パブリック・イメージと闘ってきた吉田拓郎

文芸誌『すばる』2010年3月号に掲載された吉田拓郎さ
んのインタビューを興味深く読みました。聞き手は作家
の重松清さんで、彼はずっと熱心な拓郎ファンだったと
か。そんなこともあってか、拓郎は珍しく打ち解けなが
ら本音を語っているのでした。古いファンはどうしても
中津川フォーク・ジャンボリーでアンプが故障し、突如
「人間なんて」をアンプラグドで歌い始める拓郎の姿を
いつまでも追い求めてしまう。あるいは「旅の宿」や「
落陽」のイメージかもしれません。そうした肖像に関し
て、煩悶し反発してきたのが他ならぬ拓郎だったことが
この取材ではかなり正直に明かされているのでした。

もともと拓郎さんはフォークを始める前にR&Bのバンド
を組まれていた方です。それがたまたま「イメージの詩」
や「人間なんて」が全共闘世代に支持され、同期されな
がら吉田拓郎というパブリック・イメージが次第に捏造
されていったのです。70年代に於いてはよく、こっち側
あっち側という分け方でフォークと歌謡曲の線引きがさ
れていましたよね。あたかもフォークは純粋な表現であ
り、歌謡曲は旧態依然とした商業主義の産物だと言わん
ばかりに。そうした時代のど真ん中で拓郎は「結婚しよ
うよ」をヒットさせ、南沙織のために「シンシア」を書
きました。それでも彼の葛藤はなかなか理解されず、フ
ァンはいつまでも中津川での吉田拓郎のイメージを追い
求めていったのです。

彼が背負わされた時代性・政治性とはおよそそのような
ものでした。そういえば以前『報道ステーション』に招
かれた時も拓郎さんは、歌謡フィールドにいた安井かず
みさん(故人)との親交を明かし、彼女から「汚らしい
ジーンズとTシャツのままでステージに出るフォーク・
シンガー」と揶揄されたことを告白していました。実は
ぼく(小尾)が敵対するフォーク集団は未だに「拓郎は
商業主義に魂を売った。フォーク・アーティストとして
は到底認められない」などと、団塊の世代ならではの我
が儘な主張を今日も繰り返しているのでした。

「きみの部屋のカーテンやカーペットは汚れていないか
い?」(「シンシア」)と歌う拓郎さんが好きです。そ
のたった一行から、彼のナイーブ過ぎる心情が伝わって
くるからです。


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# by obinborn | 2017-04-30 09:38 | Comments(0)  

トルーマン・カポーティは語る「たとえ人々がどう言おうが、それが本当の自分でない限りどうと言うことはない」

浩子さんの個展に関しては前述したけど、閉館後四人で飲み
に行った。ぼくがよく行く吉祥寺のMANDALA2の隣にある吞
み屋さんで、アテが美味く従業員の感じがとてもいいお店だ
った。こういう時どういう会話をするのかといえば、シリア
スな話からバカっ話まで。そんな風に飛躍するのが楽しいね。
例えば近年情報通は多くなったけれど、そのぶん心を揺さぶ
るような音楽の文章は少なくなってしまったね、とか渋谷の
パルコでロン・ウッドにばったり遭遇しました!もうオーラ
出まくりでした!とか、あるいはミュージシャンの地方公演
は大都市でのそれとはまた違う熱量があるんですよ!といっ
た見解まで、それこそまさに飛びまくり(笑)

SNSをやっていると、ときにイヤな奴が現われたり、自分が
予想出来る範囲外でトラブルとか、思わぬ誤解が生じること
がある。一応告白しておくと、ぼくは一時期かなり叩かれま
くられた。たぶん同業者のねたみ・そねみの変形ヴァージョ
ンかなと思ったけど、そうした疑心暗鬼に陥っていくのは自
分でもすごくイヤ〜な気持だった。本来自由であるはずの心
の領域が侵害されていく無駄な時間に過ぎなかった。

「たとえ人々がどう言おうが、それが本当の自分でない限り
どうということはない」アメリカ戦後文学の精神的な支柱だ
ったトルーマン・カポーティの言葉だ。それは削りに削ら
れた作家の本音であり、偽らざる実感だった。ぼくはこれか
らも愛すべき人々と歩んでいくことにしよう。そこには踏み
しめる大地があり、賑やかな町並みがあり、かけがえのない
暮らしがある。そのことを忘れずに。


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# by obinborn | 2017-04-29 06:25 | Comments(0)  

クロディーヌ・ロンジェの歌のこと、影絵のこと

昨日吉祥寺に行った際ユニオンに寄ってクロディーヌ・ロン
ジェのファースト・アルバム(A&M 67年)を購入した。フ
ランスに生まれたクロディーヌは少女時代にアメリカへ渡り、
女優として歩み始める。やがてアンディ・ウィリアムズと出
会いシンガーとしての活動を行い、ニューオーリンズのクラ
ブで歌っていた彼女にハーブ・アルバートが惚れ込み、晴れ
てA&Mと契約する。その記念すべきデビュー盤が本作だ。

クロディーヌはやがてアンディと結婚。しかし幸せな日々は
続かなかった。そして71年悲劇的な事件が起きる。コロラド
州アスペンで暮らしていた彼女は、当時の恋人を撃ち殺して
しまったのだ。彼女はあくまで銃の暴発による事故だったと
法廷で主張したのだが、殺人犯の判決が覆ることはなかった。
長い禁固生活が始まり、女優・歌手としての生命は実質的に
絶たれてしまった。のちにSUGAR MEでカムバックを果たし
たものの、この事件はファンの心を曇らせてしまった。何で
もクロディーヌは無罪の側に立った弁護士と秘めやかな結婚
をし、今もそっと隠遁生活をしているとか。

彼女の名誉のためにも音楽的なことを記しておこう。クロデ
ィーヌの甘く囁くような歌い方は、激しいシャウト唱法とは
また別にソフト・ロックやAORの潮流を生み出した。70年代
に登場したリンダ・ルイスやミニー・リパートン、あるいは
80年代に現われたトレイシー・ソーンやエディ・リーダーと
いった女性シンガーのなかに、クロディーヌが蒔いた種を感
じるのは自然なことだろう。そして90年代にはいわゆる渋谷
系の古典として再評価されたことが記憶に新しい。ごく最近
ではバート・バカラック集の新作をリリースしたばかりのル
ーマーにも、クロディーヌの遺伝子が受け継がれているよう
な気がしてならない。それは何かを声高に訴え糾弾するのと
はまた違う音楽のあり方だった。影絵のように伸びては消え
ていく毎日の自分を見つめ直す作業だった。

トミー・リピューマによる知的なプロダクション、弦と管の
超克が見事なニック・デカロのアレンジ、音の一粒一粒を丁
寧に拾っていくブルース・ボトニックのエンジニアリングと、
音響の名人たちがしっかりと脇を固める。クロディーヌはレ
ノン=マッカートニーのHERE, THERE AND EVERYWHERE
でこう歌っている「佳き日々を生きるため/分ち合える恋人が
欲しい/互いの瞳を見つめ信じ合うのよ/今ここで、違う土地
で、あらゆる場所で」


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# by obinborn | 2017-04-28 13:08 | one day i walk | Comments(0)  

