けれど、局地的にこういう言葉を浴びせられたことはぼくに
人種を考えるきっかけを与えてくれた。昔の『ミュージック・
マガジン』にはニューオーリンズのクラブにミーターズを観
に行ったら冷たくされたという日本人の投書があったけ。そ
れらには世界大戦の傷跡があり、血塗られた植民地主義の痕
跡があり、”愛と平和”というスローガンでは到底埋めること
が出来ない、歴史の生々しい現実を感じずにはいられない。

差別撤廃をイシューに掲げて行進するのではなく、普段の暮
らしのなかで克服していく、というのがぼくの大まかな社会
的な態度である。実際に育った環境や生活風習が違う人種を
理解し合うのは難しく、綺麗ごとだけでは済まされない。そ
れらを公明正大な価値観や友愛の精神だけで解決出来るとは
思えない。こう言っては誤解を招くかもしれないが、ロンド
ンでもパリでも人種ごとに居住区の棲み分けがあるのは、彼
らのアイデンティティの保持であり、生き抜いていくための
知恵だろう。画一的なユートピアを夢見るほうがかえって気
味悪い。

この数年ぼくの心を曇り空のように占めているのは、普段は
交流のある韓国や中国の人たちと、ひとたび国家単位の問題
(靖国や慰安婦)になると、何故あれほどまでに意見が二分
してしまうのか?ということだった。日本人が犯した罪を認
めつつ、一方では何故いつまでも謝罪しなくてはならないの
か?もう十分謝ったではないか?という気持にもなる。

その点音楽は素晴しい。人種差別がとりわけ激しかった60年
代のアメリカ南部でも、マスルショールズのスタジオでは黒
人と白人が協力し合って幾多のレコードを作った。メンフィ
スではブッカー・T&MG'sのような黒白混成チームがスタッ
クス・サウンドに貢献した。アメリカン・サウンド・スタジ
オではボビー・ウーマックとレジー・ヤングが腕を競った。
アラバマでのウィルソン・ピケットとデュエイン・オールマ
ンの出会いなどは、最も美しい異人種同士の邂逅だろう。そ
のことをずっと忘れずにいたい。

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# by obinborn | 2017-01-04 16:44 | blues with me | Trackback | Comments(0)  

追悼:石坂敬一氏

大晦日に亡くなった石坂敬一さん。ぼくには東芝音楽工業の
洋楽ディレクターとしてのお姿が馴染み深い。氏が頻繁にラ
ジオにも出演されていた70年代。それはまさにニューロック
の黎明期であり、その鼓動を何とか日本に伝えたいと尽力さ
れていた。ビートルズの『赤盤・青盤』に詳細な年表を付け
るよう進言されたのも石坂氏に他ならなかった。そのお陰で
ぼくのような洋楽少年少女が日本全国に芽生え育っていった。

RCサクセションの問題作『COVERS』の発売を巡って忌野
清志郎さんと意見が対立し「東芝からは出せない」という立
場に立たされた。それは無邪気な音楽青年がやがて大人にな
り、企業側の論理に従わざるを得ないという意味で、とても
他人事と思えない苦々しい教訓を残した。実際どんな”ロッ
ク”と言えども、流通の段階で様々なビジネスの現実に直面
することを思い知らされた事件だった。

「歳を喰ってもオレの好みは変わらないよ」とヤードバーズ
に溯るジェフ・ベックへの愛情を吐露された石坂さんのお話
が耳に焼き付いている。アーティストへの想いが日本盤を発
売することにしっかり結び付いていた佳き時代の音楽ディレ
クター。音楽を取り巻く環境が激変した今の時代にあって、
ぼくが思うのはそんなことだったりする。日本というアジア
の土地にロックという夢を与えてくれた石坂さん。今まで本
当にありがとうございました。心からご冥福をお祈りします。

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# by obinborn | 2017-01-03 02:38 | rock'n roll | Trackback | Comments(0)  

もはや都市伝説となった出禁女にご用心!

