ビート詩人の跡地を求めて

今日のウォーキングは10,459歩とやや軽めに仕上げました
ジムで体を鍛えている佐野元春さんのまえでは私の歩きなど
まだまだ甘いものですが もはや毎日の歩きは思索のための
人生の主題となりつつあります

そもそも限りない欲望を呑み込んでいくような物質社会に踊らされている
のが私たちの現実です  音楽にしてもネガティヴなことはあまり言いたく
ありませんが 100人の新人が毎年デビューするとして そのすべてが価値
ある成果を収め 記憶に留まるなんていうことはありません 
宣伝を鵜呑みにするのではなく 自分の耳で本物の匂いを嗅ぎ分けていき
ましょう  私にも必要なものとそうではないものがだんだん見えてきました

ヴァン モリソンの詞作にも 現代文明への警告 歴代の詩人や作家への敬意
そして自然や沈黙との対話がよく出てきますが 彼のそんな思索の足がかり
となった一枚が73年の『苦闘のハイウェイ』でした これといったヒット曲の収録
もなくかなり地味な仕上がりで 私自身忘れていたようなアルバムだったの
ですが 先日DJの際オオツボさんが回していたとき 認識を新たにした次第です

全体がジャズのスモールコンボを意識した4ビートでゆったりと進行していきます
そのビートのさざ波のなかをじっくりと噛み締めるように歌う彼のスタイルの萌芽
が感じ取れます  こういう展開が3分間ポップスの市場原理と相容れるはずは
ありません 結果ゆっくりとフロウしていく長尺のナンバーが多くなってきた時期で
もありました  ヴァンといえば80年代に引退説が囁かれましたが 資本主義の
ルートにスピリチュアルなものを乗せていく矛盾が恐らく彼のなかで飽和点に達し
てしまった故だったのでしょう

ジョニー コピンが後年カヴァーした「Warm Love」のような可愛らしく軽快な曲も
いいし 「ぼくたちは世界大戦が終わってから生まれた」と歌い出される「Wild Chil
dren」にもヴァンの世代が濃密に映し出されています あるいは「The Great Dece
ption」での欺瞞ロッカーや宗教への告発は 世俗を嫌うヴァンの姿と重なっていきます

最大の聞き物は10分を超える「Autumn Song」でしょうか
まさにゆっくりと歩いていくようなテンポで秋の気配を滲ませていくこの曲は
期せずして この季節の思索に欠かせない私のベスト トラックとなりました
ヴァンと掛け合っていくジョン プラタニアのギターも素晴らしいの一言

このアルバムをリリースしたあと ヴァンは初期のキャリアを凝縮した2枚組の
ライヴ盤を経て あの名作『ヴィードン フリース』を生み出していきますが
そんな立ち位置から振り返ってみても この『苦闘のハイウェイ』はもっと語られる
べき作品かもしれません 

ジャケットには牛や鳥をあしらった大地が描かれ 老人が宙を仰いでいます
また左側にいる姿を服で隠した人間も何やら暗示と警句に満ちているようです


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by obinborn | 2010-10-27 19:04 | one day i walk | Comments(2)  

Commented by ちーくん at 2010-10-27 22:14 x
そういえばこのアルバム、最近聴いていないぞと思い、久々に聴きました。

今のこの気候にも丁度合っているのかもしれませんが、やはり味わい深い。

噛めば噛むほど味が出るスルメ烏賊。

WARM LOVE 最高ですね。てか、捨て曲なし、かな。

思い出させていただいてありがとうございました。
Commented by obinborn at 2010-10-28 06:13
ホント、これぞ語られない名盤かもしれないです
ポエトリーリーディングのような手法をこの時期から確立していったんですね
ぼくも久しぶりに聞いて感動しました リマスターCDが出ていたら欲しいです

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