27日は石塚浩子さんの個展を、吉祥寺にて

27日は石塚浩子さんの個展を観に吉祥寺へと。絵心がある方
とは、こんなにも自由で彩り豊かな世界に誘ってくれるのか
と思わず引き込まれた。お話を伺ってみると、会社に勤務さ
れていた頃から描き始め、インドへの旅を経て、今のスタイ
ルに辿り着いたとか。その心温まる暖色のスケッチのなかに
険しい葛藤を思った。彼女が歩んできた平坦ではない道のり
のことを考えてみた。

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# by obinborn | 2017-04-28 01:15 | one day i walk | Comments(0)  

アカデミズムの妖怪、労働の実感

以前奥田英朗さんの『最悪』を読んだ時、小さな町工場を
経営するオヤジさんの日常が描かれていてとても興味深か
ったです。得意先からの突き上げ、差し迫る納期、無断欠
勤する若い従業員、切実なコスト意識、融資を勧めたかと
と思えば一転して貸し渋る銀行員の豹変...などなど、バブ
ル崩壊以降の零細企業の経営者の生態とはこういうものか
な、と考えさせられました。今盛んに「アルバイトの最低
時給を1500円に!」なる運動が行われていますが、さしず
めこの工場主なら「ご冗談を!」と一笑に付すでしょう。

実体経済をまるで理解していないアカデミズムの論者たち
の昨今の発言が気になります。思い付くままに振り返って
みると内田樹が「これからの日本はもう低成長でいい」論
を唱え、小熊英二は「非正規雇用者の賃金を正社員の倍に
すれば日本の未来は開ける」説をぶち上げました。上野千
鶴子に至っては「ユニクロの服とツタヤのレンタルビデオ
でロウライフを送りなさい」と現在の若者たちを突き放し
ました。彼らは実社会での労働を体験せず、大学で教鞭を
執りながら論壇に登場するだけの狭〜い世界の住人なので、
このような妄想に陥ってしまうのでしょう。

様々な問題点を抱えながらも現内閣の支持率が高止まりな
理由は、恐らく彼らのような左派〜リベラルの識者が空虚
なロジックばかり並べ立てているからでは?と私は密かに
分析しています。入社式で「これから我が社は低成長で行
きます」と新入社員に訓示する社長がいますか?経営者の
全国会議で「非正規雇用者の賃金を正社員の倍にしよう」
と発議する管理職がどこにいますか?厳しい日本の経済を
知らない者たちの戯言に過ぎません。まして上野のロウラ
イフ提唱に至っては何を言わんや?と呆れるばかり。

ありていに言えば彼らは夢を語らない。自分たちはさんざ
ん高度成長〜バブルの恩恵を受けてきたくせに、引退間際
になってロウライフを唱える。もう成長しなくていいと説
教する。彼らのこうした論理を突き詰めると「みんな平等
に貧しく」的な社会主義の世界観と大差ないのでは?と疑
ってしまいます。資本主義であること、自由経済であるこ
との良さ、本来あるべき自由な競争原理を彼らは何故か語
らないのです。

ところで私が暮らしている江古田は、パン屋とラーメン屋
さんの町として近年活況を呈しています。老舗に胡座をか
いていた旧商店がどんどん廃業し、若くやる気のある人た
ちがそれに取って代わるという新陳代謝がうまく行ってい
るんですね。こういう光景は長く同じ町に暮らしている私
にも実に刺激的です。「低成長でいい」というアカデミズ
ムの妄言とは裏腹の現実への覚醒と労働の実感。そして何
よりも自主独立のスピリットがある。私が共感するのはこ
ういう人たちです。

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# by obinborn | 2017-04-23 06:33 | one day i walk | Comments(0)  

スーマー、ラルフ・モリーナ、そして『泥水は揺れる』

まあ、ポストモダンとかポストロックとか言われても、
自分に一番響くのはクレイジーホースのような質実剛健
な音楽なのです。以前優れたソングライターのスーマー
さんとラルフ・モリーナの”もたりまくる”ドラムは最高
だね!と彼のライブの終演後に語り合ったのですが、そ
の時、ああ、この人はロック音楽の本質をしっかり理解
されているんだなあ〜と、とても嬉しく思いました。

ぼくは音楽の新しさとか「いかに画期的か」というテー
マにあまり興味を持てません。いい時も悪い時も、良い
時代であっても、たとえ悪い時代(今かな?)であって
も、人々の暮らしは慎ましく続いていきます。そうした
日々のなかで「これは違うじゃん!」と思った時には、
その抗議を表明すればいい。もっともらしい標語に違和
を感じた時には、誰にも遠慮せずきちんと告白すればい
い。

スーマーさんの『泥水は揺れる』アルバムが染みます。
彼は「風のなかの女たち」や「もうない船」を何気に歌
っています。ぼくはそこに彼が歩んできた長い道のりを
感じました。まるで影絵のように伸びていく彼の背中を
想像してみました。

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# by obinborn | 2017-04-15 20:39 | one day i walk | Comments(0)  

思い出の場所はみんなコイン・パーキングになっていくね〜映画『転々』とムーンライダーズ

このまえ和田博己さんとお会いしたことは夢のような体験
でした。旧友のOさんが和田珈琲店時代からの付き合いで
「じゃあ、ぜひ!」ということでセッティングして頂きま
した。オイラにとってはちみつぱいはまさに品川〜京浜地
区の匂いが立ち込める音楽でした。一番有名な「塀の上」
にも羽田から飛び立つ飛行機を町から見上げる主人公の姿
が映し出されているし、続く「土手の向こうに」は大森の
それ(旧競馬場とは逆側)をイメージさせるのでした。

はちみつぱい解散後に鈴木慶一さんが「ソロ・アルバムの
つもりで」作った『火の玉ボーイ』(76年)が、実質的に
ムーンライダーズの誕生物語だったことは広く知られてい
ますが、オイラにとってははちみつぱい『センチメンタル
通り』と『火の玉ボーイ』は地続きのアルバムです。この
頃までの慶一さんはアメリカン・ロックへの愛情を、屈折
した日本語の歌詞とうまく重ね合わせていたと思う。リト
ル・フィート風にシンコペイトする「あの娘のラヴレター」
や、ザ・バンド的な「スカンピン」は、そんなナイーブな
青年の自己告白かもしれません。

「思い出の場所はみんなコイン・パーキングになっていく
ね」そんなセリフが呟かれる映画『転々』(2007年・三木
聡監督)には『火の玉ボーイ』から「スカンピン」と「髭
と口紅とバルコニー」が挿入されています。その映画をた
またま観た時、まるで不意打ちのようにそれらの曲が流れ
出しました。

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# by obinborn | 2017-04-15 18:16 | one day i walk | Comments(0)  

昨夜のDJ会bonavilleはお陰で大盛況でした!