今日は性悪女の話をしましょう。むろん実話です。音楽バー
ともなれば、知らない相手でも共通の話題があり近くに座っ
ていれば二言三言会話するのがまあ礼儀ですよね。まして店
主に紹介されたような場合は彼の顔も立てなきゃいけません。
ここら辺をめんどうだと感じる方は一人家で音楽聞いていれ
ばいいんだし。

相手は妙齢のOLさんでした。仮にMさんとしておきましょう
か。ある日のことMさんが「マッド・エイカーズのレコード
が見つからない」と嘆いていました。オレは頻繁にレコ屋さ
んに行くタイプであり、その盤を以前から割と見かけてきた
ので「今度見たら買っておきますよ」と親切心にも声を掛け、
また後日実際に見つけたので、レコをお店に預けておきまし
た。自分が持っていないアルバムならともかく、学生時代か
ら愛聴してきた作品なので、それを探している同好の士とし
てMさんの「欲しい!」という申し出を快く受け止めたので
した。オレもそろそろ後進に伝える役柄かなと思い始めた頃
やったしな。

その後しばらく彼女の姿を見ないなあ〜なんて思っていたら、
Mさんがとんでもない大言壮語を撒き散らしていたので驚愕
しました。曰く「オビさんはレコードを肴に私を口説こうと
している!」といった被害妄想話でした。それを聞いた時、
咄嗟に思ったのは「あのな、オレだって選ぶ権利があるで…
この◯スが!」幾つかのお世辞は言ったかもしれませんが、
人の好意を仇にして返すようなMさんに怒りと失望を感じず
にはいられませんでした。

よくテレビで痴漢と間違われ冤罪になってしまった男性のニュ
ースが報道されたりしますね。被害者の気持がこの時やっと
判ったような気がします。しかもオレの場合は親切心でレコ
を探してあげただけなのに...。こういう誇大妄想のクソ女は
きっと他のバーでも同じようなことを繰り返しているに違い
ありません。

幸いにもバーのマスターが冷静に物事を把握出来る人なので、
オレに同情してくださり、Mさんはしばらくして出禁になった
そうです。まあ自業自得だわな。しゃあしゃあと「お礼にビ
ールでも」なんて言いながら、レコ探しに対する感謝の一言
も労いの一杯もついぞなかったよ!

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# by obinborn | 2017-01-02 11:44 | rock'n roll | Trackback | Comments(0)  

ロンサム・ストリングス『Soundtrack』を聞いて

ロンサム・ストリングスの最新作『Soundtrack』を聞き
ました。前作のアンソロジー2枚組はウッド・ベースを
映し出したジャケットが物語るように、急逝した松永孝
義さんを追悼すべく企画されたものでしたが、その後セ
ッション・マンとして多方面で活躍される千ヶ崎学さん
が正式メンバーとなりました。そんな新たなロンサムに
よる初めてのスタジオ・レコーディングが本作です。

アルバム表題として掲げられたように、今回はサウンド
トラック集からボブ・ディランの『ビリー・ザ・キッド』
ピンク・フロイドやグレイトフル・デッドが参加した『
砂丘』ちょっとマニアックなところではジョン・サイモ
ンの『ラスト・サマー』などに収録されたナンバーを、
ストリング・カルテットならではのアレンジで再提示し
ていきます。その音粒たちによるイメージの自由な飛躍
を隅々まで堪能出来ます。

深いリヴァーブを湛えた桜井芳樹さんのエレクトリック・
ギター、音響派とも渡り合う田村玄一さんのペダル・ステ
ィール・ギター、ブルーグラス特有の臭みから抜け出した
原さとしさんのバンジョー、そして千ヶ崎学さんの古代の
洞窟を探訪していくような思慮深いウッド・ベースが重な
っていきます。たった四人によるインストゥルメンタルの
演奏ですが、余白を残したサウンドスケープの幽玄的な響
きに心奪われるのでした。

斯界でもトップ・レベルの技術を持ち、後進たちから慕わ
れている四人が、持てるテクと想像力を駆使したこの『
Soundtruck』には、音楽する心が満ち溢れています。そう、
まるで架空の大河ドラマを観ているような錯覚に陥ります
し、8ミリ・フィルムの映写機で上映されるモノクロ映画
のような秘めやかさも持ち合わせています。引用されたマ
テリアルの数々を再現するのではなく、ロンサム・ストリ
ングスならではの解釈で大胆かつ繊細に提示する。そこに
ワビやサビといった日本人の感性を感じてしまうのは私だ
けでしょうか?

