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ロニー・ウッド〜年老いたコヨーテが月に吠えているよ

およそ9年ぶりとなるロンウッドの新作”I Feel Like Playing"
こちらもすごぶる良い 普段ラジオなどではぼくの好きな音楽は
めったに流れないが こういう苦みのある 重ねてきた年齢と釣り合
ったロックアルバムを聞く喜びは何物にも代え難い 

枯淡の極地のような前作”Not For Beiginners"あるいはその
前の”Slide On This"に比べると明るさが際立つといった感想
もあるようだが 明るいとか暗いとかは同じ人間が持つ二つの
側面に過ぎない ぼくだって同じ日に晴れやかな気持ちにもなる
し 暗雲が押し寄せてくることもある 同じ日に太陽が顔を出せば
雨が降り注ぐこともある だからこの新作もロンウッドの現在を
ときに陽となり ときに陰となりながら映し出す リフの一振りや
唸りを上げるスライドギターの彼方に 彼の姿がくっきりと見えて
くる

「老いたコヨーテが月に吠えているよ」というリリックで始まる
自伝的な「Why You Wanna Go And Do A Thing Like That
For」がオープニングに選ばれている  歌詞はこう続いていく
「何もかもがうまくいっていたのに まるで天国から地獄に突き
落とされたような気分さ どうしてきみはそんなことをするんだい?」

老いたコヨーテ(それはぼくみたいだね)という含みを聞き手は
むろん無言のうちに感じ取っている
この曲ではいつの間にか自分でも知らないうちに富と名声を
得てしまった自分の半生をロニーは振り返っている
あからさまな自己告白 自己憐憫ではない振り返りとして
これ以上のものはなかなかあるものじゃない
彼の嗄れた声が曲の表情に陰影を与えている

かと思えば「Lucky Man」では自身の幸運に感謝するロニーがいる
何よりもミディアムの曲作りを得意とする彼が珍しくファストな
曲を書いたことに驚かされる
こちらの曲では 生まれ変わっていく日々 やり直していく自分に
ついて主人公は歌っている

つまり雨と太陽との関係というのはそういうものだ
だから野暮を言うのはもういい加減止めておくれ

多くの人々は自己懐疑と”まんざら悪くもないだろう”という気持ちとを往来
しながら また次の朝を迎える 

アルバムタイトルに思いを込める音楽家は数多いだろうが
酸いも甘いも噛み締めた男の姿が その行間から溢れ出してくるようだ

 

by obinborn | 2010-09-27 16:11 | rock'n roll | Comments(0)  

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