14日は虎ノ門のthe 3rd cafeにてbonavilleのDJ会でした。
お陰様で100人超え!@-@来てくださった皆様、声を掛け
て頂いたスタッフの方々に感謝します!ありがとうござい
ました!以下私のプレイリストです。

part 1

THE BAND /LIFE IS A CARNIVAL
AMERICA/VENTURA HIGHWAY
MICHAEL MURPHY/COSMIC COWBOY(PART1)
JOHN FOGERTY/GARDEN PARTY
LAURA ALLAN/SLIP AND SLIDE
MICHAEL DINNER/JAMAICA
SAMMY WALKER/BROWN EYED GEORGIA DARLIN'
JESSE WINCHESTER/EVERY WORD YOU SAY
THE FLOATING HOUSE BAND/SONG FOR MARTHA LEE
ROB GALLBRATH/I REMEMBER ME

part 2

THE BYRDS/CHETNUT MARE
THE BYRDS/BUGLER
CSN&Y/CARRY ON
STILLS YOUNG BAND/LONG MAY YOU RUN
NEIL YOUNG/Mr.DISAPPOINTMENT
POCO/A GOOD FELLIN' TO KNOW
HOT TUNA/SEA CHILD
JONI MITCHELL/HELP ME
GUTHRIE THOMAS/ROLLIN' HOME
RAB NOAKES/CLEAR DAY

〜ONE MORE MILES TO GO 〜

BOB DYLAN/MISSISSIPPI


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# by obinborn | 2017-04-15 18:04 | one day i walk | Comments(0)  

昨夜のDJ会bonavilleはお陰で大盛況でした!

14日は虎ノ門のthe 3rd cafeにてbonavilleのDJ会でした。
お陰様で100人超え!@-@来てくださった皆様、声を掛け
て頂いたスタッフの方々に感謝します!ありがとうござい
ました!以下私のプレイリストです。

part 1

THE BAND /LIFE IS A CARNIVAL
AMERICA/VENTURA HIGHWAY
MICHAEL MURPHY/COSMIC COWBOY(PART1)
JOHN FOGERTY/GARDEN PARTY
LAURA ALLAN/SLIP AND SLIDE
MICHAEL DINNER/JAMAICA
SAMMY WALKER/BROWN EYED GEORGIA DARLIN'
JESSE WINCHESTER/EVERY WORD YOU SAY
THE FLOATING HOUSE BAND/SONG FOR MARTHA LEE
ROB GALLBRATH/I REMEMBER ME

part 2

THE BYRDS/CHETNUT MARE
THE BYRDS/BUGLER
CSN&Y/CARRY ON
STILLS YOUNG BAND/LONG MAY YOU RUN
NEIL YOUNG/Mr.DISAPPOINTMENT
POCO/A GOOD FELLIN' TO KNOW
HOT TUNA/SEA CHILD
JONI MITCHELL/HELP ME
GUTHRIE THOMAS/ROLLIN' HOME
RAB NOAKES/CLEAR DAY

〜ONE MORE MILES TO GO 〜

BOB DYLAN/MISSISSIPPI


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# by obinborn | 2017-04-15 18:04 | one day i walk | Comments(0)  

追悼:ジェローム・ガイルズ

J.ガイルズことジェローム・ガイルズが亡くなってしまった。
つい先日まで過去のアルバムを何枚も聞き直し、いいバンド
だったなあ〜と、改めて思い出していただけに驚いている。
元々ジェロームはニューヨークの出身で、ダニー・クレイン
とマジック・ディックの3人でアクースティック・ブルース
・バンドを67年頃から組んでいた。そこにボストン出身のピ
ーター・ウルフとステファン・ジョー・ブラッドが加わり、
J.ガイルズ・バンドの母体が出来上がった。さらにボストン
大学に通っていたセス・ジャストマンが加わり、6人編成の
エレクトリック・ブルーズ・バンドに生まれ変わった彼らは、
69年アトランティック・レコードからデビューする。

グループ名に冠されたくらいだから、やはり最初はジェロー
ムが結成したバンドだったと考えていいだろう。ソングライ
ティングが殆どウルフ=ジャストマンのコンビだったことや、
ピーター・ウルフがバンドの顔だったせいか、あまり目立た
ないジェロームだったが、切れ味鋭いカッティングが彼の持
ち味だ。例えば『モンキー・アイランド』の冒頭を飾った「
サレンダー」を聞くだけで、いかに彼が重要な存在かを即理
解出来るだろう。歴代のギター・ヒーローと違ってソロを弾
きまくるタイプではなかったので過小評価されているだけだ。

ぼくが彼らをめぐるエピソードで一番好きなのは、ジューク
・ジョイント・ジミーというペルソナを作り出したことだ。
J.ガイルズ・バンドの初期のアルバムを見て頂ければお解りの
ように、作詞作曲のクレジットやスペシャル・サンクスの欄
にジューク・ジョイント・ジミーの名前を容易に探すことが
出来る。よくファンの間では7人めのメンバーではないか?
とか、ボストン在住の老ブルースマンではないか?とか、あ
るいはストーンズに於けるナンカー=フェルジのような変名
ではないのか?と話題に昇った。そんなことを友だちと話し
合っていた頃が懐かしい。

ジューク・ジョイント・ジミーに関して、ジェローム・ガイ
ルズとマジック・ディックはこう種明かししている「俺たち
の架空のブルース・ヒーローだよ。いつも俺たちを見守って
くれているんだ」そんなロマンティックな神話を携えながら
彼らはキャリアを磨いていった。しかし古巣アトランティッ
クを離れ、78年にEMIアメリカと新たに契約してからはジュ
ーク・ジョイント・ジミーの名を見つけることは出来なくな
ってしまった。奇しくもそのことが彼らの音楽性の変化や青
年期の終焉を物語っているようで切ない。そして今日ジェロ
ーム・ガイルズは一番星になった。彼が天国でジューク・ジョ
イント・ジミーとともに心置きなくセッションすることを願っ
ている。

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# by obinborn | 2017-04-12 14:28 | rock'n roll | Comments(2)  

昨日は、はちみつぱいの和田博己さんを囲む会でした!

「『MUSIC FROM BIG PINK』はいきなり「怒りの涙〜TEARS
OF RAGE」から始まるよね。だから僕たち、はちみつぱいもあ
の暗い「弊の上で」をA面の一曲めに選んだんだ」「普通は誰も
がデビュー作の一曲めを快活なナンバーでスタートさせる。で
もぼくたちはそうしたルーティンを犯したくなかったんだよ」

そんなお話を惚れ惚れと、和田博己さんから聞かせて頂いた。
というわけで、10日は新宿のライオンビールにて和田さんを
囲む親睦会を。時の流れを感じさせない3時間近くがあっと
いう間に過ぎていった。


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# by obinborn | 2017-04-11 18:35 | rock'n roll | Comments(0)  