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# by obinborn | 2017-01-01 18:37 | one day i walk | Trackback | Comments(0)  

2017年の挨拶に代えて〜そしてきみの鳥は歌う

今朝の『耕論』に載った作家・川上弘美さんの語りは
印象的でした。すごく大まかにそれを集約すると、人
類は古代の叡智を大切に守りながらも、その一方で進
歩しようとする欲望を抑え切れない。現に原子力を作
り、近年では人工知能(A1)の研究が進められている。
いわば人間が科学技術の進化とともに、人として制御
出来ない領域にまで踏み込んでしまったことのパラド
ックスが語られていました。

もう少し私たちの身近な生活を顧みても、いい大学に
入って、いい会社に就職し、終身雇用で保障されると
いった昭和時代の規範的な生き方はとうに崩壊してい
ます。結婚ですら最終的な選択肢と考える若者は少な
くなりました。何しろ日本に於ける労働人口の三分の
一が非正規雇用ですからね。自分の将来も見渡せない
のに、とても子供なんか育てられないというのは偽ら
ざる実感でしょう。

これから先どんな未来が待っているのかは誰にも判り
ません。再び大地震がやってくるかもしれない。ニュ
ーイヤーズのイスタンブールで悲劇的な事件が起きた
ように、渋谷や銀座の歓楽街でいつ同じようなそれに
見舞われるかも判らない。そうしたモヤモヤばかりが
まるで曇り空のように立ち現れ、続いていきます。

それでも川上さんはこう提唱します「生まれ育った土
地で喜怒哀楽を素直にあらわしながら、普通に生活が
出来るという、本当にささやかな幸せ」を求めていく
ことを。ぼくが日々考えているのもまさにそういうこ
とです。音楽に疲れたら書物を読んでみる。SNSサー
ヴィスの情報過多に疲弊したら、自分の町を散歩して
みる。そうすることで保たれる心の均衡を愛おしく思
っています。

鳥は今日も歌います。昨日までと同じように歌ってい
ます。

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# by obinborn | 2017-01-01 13:26 | one day i walk | Trackback | Comments(0)  

12月28日の中村まり

28日はsakana、中村まり、ロンサム・ストリングスという
贅沢過ぎるスリーマン・ライブを所沢のMOJOにてたっぷり
堪能した。ベン・ワットとトレイシー・ソーンを思わせる男
女デュオのsakanaは、ポコペンのメリハリある歌唱が過日と
少しも変わらず健在。まるで朝露のように瑞々しい音楽を今
日も届けてくれた。そのことを讃えたい。

二番手の中村まりはまだスタジオ・レコーディングされてな
いTHROUGH MY HEART AGAINや、STILL IN THE SUNなど
新曲を中心に組み立てた構成が新鮮であり、とくにINTO TH
E CLOUDSの鮮烈な歌唱には思わず鳥肌が立った。またカバ
ーではディランのRING THEM BELLSやポール・マッカートニ
ーの「幸せのノック〜LET 'EM IN」を、フォーキーな独自の
解釈で演奏して聴衆たちをたちまち魅了する。中村の”マッカ
ートニー愛”に関しては、まめに彼女のライブに通ってきた者
ならば、Rocky RaccoonやMull of Kintyreが登場した日々を、
懐かしく思い起こされた方々がいらっしゃるかもしれない。

今夜の締めは新作『Soundtrack』をリリースしたばかりのロ
ンサム・ストリングスだ。その新譜からはジョン・サイモン
のLast Summer、ディランのサウンドトラック・アルバム『
ビリー・ザ・キッド』から5曲を束ねながら、インストゥルメ
ンタル・バンドならではのイメージの自由な飛躍へと賭けて
いく。腕達者であり音楽心を持ったストリング・カルテット
ならではの光景だ。その演奏のひとつひとつを記憶出来れば
どんなに素敵なことだろう。