言葉狩りの現状、憂鬱な気分

しかしワンフレーズのみを鬼のクビを取ったように強調して血祭りに挙げる「炎上マーケット」は好きになれないですね。今回の筒井さんの発言にしたって言葉自体は醜いものだけれど、彼が本当は何を言いたかったのかを想像してみる以前に、単なるヒステリックな”言葉狩り”的な反応になってしまっています。ちょっと前を振り返ると、熊本震災の時にはある女優さんの呟いた「猫が可哀想」が曲解されて「そんな暇ならボランティアに行けよ!」と集中砲火を浴びせられたり...もう本当にメチャクチャです。これは単に有名人の代償では済ませられない、メディアという劇場をこちら側から見ているウチラ全員の品性が問われる問題ですよ。先日の今村大臣の件もそう。確かに彼の暴言は自主避難民を傷付けるものではあったけれど、記者との質疑応答の流れをトータルに追っていくと、もう少し違った印象と理解が得られるはずです。ところがテレビは大臣の「馬鹿野郎!出て行け!」というワンフレーズのみを取り上げ、繰り返し暴力的に放映するだけ。これでは単なる悪役作りに過ぎず、きっと永遠に真実は見えてこないと思います。こうした一連の事件の尻馬に乗って溜飲を下げるのも、有名人の発言を回文(リツイ)しまくって”我こそは正義”を気取るのも私は嫌だなあ〜。前に音楽家の近藤哲平さんが総選挙に関して「建設的な意見がない。人を侮辱するネガキャンばっか。皆さんのFBが汚い言葉で埋まるのをぼくは見たくないんです」との旨を書かれていました。近頃ではごく稀で誠実な意見だと思いました。
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# by obinborn | 2017-04-07 04:21 | one day i walk | Comments(2)  

佐野元春のスポークン・ワーズ〜「In Motion 2017〜変容」を聞いて

4日は佐野元春のスポークンワーズを渋谷の0-EASTにて。彼が
ポップ・フィールドと平行して詩の朗読を実践してきたことは
よく知られているが、この日も井上鑑率いるファウンデーショ
ンズのフリーフォームな演奏と合体しながら見事なリーディン
グを繰り広げた。とくに金子飛鳥のアグレッシヴなアンプリフ
ァイド・ヴァイオリンが圧巻で、地を這うようなドラム&ベー
スの強靭なビートとともに、陰影に富んだ世界を作り出してい
った。

散文詩のように溢れ出す佐野のワードの数々は難解かもしれな
い。しかし一字一句に意味を求めるのではなく、言葉が連なっ
ていくイメージを繰り出される音とともに自由に広げていけば
正解だと思う。宮台真司風に言えば「求めるな、感じろ!」だ
ろうか。またとかく通常のソングライティングと分けて語られ
がちな佐野の”話す言葉”だが、「ブルーの見解」や「ぼくに出
来ることは」あるいは「Shame〜君を汚したのは誰」など過去
のポップ文脈の再提示も少なくない。そんな佐野が掲げる一貫
したテーマは黄昏れていく文明であり、都市と個人との関わり
であり、消耗してしまいがちな魂のありかのことだ。

ビート文学の昔から脈々と培われてきた「動き出す言葉たち」
その伝統のなかに佐野元春がいる。そんなことを痛感せずには
いられない夜だった。


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# by obinborn | 2017-04-04 21:57 | one day i walk | Comments(0)  

3月28日は梶原英夫さんの個展を

28日は梶原英夫さんの個展を高田馬場の凹凸キッチンカフェ
&デリにて。いや〜圧巻でした。梶原さんがお好きな音楽の
ジャケットを切り抜きながら、細かいペインティングを何度
も何度も重ねていく。写真ではなかなか伝えられないのが歯
痒いけれど、その道ではシャドウ・ボックスと呼ばれる立体
的な手法を用いて、彼はその音楽愛をそっと告白する。

お話しを伺ったところ、シャドウ・ボックスが映えるのはポ
ートレイト写真ではなく、あくまでイラストレイテッドの作
品らしい。あえて言うのなら『アビーロード』ではなく『リ
ヴォルヴァー』それを描いたクラウス・フォアマンの細かい
線画に、梶原さんはやり甲斐を見出されるとのこと。唐突か
もしれないけれど、プリンスの『アラウンド・ザ・ワールド
・イン・ア・デイ』を、彼はどう描いていくのだろう?

絵心がない僕には本当に羨ましい世界だ。それも商業ベース
ではなく、あくまでご本人の趣味であるところにぐっと来る。
まだ知り合ったばかりの方だが、高田馬場の駅へ向かう帰り
道を、僕は足取りも軽く歩いていった。

なお彼の個展は4/1(sat)まで。お時間がある方はぜひ足を運
んでみてください。


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# by obinborn | 2017-03-28 23:09 | one day i walk | Comments(0)  

J.ガイルズ・バンド『ブラッドショット』

J.ガイルズ中期の傑作『ブラッドショット』は忘れ難い。
73年にリリースされた通算5枚めのアルバムで、ウルフ
=ジャストマンのソングライティング・コンビが大半の
曲を書き下ろしている。なかでもシンコペイトしまくる
「サウスサイド・シャッフル」は彼らの代表曲と言って
いいだろう。レゲエ調の「ギブ・イット・トゥ・ミー」
は新たな時代の到来を感じさせる。

お楽しみのカバーはショウ・ストッパーズが68年にヒッ
トさせた「ハウス・パーティ」と、ティッツ・ターナー
が57年に録音した「ホールド・ユア・ラヴィング」の2
曲で、こんな部分にも彼らのR&B愛が汲み取れるだろう。
なお本作のレコーディングはニューヨークのヒット・フ
ァクトリーで行われたが、スタジオを設立したジェリー
・ラガヴォイの名前をわざわざ記したことに彼らならで
はのこだわりが伺える。ご存知の方も多いだろうが、ラ
ガヴォイはR&B/ソウルに貢献したプロデューサーで、
ソングライターとしてもガーネット・シムズやハワード
・テイトに幾つかの曲を提供した。もっとも有名なのは
アーマ・フランクリンのために書いた「ピース・オブ・
マイ・ハート〜心のかけら」だろうか。これはジャニス
・ジョプリンの歌唱でさらに広まった。なおジャニスは
ラガヴォイ作の「愛は生きているうちに」を取り上げて
いる。ラガヴォイは他にバング・レーベルのバート・バ
ーンズ(ヴァン・モリソンをアメリカ・デビューさせた
のは彼)と連携したり、ボニー・レイットの『ストリー
ト・ライツ』をプロデュースした。

話がやや脱線してしまったが、そんなラガヴォイが無名
時代のビル・シムジクをエンジニアとしてヒット・ファ
クトリーに迎えたところにドラマの伏線がある。そう、
シムジクはやがて独立し、プロデューサーとしてJ.ガイ
ルズ・バンドに深く関わっていくのだった。本作『ブラ
ッドショット』も勿論シムジクの制作だ。きっとピータ
ー・ウルフはヒット・ファクトリーでの録音中に、何度
もジェリー・ラガヴォイのことを想ったに違いない。ア
ルバムを裏返してみよう。RECORDED & MIXED AT
JERRY LAGOVOY'S HIT FACTORY、NEW YORK、N.Y.
とクレジットされている。たった一行。でも僕はそこに
ピーター・ウルフの深い眼差しを感じずにはいられない。


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# by obinborn | 2017-03-28 16:41 | rock'n roll | Comments(2)  

J.ガイルズ『モンキー・アイランド』

J.ガイルズ・バンドは77年作『モンキー・アイランド』でビル
・シムジクの庇護から離れ、初めてセルフ・プロデュースを試
みた。看板だったハード・ロッキンR&Bからより洗練されたア
プローチへ。そうしたシフトに70年代中盤の時代背景が見え隠
れする。ルーサー・ヴァンドロス、シシー・ヒューストン、マ
イケル・ブレッカーらゲストを適材適所に配し、東海岸の粋を
見事に伝えるニューヨークのレコード・プラント録音だ。


なお本作を最後に彼らは古巣アトランティックを離れ、EMIア
メリカと新たに契約し、遂に全米のトップ・バンドへと昇り詰
める。でもピーター・ウルフは髭を剃ってしまった。そんな意
味でも『モンキー〜』は分岐点の作品だったと思う。優れたア
ルバムと認める一方で僅かな痛みを覚えてしまうのは、彼らが
成功と引き換えに失ってしまったものを、今も思い出してしま
うからだろう。


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# by obinborn | 2017-03-28 16:36 | rock'n roll | Comments(0)  

伊東ミキオさんと僕

この3月で一番嬉しかったのは、ロックンロール・ピアノマン
の伊東ミキオさんが拙書『Songs』を読んでくださっていたこ
とだった。ウルフルズからビッグ・ジェイ・マクニーリに至る
サポートの他、ソロ・アクトでも活躍され幅広い人気を得てい
るミキオさん。彼は20代の時に僕の本を夢中になって読み、そ
こで紹介したレコードを集め、今も書棚に置かれているとか。

楽器を弾き人々をハッピーな気持にさせるのは才能だと思う。
ミキオさんはそれを全国各地で日々実践されている。たぶん
いろいろな音楽的語彙をお持ちなのだろうが、彼の場合はとく
に弾けまくるブギウギ・ピアノが信頼を勝ち得ているみたいだ。
ジェリー・リー・ルイスやイアン・マクレガンやセス・ジャス
トマンといった偉人たちが切り開いてきた道。それをミキオさ
んは慈しみ、リスペクトしながら今晩もステージに立つ。僕に
は想像出来ない修練の日々を積み重ねてきたに違いない。

音楽家は歌い楽器を弾く。僕は文章を書く。それぞれが各自の
持ち場で一生懸命頑張ればいい。きっと誰かが見守っているか
ら...。いつか時間を作ってミキオさんのソロ・ピアノを聞きに
行ければと願っている。

(写真はミキオさんがTWに挙げてくださったもの。ご本人の
承諾を得て転載しました)


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# by obinborn | 2017-03-26 20:00 | rock'n roll | Comments(0)  

追悼:チャック・ベリー〜あなたの歌とギターが大好きでした

「チャック・ベリーはギター一本を抱えてツアーする。彼が言う通りに進
めば問題はない。他の誰かが何かを口出しすると必ずトラブルが起こる」
88年に公開された彼の自伝映画『ヘイル!ヘイル!ロックンロール』の
ひとコマだ。そのなかではベリーが少年の頃『二都物語』を観ようと劇場
に足を運んだところ、黒人だからという理由で入場を断られたことが告白
されている。彼の心に沸き起こった疑念はいったいどれほどのものだった
だろうか。

そのベリーが3月19日亡くなった。享年90歳。新作アルバム制作の話が伝
えられたばかりだった。1955年の5月に録音された「メイビリーン」でデ
ビューした彼は、以降文字通りロックンロールの化身となり、時代を牽引し
ながらビートルズやローリング・ストーンズの誕生に一役買った。ルイ・
ジョーダンに代表されるジャンプR&Bサウンドを、ギター中心のスモール
・コンボ編成へと大胆に改変していった。

個人的な話をさせて頂ければ、日本のキャロルがラジオ番組でベリー作の
「メンフィス・テネシー」を演奏したことや、同曲をフェイシズがスタジ
オ・レコーディングしたことが懐かしく思い出される。その歌はジミー・
リード風のモダンなウォーキン・ビートを伴って、こう歌われていた「電
話交換手さん、お願いです。彼女に取り次いでください」と。その歌から
広がる南部の景色が好きだった。ベリー以前にブルーズ音楽の伝統がある
ことが感じられた。意外と内気でナイーブな青年の心のありかがしっかり
と伝わってきた。

冒頭の『二都物語』に話を戻そう。ベリーの地元セントルイスで映画が公
開された因縁の劇場で、彼は満員の聴衆たちに囲まれながら自分のショウ
を実現させる。その成功までには長い歳月があった。僕たちが普段まるで
毎朝の歯磨きやパンのように馴れ親しんでいる「ロックンロール」にはチ
ャック・ベリーを始め、リトル・リチャードやファッツ・ドミノやボ・デ
イドリーの積み重ねがあった。彼らなしにはけっして導かれることがない
道のりがあった。それを忘れたくはない。

最後になってしまったが、まだ無名でアマチュアだった60年代末のブルー
ス・プリングスティーンはこう回想している「自分たちのバンドで一度だ
けチャック・ベリーのバッキングをした。特別な体験だったよ。リハをし
ようと思って曲目を彼に尋ねたんだ。その時ベリーは何て答えたと思うか
い?”チャック・ベリーの曲だぜ!”だって(笑)だから僕たちは彼がイン
トロを弾き出した瞬間に、キーを探さなくてはいけなかったのさ!」

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# by obinborn | 2017-03-20 00:28 | rock'n roll | Comments(2)  

3月11日の捕獲日誌

今日はDJの本番まえに下北沢のフラッシュ・ディスク・ランチさん
に寄り、2枚のLPアルバムと4枚の7'sを購入しました。捕獲に要し
た時間はジャスト60分!素晴しい成果を得ることが出来ました!
以下ご報告を。

(LP's)

ROD STEWART/ATLANTIC CROSSING (UK WARNER BROS. K56151)
RAB NOAKES/RED PUMP SPECIAL ( UK WARNER BROS. K46284)

(7's)

MANFRED MANN/MIGHTY QUINN(FONTANA)
KO KO TAYLOR/WANG DANG DOODLE(CHESS)
JUNIOR PARKER/RIVERS INVITATION(CAPITOL)
JUNIOR PARKER/DARLING、DEPEND ON ME(CAPITOL)

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# by obinborn | 2017-03-12 01:49 | one day i walk | Comments(0)  

3月11日はブルーアイド・ソウル特集のDJでした!

大震災から6年めの今日は下北沢のメンフィス兄弟。にて
DJ会でした。黙祷した後は今ありのままの自分とその暮ら
しを慈しむべく、町へと繰り出しレコードを買い、簡単な
食事を済ませてからDJに臨みました。お陰様で大盛況!
これもひとえにコーディネイトして頂いたHさんの尽力だ
と思います。来て頂いた皆様、DJ諸氏、メンフィス兄弟。
の飯塚さん、ありがとうございました!以下私のプレイリ
ストです。

RHINSTONES/ONE TIME LOVE
ORLEANS/LET'S HAVE A GOOD TIME
JESS RODEN/I'M ON YOUR SIDE
VAN MORRISON/CHECKIN' IT OUT
VALERIE CARTER/OOH CHILD
STEVE JORDAN&JORDAN BROTHERS/AIN'T NO BIG THING
SIR DOUGLAS QUINTET/AND IT DIDN'T EVEN BRING ME DOWN

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# by obinborn | 2017-03-12 01:04 | one day i walk | Comments(0)  