ロンサム・ストリングスはこの夜最後の曲として、故:大原裕
の名曲「旅行」を選んだ。その後のアンコールでは久し振りに
中村まりとジョイントしながら、2011年の記念碑『フォークロ
ア・セッション』に収録されたThe Cuckoo Birdと、ウディ・
ガスリーのHard Travelin'を奏でた。音楽というケメストリーは
遥か時空を超えてやって来る。そんなことを思わずにはいられ
ない夜だった。

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# by obinborn | 2016-12-29 03:21 | 中村まり | Trackback | Comments(0)  

『ブルース&ソウル・レコーズ』誌の最新号に寄せて

『ブルース&ソウル・レコーズ』最新号が届く。特集は
ストーンズの『ブルー&ロンサム』。幾人かのライター
たちが各自の視点からこの”温故知新”作を検証し、言葉
を寄せているが、どうしても知り合いのお二人の文章か
ら読み進めてしまう。私とほぼ同世代と思われる妹尾み
えは「ソロ回しに頼らない」ストーンズ解釈のリトル・
ウォルター曲を、シンバル・ワークまで模したジミー・
リード曲を称える。一方で飲みダチの日向一輝はどうだ
ろう。彼はエディ・テイラー曲のストーンズ演奏につい
て「一発録りゆえ、ミックの歌唱部分にハープはない」
ことを指摘し、だからこそ、そこにブライアンの存在を
感じまくるのだと語る。いずれもブルースを深く聞き進
めてきた者ならではの洞察だ。だが彼らはマニアックな
地点に着地するのではない。妹尾はブルースをエンター
ティメントまで昇華させたストーンズの姿を評価する。
日向は一生懸命なミック・ジャガーの歌とハープに比喩
ではない青さを感じ、遥か年長者の音楽に驚愕する。

音楽について書かれた文章はそれこそピンからキリまで
ある。優れた評論が何であるか、また誰が書いたものか
どうかは意見が分かれるだろう。しかし、真逆にあるバ
ータ記事は多い。なかには音楽専門誌よりも一般新聞や
メガショップの広告誌のほうが遥かに身入りがいい!と
公言するクソ音楽評論家もいるくらいだ。そうした醒め
た(諦めた)認識が跋扈するなか、終始気持良く『ブル
ース&ソウル・レコーズ』誌を読み進めた。むろん音楽
を聞きながら。そう、今夜の私の友はジミー・リードの
『I'M JIMMY REED』だ。レコード・プレイヤーは二度
めのHONEST I DOを再生し、やがてB面にあるLITTLE
RAINを奏でてゆく。

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# by obinborn | 2016-12-26 01:26 | blues with me | Trackback | Comments(0)  

小池真理子『望みは何と訊かれたら』

小池真理子『望みは何と訊かれたら』(07年)を再読。
あの忌まわしい連合赤軍事件をモチーフにしながら学園
闘争の時代を検証している。高邁な思想が平気で他者を
傷付け、排除し、自己目的化していった顛末をリアルに
描き切っている。こればかりは70年代の序盤に学生だっ
た作者にとって避けては通れない主題なのだろう。事実、
小池さんの小説はこのテーマを扱ったものが多い(直木
賞に輝いた96年作『恋』はその最たるもの)

裏テーマはこれまた作者が得意とする男女の秘めやかな
関係であり、そうした個人的な事項と集団が暴走した時
の怖さを対にした小説の構成は流石だと認めざるを得な
い。ところで、学園闘争の反省も虚しく90年代半ばには
オウム真理教が世間を震撼させる。その事件を今なお生
々しく記憶されている方々は少なくないだろう。

時代の雰囲気。もっともらしい主張。それらに吞み込ま
ていった若者たち。それらを思い返すたびに私はその場
から離れたくなる。加齢とともに遠近法で学園闘争の季
節を振り返りながら、私はこう思うのであった。「もう
まっぴらだ。誰かのスローガンに従う下部になるなんて」

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# by obinborn | 2016-12-25 18:36 | 文学 | Trackback | Comments(0)  

大宮のレコード店、GRIS GRISを再訪しました!

今日は天気は今いちでしたが、久し振りに大宮のグリグリ・
レコードまで行き、念願のソウル・サヴァイヴァーズ『TAK
E ANOTHER LOOK』(ATCO SD33-277)を購入してきまし
た!ワーナーの名盤探検隊でCD化されたとはいえ、やはり米
オリジナルLPを入手出来た喜びは格別ですね。思わず店番し
ていたスタッフの方に記念撮影をお願いしちゃいました(笑)

7年ぶりに訪れたグリグリさん。懐かしかったな〜。およそ
一時間ほど堀り、旧交を温めるべくおしゃべりに花が咲きま
した。「震災後は音楽の聞き方が変わってしまいました」と
いう非常にデリケートな問題から”ディラン特需”のヨタ話ま
で。ついでにアナログで欲しかったレニー・ブランク『HOU
ND DOG MAN』(BIG TREE BT76003)も安価でゲット出来
ました。めでたしめでたし。

長い歳月が嘘のように、つい昨日までお店で親しげに会話し
ていた自分と店員さんとの姿が思い浮かびます。大宮の周り
の景色もあまり変わっていなかったし、ふと、あと10年経っ
ても20年経っても、オレずっとこの場所に来れたらなあ〜。
帰り道、そんな気持がどうしようもなく溢れ出てきてしまい
ました。

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# by obinborn | 2016-12-22 17:16 | one day i walk | Trackback | Comments(2)  

俺は「いいね!」などしない

先日ある音楽家に「オビさんはとくに”いいね!”しなくとも
いつもライブに来てくれるから大変嬉しいです」と言われた。
そう、皆さんもご存知の通り、俺は自分が間違いなく行く(
と決まってる)イベントにしか”いいね!”を押さないポリシー
を貫き、たとえ行く時もいいね!などめんどうなのでしない
ことが多い。あるバンドのライブ告知に60人のいいね!があっ
たとしよう。その60人全員が来てくれたらパフォーマーもお
店もお客さんもハッピーになる。そういう想像をもっとしてみ
ようよ。こんなこと言ってる俺自身、過去行かないライブにつ
いいいね!して激しく後悔したことがあるのだが、それ以来FB
の安易な装置は人間関係の誤解のもとになると感じた。

ところが俺とは逆に何でも節操なくいいね!しまくる割に一度
も会場で見たことがない人がいる。価値観の違いと言ってしま
えばそれまでだが、人として安っぽく見られてしまうのは致し
方ないだろう。狼が来るよの”狼少年”ならぬ”狼ジジイ”であり、
この◎氏はとにかく嫌われている。何が「応援の気持です」だ
よ。応援や心配や近況報告だったら直接メールやラインするの
が一番いいじゃんか。要は自己アピールや顕示欲でしょ?こん
なジジイと一緒に酒など飲みたくはないわな(苦笑)
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# by obinborn | 2016-12-22 07:11 | rock'n roll | Trackback | Comments(0)  

12月20日の佐野元春&コヨーテ・バンド

20日は佐野元春&コヨーテ・バンドを恵比寿ガーデンにて。
恒例のクリスマス・ライブながら、近年の曲を固め打ちする
展開が清々しい。剥き出しのギター・ロックそして情熱。

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# by obinborn | 2016-12-21 00:22 | rock'n roll | Trackback | Comments(0)  

大宮のGRIS GRISに行こう!