追悼:ヴァレリー・カーター

信じたくないニュースが飛び込んできた。3月4日ヴァレリー・
カーターが心筋梗塞のため亡くなったという。近年はコケイン
所持で逮捕されるという好ましくない情報が伝わっていたが、
以降彼女は麻薬を絶つことを決意し、更正プログラムを無事に
終えている。今回の心筋梗塞にどこまでドラッグの後遺症があ
ったかは解らないものの、ヴァレリーの名誉のために、彼女が
リハビリに取り組んでいたことをまずは報告しておきたい。

フロリダ州ウィンターヘヴンに生まれ、アリゾナ州のフェニッ
クスで少女時代を過ごしたヴァレリーは、その後60年代のフォ
ーク・シーンに影響され、ニューヨークのグリニッチ・ヴィレ
ッジで歌い始めた。残念ながらそこで頭角を現すことはなかっ
たが、自作曲の「クック・ウィズ・ハニー」がジュディ・コリ
ンズによって取り上げられるという幸運があり、その後西海岸
のマリン・カウンティでリチャード・ホウヴェイ、フィフス・
アヴェニュー・バンド出身のジョン・リンドとともにハウディ
・ムーンを結成。74年には彼ら唯一のアルバムをA&Mレコー
ドからリリースした。そこからは「クック・ウィズ・ハニー」
の作者版がシングル・カットされた。ハウディ・ムーン解散
後はアルバムにも関わったリトル・フィートのローウェル・
ジョージの口利きもあり、ヴァレリーは77年にコロンビアか
ら初ソロ作『ジャスト・ア・ストーンズ・スロー・アウェイ』
で本格的にデビューする。その直前にはジャクソン・ブラウン
とローウェルとヴァレリーが共作した「ラヴ・ニーズ・ア・
ハート」がジャクソンの『ランニング・オン・エンプティ』
収録曲として親しまれていた。またジェイムズ・テイラーは
75年の『ゴリラ』に収録された「アングリー・ブルース」で
ヴァレリーを初めて起用。以降彼女は長らくジェイムズのコ
ーラス要員として欠かせない存在となってゆく。

96年頃だっただろうか。一度だけヴァレリーにインタヴュー
したことがある。その席でジェイムズの『(ライヴ)』に
収録された「アイ・ウィル・フォロウ」の話題になり、「ス
タジオ・ヴァージョンにはないあなたのヴァースがとても
素敵ですね」と讃えると、「よく気が付いてくれたわね!
わあ〜、世界に向かって知らせたいくらいよ!」と嬉しそう
に答えた姿は印象的だった。ソロでも、他人のバック・コー
ラスを担う時でも、その天衣無縫なヴォイシングを夢中で追
いかけた人は少なくないだろう。いわばヴァレリーは若葉の季
節を歌うシンガーだった。その伸びやかな歌声には陽射しが
似合っていた。彼女のファースト・ソロの冒頭に配されたフ
ァイヴ・ステアステップスの「ウー・チャイルド」こそは、
その頂点だったと思う。歌が聞き手を温かい場所へと連れ戻
していく。ヴァレリーはぼくにそんな体験をもたらせてくれ
た。それは雨の日々のなかで太陽の暖かさを待ちわびる気持に
近いかもしれない。

どうか安らかにヴァレリー。あなたのことをけっして忘れな
い。

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# by obinborn | 2017-03-11 03:18 | one day i walk | Comments(0)  

3月5日は大阪に出張しました!

3月5日は昨年の10月以来久し振りに大阪へ出張しました。
いやあ〜楽しかったです!LPレコードも9枚購入出来たし、
夜は難波の音楽バーPhoe〜Beさんに毎度のことながらお
邪魔しました。奈良からわざわざ来てくださった山口さん、
パブ・ロック友の山森夫妻、レッドボーンレコーズの和田
さん、そして勿論Phoe〜Beの佐藤夫妻、話が盛り上がっ
てメチャ楽しかったです!なおちょうど日本公演中だった
ティーンエイジ・ファンクラブを追いかけられていた旧知
のNさんとも深い時間に合流!再会を喜びあったのでした。
ヴァレリー・カーターの訃報はあまりに突然でしたが、お
店でハウディ・ムーンを聞いて偲びました。

一応ゲットしたレコードを挙げておきますね。                                                            JOE HILL LOUIS/THE ONE MAN BAND(Muskadine)
ANN PEEBLES/TELLIN' IT(Hi)
Z.Z.HILL/GREATEST HITS (Kent)
THE BAND/CAHOOTS(カナダCapitol)
JAMES TAYLOR/MUD SLIDE SLIM(UK Warner Bros.)
JOHN B.SPENCER/OUT WITH A BANG(Topic)
JOHNNY G/WATER INTO WINE(Beggars Banquet)
JAMES HUNTER/THE HARD WAY(Go)
GEORGE JACKSON/THE FAME SESSIONS (Kent)

写真は偉大なるヴァン・モリソン師匠を前にはしゃぎまくる
佐藤さんと小生です(笑)

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# by obinborn | 2017-03-06 20:56 | one day i walk | Comments(0)  

メルリ堂のオールデイズ・シリーズ、最高です!

音楽配信(ダウンローディング)に対抗する措置だろうか。各レコード会社が
生き残りを賭けて廉価盤の企画を打ち出している。ワーナーの名盤探検隊やア
トランティックR&Bのシリーズ、昨年好評だったソニーのAORラインナップな
ど積極的なアプローチが目立つ。それらメジャー・カンパニーに負けず劣らず、
メルリ堂のオールデイズ・レーベルも頑張っている。ブルーズ、R&B、ポップ
スを中心に、170点以上を既にリリースしている。しかも紙ジャケ・日本語の
解説・最新リマスター仕様でお値段も1500〜2000円(税抜)とは嬉しい限り。

ぼく自身は未だにLPやシングル・レコードを収集する趣味があり、実際に普段
聞くのもアナログ中心だったりするのだが、こうした廉価盤CDは後学のために
も重宝している。とくに今の若い人達にとっては、過去の優れた音楽を知るた
めの水先案内と成り得るだろう。個人的な嗜好から言っても、アラン・トゥー
サンのファースト・アルバム『ザ・ワイルド・サウンド・オブ・ニューオーリ
ンズ』や、敬愛して止まないジュニア・パーカー初期の名作『ドライヴィング
・ホイール』など、重要な作品をこのシリーズで聞き直したほどだ。

いわば温故知新なのだと思う。どんなに新しい音楽もファッションも実は過去の
アイディアやインスピレーションに多くを授かっているし、それらをリスペクト
することからまた何かが始まっていくのだろう。そんなわけでメルリ堂のオール
デイズに大注目を!最後に宣伝となってしまい恐縮ですが、ぼくもこのシリーズ
でボビー・チャールズ『シー・ユー・レイター・アリゲイター』と、この4月に
出るダグ・サームの『ザ・ベスト・オブ・サー・ダグラス・クィンテット』のラ
イナー原稿を書かせて頂きました。

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# by obinborn | 2017-03-04 03:17 | Comments(0)  

2月26日のDJ

26日は江古田のハロー・オールド・タイマーでDJ会でした。
第6回めとなる今回は、3年前に他界されたクラン・レコー
ドの店主・平野実さんを偲び、彼が好まれていたルーツ・ロ
ック、ルイジアナR&B、テックス・メックスなどをテーマに
回しました。来てくださった方々、DJ諸氏、HOTのスタッフ
の方々ありがとうございました!お陰様でいい会になったと
思います。以下私のプレイリストです。

第一部
NINA SIMON/I WISH I KNEW HOW IT WOULD FEEL TO BE FREE
JESSE WINCHESTER/THAT'S THE TOUCH I LIKE
ELECTRIC BLUEBIRDS/ALLIGATOR MAN
BALHAM ALLIGATORS/LAWDY MISS CLAWDY
OILY RAGS/TIME TO KILL
RONNIE LANE /I'M GONNA SIT RIGHT DOWN AND I WRITE MYSELF A LETTER
WILKO JOHNSON/MENDOSINO

第二部
ROGER TILLISON/LOVING YOU IS SWEETER THAN EVER
CREEDENCE CLEARWATER REVIVAL/BEFORE YOU ACCUSE ME
RY COODER/MONEY HONEY
McKINLEY MITCHELL/THE TOWN I LIVE IN
DOUG SAHM/GENE THOMAS MEDLEY
WAYNE TOUPS/TUPELO HONEY
VAN MORRISON/STREET CHOIR

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# by obinborn | 2017-02-27 05:59 | one day i walk | Comments(0)  

2月25日の東京ローカル・ホンク

奇跡のような夜だった。繰り出される音と言葉のひとつひとつ
が明晰に響き、確かな輪郭を描きながら溢れ出てゆく。そんな
東京ローカル・ホンクのワンマン・ライブを25日は渋谷B.Y.G
にて。筆者のホンク追っかけ歴は今年でちょうど10年になるの
だが、彼らはその倍以上の歳月を費やしながら自らの音楽を磨
いてきた。ホンクメンの修練の日々に感服せざるを得ない。

音楽を志す過程ではいろいろな試行錯誤があったことだろう。
洋楽のコピーから始まり、”ロック的な言語”への共感と反発と
を同時に抱え込みながら、ホンクはいつしか他の誰でもない日
本語のロックを確立した。フラワー・ムーヴメントでもスウィ
ンギン・ロンドンでもウッドストック・ネーションでもない、
自分たちの普段着の姿形。その実感をグループのソングライタ
ーである木下弦二はとても大事にする。

借り物の思想や出来合いの言語はいつしか廃れていく。自分の
周りの大勢がイエス!と言った時、それに従えばどれだけ楽な
ことだろう。どれだけ疎外感に苛まれないことだろう。急かさ
れるように政治をテーマに歌えば何かの保険を得られるのだろ
うか?少なくともぼくはそうは思わない。ホンクのアカペラ・
コーラスが冴え渡る「夏みかん」を聞く時、自分がいつしか失
くしてしまった光景を想う。複数の詩人たちの連詩から生まれ
た「また会おう」に接して、人の営みの切なさを知る。太田〜
品川区の工場街をスケッチした「昼休み」で、名もない人々の
群像劇へと想いを馳せる。そんなホンクの歌世界を誇らしく思
わずにはいられない一夜だった。

〜セットリスト〜
第一部
1 インプロ〜ハイウェイソング
2 お手手繋いで
3 お馬鹿さん
4 目と手
5 鏡の中
6 遠い願い
7 拡声器
8 心の行進
9 お散歩人生
10 Dark Matter

第二部
1いつもいっしょ
2 お手紙
3 昼休み
4 夜明け前
5 夏みかん
6 質問(仮タイトルの新曲)
7社会のワレメちゃん
8 みもふたもない
9 港の見える丘(機材トラブルのため即興で)
10 また会おう

EN
1 おいでおいで

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# by obinborn | 2017-02-26 00:41 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

ロジャー・ティリソンのカナダ盤を見つけてしまった!

昨日弦二くんのライブに行く前、御茶の水のディスクユニオンに寄
り、『ロジャー・ティリソンズ・アルバム』のレアなカナダ盤を見
つけました。美品かつお値段も2,365円と良心的だったので即購入
しました。勿論米ATCOのオリジナル盤は永年愛聴していますが、
また「もう一枚」症候群の発生です(笑)黄色で統一されたアトコ
・レーベルも珍しいのでは?

音楽的にはさんざん語られてきたのでここで多くを繰り返しません
が、オクラホマ出身のロジャーがロスアンジェルスに出向き、ジェ
シ・エド・ディヴィスのプロデュース下で録音したスワンプ・ロッ
クの記念碑として今も語り継がれています。ロスのレコード・プラ
ントに於けるレコーディングは、クレジットされているように全編
ライブ形態で行われた模様です。むろん後から幾つかのダビングは
為されたのでしょうが、ベーシックな部分で”一発録り”を重視した
結果、とても自然なグルーヴが立ち上がってきます。まさにこの点
こそ本作の生命線だと思います。

それにしてもロジャー・ティリソンと共演したラリー・パパ&カー
ネギー・ママは立派です。僕なんかは単なる聞き手の一人に過ぎま
せんが、憧れの先輩と音楽を分け合うバンドマンがどんなに誇らし
く満たされた気持になるかを、また同時にそのプレッシャーが如何
ほどのものかを想像することは出来ます。先日青山の月見ルで行わ
れたラリー・パパの再結成〜ウェルカム・バックのライブは素晴し
く、この『ロジャー・ティルソンズ・アルバム』からもDOWN IN
THE FLOOD、ONE GOOD FRIEND、GET UP JAKE、LOVING Y
OU IS SWEETER THAN EVERの5曲が選曲されました。まるでオ
クラホマの砂埃が舞い上がるようなタフで含蓄ある歌と演奏に、き
っとロジャーも天国から微笑んだことでしょう。

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# by obinborn | 2017-02-24 11:30 | one day i walk | Comments(0)  

2月23日の木下弦二

約一ヶ月ぶりに福岡から上京した木下弦二のソロ・ライブを
23日神田は小川町のショーンにて堪能した。東京ローカル・
ホンクのソングライターとして長年に亘り活動してきた人だ
が、バンド・サウンドの豊かさを極めたホンクの音楽とはま
た別の、弾き語りならではの秘めやかな響きに今夜も酔った。
一曲が終わるごとにその余韻を思わず反芻したくなる。そん
な歌い手は稀だ。

昭和歌謡の「アカシアの雨が降る時」や「上を向いて歩こう」
を取り上げる時でも、木下のオリジナルとしてお馴染みの「
ハイウェイソング」や「お手紙」を歌う時でも、彼が言葉を
慈しみ、和声を飛躍させ、さらに世の中をすくっと見渡して
いることが解る。木下が弾くアクースティック・ギターには
ジョアン・ジルベルトからカエターノ・ヴェローゾに至るブ
ラジル音楽の語彙があり、はっぴいえんどやはちみつぱいが
切り開いてきた日本語ロックの衒いの表情がある。そんな一
つ一つを改めて噛み締めてみた。

木下弦二は人一倍社会への意識が強いアーティストだ。その
ことはこれまで彼が発してきたMCや発言からも容易に見て
取れる。ただ木下の場合それらをダイレクトに歌へと反映さ
せたりはしない。彼はきっと本能として、あるいは意識しつ
つ、歌が一定の党派性を帯びてしまう危険を敏感に察してい
るのだろう。「僕は”長持ちする歌”を歌いたいんです。若い
頃はいわゆる”ロックの言語”に頼っていた時期もありました。
でも僕は歌に対してもっと篩にかける作業をしたい」と。