大宮のレコード店GRIS GRISは昔から大好きなお店です。
以前は北浦和に姉妹店のSLIM CHANCEがあったのですが、
こちらは惜しまれつつも閉店し、現在は一本化したGRIS G
RIS本店で頑張っています。オールジャンルの中古盤をメイ
ンにしながらもお薦めの新品を扱っているのがユニークで、
デッドやルーツ系の品揃えが抜群です。店主の三平さんと
は古くからの知り合いですし、ぼくが骨折して入院していた
時に従業員の女性がお見舞いに来てくださったり、忘年会に
呼ばれたりと、個人的なお付き合いもあります。

それでも最近は家から遠いせいもあって、すっかりご無沙汰
になってしまいました。そんな時に飛び込んできたのが、隅
田さんからの「グリグリにソウル・サヴァイヴァーズのセカ
ンド・アルバムがあるよ」という嬉しい知らせでした。早速
久し振りに三平さんに電話をし、取り置きをお願いしました。
たぶん年内にはお伺い出来ると思います。

レコード店に限らず、好きなお店が無くなると皆さんは「残
念です。あんなに良心的だったのに...」と口を揃えたように
話す。ぼくもその一人かもしれませんが、最近は「あとで悔
いを残さないように通おう!」という建設的な考え方が好き
ですね。そうそう、残念!とかネットで呟いてる人達に限っ
て実はあまり通っていなかった、というデータも小売業界に
はあるらしいです。これ、当事者にとっては切実ですよね。

大宮駅を東口に出て商店街を抜けた辺りにお店はあります。
またすぐ近くには有名な氷川神社があり、森林豊かなその参
道に寄り道するのもぼくは大好きでした。今度久し振りにお
店に行けるのを、今からすごく楽しみにしています。折しも
世の中はレコード・ブーム再来です。これがGRIS GRISにと
って追い風になることを願って止みません。

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# by obinborn | 2016-12-19 15:27 | one day i walk | Trackback | Comments(0)  

エルトン・ジョン『17-11-70』再訪

エルトン・ジョンの最初のライブ盤『17-11-70』、すごく
いいですね!トーピン=ジョンのソングライター・コンビ
によるリリカルな印象を打ち出した初期の3枚と、映画『
フレンズ』の音楽担当を経てリリースされた本作は、本国
イギリスばかりでなく、アメリカに於いてもいよいよ人気
歌手として認められてきたエルトンの姿を見事に捉えてい
ます。

アルバム・タイトルにあるように70年の11月17日、ニュー
ヨークのA&Rスタジオに観客を集め、スタジオ・ライブ形
式でレコーディングされた本作は、詩情溢れるSSWという
よりは、ライブ・パフォーマーとしての実力を浮き彫りに
しています。一曲めが「パイロットに連れてって」二曲め
がストーンズが前年にヒットさせたばかりの「ホンキー・
トンク・ウィメン」であることも、エルトンのロックンロ
ーラーぶりを強調する結果になりました。

何よりピアノ・トリオという編成がいい。ディー・マレイ
のbとナイジェル・オルソン(のちにソロ歌手として成功)
のdsを伴っただけのシンプルなサウンドゆえに、かえって
ピアノ・ロッカー、エルトンの確かな実力が伝わってくる
のです。何でもジェリー・リー・ルイスの「火の玉ロック」
を聞いて彼はロック音楽に目覚めたとか。ギターレスのバ
ンドをどう感じるかは人によって意見が違うでしょうが、
隙間のある音群が新鮮です。90年代に台頭したベン・フォ
ールズ・ファイヴの雛形と指摘するのも可能でしょう。

Bサイド最後の「教会を焼きつくせ」はライブ・パフォー
マー、エルトンの真骨頂でしょう。途中にエルヴィス・プ
レスリーの「ザッツ・オールライト・ママ」クリーデンス
の「プラウド・メアリー」ビートルズの「ゲット・バック」
を即興で挟みながらの展開が最高にスリリング!ジャケット
には立ってピアノを弾くエルトンが映し出されていますが、
そんな勇姿を思い浮かべながら聞きたいです。

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# by obinborn | 2016-12-19 02:37 | rock'n roll | Trackback | Comments(0)  

ありがとう、ボビー”ブルー”ブランドさんへ

今日(18日)は隣町・東長崎のクレオール・コーヒーに行き、
ボビー・ブランドの『Come Fly With Me』(abc 78年)を購
入しました。今さらと怒られそうですが、これメチャクチャ
良いですね!デューク/ピーコック時代のブランドがブルーズ
・ファンの”聖典”であることはむろん間違いないのですが、も
っと柔らかくなった彼の姿に出会えるという意味で、この通称
ブランコ・アルバムはまさに鉄板だと確信するに至りました。

もう少し具体的に言うと、リズムのヴァリエーションが広くな
り、時に使用されるエレピの柔らかな音色や女声コーラスも効
果を上げています。そういう意味ではよりソウルに接近したブ
ランドの姿に立ち会えます。デューク時代には殆ど見受けられ
なかった例の”うがい歌唱”も随所に押し出され、以降のマラコ
時代へと自然に繫がっていきます。新たにスタックスの社主と
なったアル・ベルのプロデュース。西海岸からナッシュヴィル、
さらにシカゴ、テキサスまで足を伸ばしたレコーディングから
は、新しい時代にどう対応しようか?というブランドの試行錯
誤とチャレンジングと孤独が密かに聴こえてくるようです。同
時代のオーティス・クレイやシル・ジョンソンの動きと比較し
てみるのも一興ですし、メンフィスで育ったソウル・チルドレ
ンがドン・ディヴィスと出会い、シカゴ録音の大傑作『FINDE
R KEEPERS』を作り上げたことなどを思い起こしてしまいま
した。

若い頃はよく理解出来なかったブランドの音楽が、今では毎日
の”きしみ”のように染み渡る。互いに悪意なんか全然ないのに、
レコード屋さんの話題を交わしただけで、「元カノは今も元気
で良かったなあ〜」と思う反面、まるで癒えていない古傷のよ
うな痛みを運んでくる。音楽とはきっとそういうものだろう。
ありがとう、ボビー・ブランドさん。ぼくはあなたの歌が大好
きです。

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# by obinborn | 2016-12-18 18:50 | blues with me | Trackback | Comments(0)  

12月17日の日誌

今日は勤務先の隣の不動産屋さんのご主人と幾つかの打ち合わ
せをした後、彼から来年のカレンダーを頂きました。午前に仕
事を終えた僕は江古田のレストランで昼食を。今は小池真理子
さんの『望みは何かと訊かれたら』(07年)を再読し始めまし
た。学園闘争が盛んだった60年代末を検証した小池さんの自伝
的な小説です。ある意味、僕はこの地平からずっと戦ってきま
した。今の若い人たちにはとても信じて貰えないと思いますが、
あの時代は大学を卒業したくとも、バリケード封鎖と闘争によ
って学校を卒業出来ない人たちがいました。少なくとも僕はそ
の事実を覚え、伝えていきたいと思っています。偉そうな言葉
たち。プラカードに貼られた標語たち。僕はそれらを激しく憎
みます。そして同時にもっと実感のある日々の感覚を大事にし
こうと思っています。

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# by obinborn | 2016-12-17 22:46 | one day i walk | Trackback | Comments(0)  

荒井由実『MISSLIM』のこと

荒井由実の『MISSLIM』は74年の7月15日からレコーディング
が開始され、8月6日にほぼ全ての生録りが終了している。わず
か一ヶ月足らずの期間に奇跡のような瞬間が何度も何度も訪れ
た。プロコル・ハルムとフランソワーズ・アルディに憧れてい
た八王子の呉服屋の娘が、キャラメル・ママの面々による素養
溢れる歌伴と出会った。ファーストの『ひこうき雲』以上に練
られた歌と演奏の関係には、ジョニ・ミッチェルとL.A.エクス
プレスのそれを見る思いがする。

「生まれた街で」が好きだった。続く「瞳を閉じて」をもっと
好きになった。堅苦しいメッセージ・ソングではなく、まして
貧乏を自分の味方に付けた四畳半フォークでもなく、荒井由実
は自分の視界から見える光景を育み、しっかりと歌った。歌唱
そのものについては感想が分かれたものの、大貫妙子の歌と同
じように、そこには作者版ならではのひたむきさが映し出され
ていた。

彼女が一番多感だった10代から20代にかけての歌の数々を、今
のぼくはどういう風に聞いているのだろう? 一体どのような
態度で受け止めているのだろう? はっぴいえんど伝説はあま
りに鬱陶しい。ぼくはもっと自分自身に残っている温かい場所
で荒井由実を語りたい。目の前で揺れている冬の暖炉を見つめ
るように、いつか彼女のことを、彼女が見て来た風景や痛みの
感情を言葉にしてみたい。