勇ましいメッセージ・ソングが必ずしも人々の心を溶かすと
は限らない。いや、言葉と主張が強ければ強いほど、その網
から零れ落ちてしまう感情の襞は少なくないのではないだろ
うか? 夜風が頬を撫でる。長かった冬がもうすぐ終わる。
木下弦二が育む歌の数々がそこにあればどんなに幸せなこと
だろう。

〜23日のセットリスト〜

第一部
1 生きものについて
2 アカシアの雨が降る時
3 上を向いて歩こう
4 ハイウェイソング
5 お馬鹿さん
6 冬眠
7 湯けむりの町
8 夏みかん
9 BRIGHT SIDE OF THE ROAD
10 お手紙

第二部
1 遠い願い
2 杉作より
3 トンネル
4 お猿
5 遅刻します
6 私の青空
7 港の見える丘
8 自然ソング
9 おいで、おいで
10 みもふたもない
11 ダーク・マター

〜アンコール〜
1 僕は一寸
2 THAT OLD LUCKY SUN
3 夜明け前


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# by obinborn | 2017-02-24 01:14 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

以前勤めていた会社が自己破産した

以前勤めていた会社が倒産した。帝国バンクの情報によると14億6000万の負債を抱え、
2月10日東京地裁に破産を申し立てたらしい。出版不況が叫ばれて久しいが、その波は
じわじわと業界を浸食し、私が長年お世話になった職場も例外を免れられなかった。93
年度が売上げのピークであり、以降は次第に下降線を辿っていった点もインターネットの
到来とほぼ歩を一にしている。ネット検索をし、ただ同然で地図の入手が出来て、旅行に
まつわる観光ポイントや宿泊手続きが得られる昨今、書店に足を運び対価を支払い道路地
図やガイドブックを購入しようとする人はあまりいないだろう。ちなみに昨年度決算時の
売上げは約30億まで低迷。これは最盛期の三分の一の数字だったと報告されている。畑
違いとはいえ、その構造はダウンローディングという音楽配信によってCDの売上げが伸
びず、レコード会社が苦境に陥っていった90年代末以降と似ているかもしれない。

私が社の異変を感じ取り退職したのは2007年の2月だったが、まさかそれからちょうど
10年後に自己破産するとまでは正直読み切れなかった。リストラを断行し不動産を売却し
全国規模だった支店を統廃合するなど、規模を縮小しながらもサヴァイヴァルしていくの
かな?と漠然と思っていたからだ。ただ、99年前後を境にこの会社は新卒採用を一切しな
くなった。新しい世代に未来投資出来なくなった企業を、第三者がどう見るのか?いかに
ジャッジするのか?不吉な兆候はこの頃から既にあった。やがて資金繰りが悪化し、幾つ
かの取引先から関係の見直しを迫られ、競合他社との得意先の争奪戦に敗北していった。

それでもかつて苦楽を共にした社を悪く言う気にはなれない。私以外にも社を去った者は
多く、今は教師、公務員、著述業など皆それぞれの道を歩んでいる。結局、会社から去る
のも社に残るのも個人の人生選択の一つでしかないのだろう。いつか皆と懐かしく飲み明
かせる日が来るのを願っています。

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# by obinborn | 2017-02-19 08:35 | one day i walk | Comments(0)  

2月12日〜本日のレコ捕獲

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ラリーパパの東京公演は本当に素晴しいものだった!詳しくは
拙稿を読んで頂くとして、会場でイラストレーターのS氏や日
本コロンビアのディレクターE氏らとお話し出来たことも有意
義だった。仮にお世辞半分としても「オビさんは自分でチケッ
トを買ってライブに行かれる」とか「サラリーマン出身なので
音楽業界の悪癖に染まっていないところが好き!」なんて言わ
れると自然に溜飲が下がります。打ち上げではガンホさんに向
かって「きみのギターはデュエイン・オールマンみたいだね!」
などと宣うジジイ=私でした(笑)

翌日の12日はライブの余韻を噛み締めつつ、新宿までレコハン
に。今日はそれほどの成果を上げられなかったものの、ユニオ
ンにてグレアム・パーカー&ザ・ルーモアの12インチ「HEY
LOAD DON'T ASK ME QUETIONS」と、米マーキュリーの
『HEAT TREATMENT』の2枚を入手した。いずれの曲もすっ
かり身に染み込んでいるけれど、12インチ及び米盤のダイナミ
ックな音で聞けるのが嬉しい。2枚計で¥1,188!その後は近
所にあるアサヒのビアホールへと駆け込みました!

ぼくが尊敬する米国の音楽評論家、故ポール・ウィリアムズは
かつてこう言っていた。「無心になって聞いてごらん。言葉が
出てくるのはそれからでいい」と。その通りだとぼくは思う。
音楽評論家は聞き手を侵害してはいけないし、かと言って自分
の主張や見解を述べずにいる訳にも行くまい。ぼくが大好きな
東京ローカル・ホンクやラリーパパたち。それがもっと多くの
人々に伝わったら、どんなに素敵なことだろう。



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# by obinborn | 2017-02-12 20:20 | one day i walk | Comments(0)  

2月11日のラリーパパ&カーネギーママ

まさに感動の夜だった。昨年復活を遂げたラリーパパ&カーネギーママの東京公演。11日の青山の月見ル君想フは見事なまでの大入りとなり、確かなうねりに満たされた。普段CDで接するよりずっと骨太で逞しい音群があり、アメリカ南部のスワンプ・ロックへの理解があり、しかもラリーパパの場合、それらを自分たちが暮らす日本の町並へと重ね合わせていく繊細さがある。洋楽への憧れとオリジナル曲との超克はジャパニーズ・ロック永遠の課題であろうが、東京ローカル・ホンクが実践しているように、ラリーパパたちもまたその問い掛けにしっかり応えてくれた。音楽的にはレスポールの特性を生かし切ったガンホの伸びやかで光沢のあるギターを特筆したい。あるいはチョウ・ヒョンレとスチョリとで硬軟を使い分けるヴォーカル・パートのコントラストのこと。黙々と横揺れビートを供給し続けるリズム隊の貢献のことを。かつて共演したオクラホマのソングライター、ロジャー・ティリソンから「自分の息子たちのようだ。アメリカに連れて帰りたい」とお誉めに授かったラリーパパだが、この日もロジャーのGet Up Jake、Calling OnYou、Rock'n Roll Gypsiesなどを織り交ぜながら、今は亡き彼を偲んだ。チョウ・ヒョンレがソロで弾き語ったOne Good Friendを聞いていると様々な思い(人種融和と文化の壁など)が往来する。最後に個人的な事項になってしまい恐縮だが、ぼくがラリーパパと再会したのは、2000年頃にぼくが書いたラリーパパの記事をチョウがしっかり覚えていてくれたから。自分がつい忘れがちになってしまっていたことを他の誰かが記憶に宿している。これほど書き手を励ますものはない。そう、チョウはメールにこう書いていた。「これまでの恩はしっかり音楽で返します!」と。
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# by obinborn | 2017-02-12 09:59 | one day i walk | Comments(0)