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# by obinborn | 2016-12-17 19:38 | one day i walk | Trackback | Comments(0)  

トニー・ジョー・ホワイト、あるいは彼のこぼれ話

トニー・ジョー・ホワイトの珍しい日本盤を棚から引っぱり
出してきました。これは昔テイチク・レコードがリリースし
た日本独自の企画で、モニュメント時代に残された3枚のア
ルバムから選曲されています。解説は故桜井ユタカ氏。桜井
さんはR&B・ソウルの評論や長く続いたミニコミ『SOUL O
N』の主宰者として有名ですが、以前は結構ロック関連の原
稿も書いていました。昔の評論家の基礎体力を感じたりする
のはこんな時です。一度だけ渋谷のメルリ堂でお見かけした
ことがあるのですが、私なんぞ畏れ多くってとても声を掛け
られませんでした。

モニュメント時代のトニー・ジョーは荒削りでいいですね!
ワーナーに移籍してからのほうがアルバム・アーティストと
しての風格は出てくるのですが、なり振り構わずフンパー・
ストンパー(ワウワウとクライベイビーを抱き合わせたエフ
ェクター)を踏み、野趣剥き出しのテナー・ヴォイスで歌い
まくる点では、この初期(60年代後半)がベストかもしれま
せん。看板の「ポークサラダ・アニー」や「ソウル・サンフ
ランシスコ」で見せるボビー・ジェントリーへの傾倒ぶり、
ブルック・ベントンによって全米NO.1に輝いた「雨のジョー
ジア」の作者版で伺える詩情、どちらも文句の付けようがあ
りません。

さらにカバー曲を見渡していくと、スリム・ハーポの「スク
ラッチ・マイ・バック」(俺のベイビーは背中を引っ掻くぜ
という性的な意味w)オーティス・レディングの「ハード・
トゥ・ハンドル」(ブラック・クロウズがやっていました)
ジョン・リー・フッカーの「ブーン・ブーン」(私は日本の
スパイダーズ経由で知りました)と、トニー・ジョーの音楽
的な故郷がルイジアナやメンフィスにあることを否応なく思
い知らされる次第です。何でも彼が音楽を志すきっかけは兄
貴が買ってきたライトニン・ホプキンスのレコードだったと
か。

「俺が歌にするのはすべて日常のことだよ。ルイジアナでの
暮らし、ポークサラダの食事、気怠い七月の午後のベースボ
ール、いいかい?たとえヒモの歌にしても俺はもっと深い男
と女の結びつきをテーマにしている。ドニー・フリッツのア
ルバムでの掛け合いも最高だった! そして『EYES』での
女性のセクシーな声。あれは彼女と肩を組みながら(実際、
インタビューの席でトニーは通訳の前むつみさんの肩を抱い
たw)レコーディングしたのさ」

「ロリー・ギャラガーは本当にいい奴だった。彼には本物の
ソウルがあった。俺らはまるで兄弟のように仲が良かった。
俺は彼の『カラスが飛ぶように』を歌うことでロリーの存在
を感じたかったんだよ。そうそう、この前のヨーロッパ・ツ
アーでアイルランドを訪ねた時、ロリーの弟(彼がロリーの
全音源を管理し、きちんとした形でリイシュー・プロジェク
トを進めた)が楽屋に来てくれた。嬉しかったよ。俺たちは
ビールを飲み、今は亡きロリーの思い出を語り合ったのさ」
このテイチク盤を聞いていると、2007年の春に再来日した
トニー・ジョーのこと、光栄にも横浜のホテルでインタヴュ
ーが実現し、記事として採用されたことが甦ってきます。

やっぱ最高です。愛しています、トニー・ジョー!
*取材協力『レコード・コレクターズ』『トムス・キャビン』


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# by obinborn | 2016-12-17 17:50 | one day i walk | Trackback | Comments(0)