牛心隊長を悼む〜モハービ砂漠のハウリン・ウルフのために
により帰らぬ人となった 享年69歳
むろん音楽活動からはとっくに引退しもう一つの才能である絵画に打ち込んで
いるという話が伝わってからしばらく経つ
頂点を極めた異才のその後としてそれも正しい道だと隊長ファンの誰もが
納得していた彼の選択だっただけに どこかでずっとその姿を愛おしいものと
して多くの人たちが受け止めていた
あらゆる意味で破格の人だった
イアン デューリーにもそう感じ入る共通分母は少なくないけれども
知性と身体とがと分け隔てなく結び付いたどこまでも磊落な人だった
多くのロックファンが彼のそんな部分の虜になっていった
ザッパが隊長を欲しがったのも そのフィジカルな魔力ゆえだろう
前衛ごっこやアートを気取る音楽家は昔も今も後を絶たないけれども
デューリーやビーフハートほどその表現が肉体へと還元されていくような人は
なかなかいない
どこまでも無邪気な人だったのだと思う
彼には彼に見える宇宙の秩序があって そこには何の曇りもありはない
その秩序を隊長は音という絵の具で奔放に描いていくだけだ
しかし少なくともそれは一般的な平均律ではあり得なかったし
彼はむろんフォーマットという一般論とはどこまでも無縁であり続けた
果たして一体何が”一般的”なのだろうか?
その基準からはみ出ることこそが表現という”絶対的な自由”であるにも
かかわらず
音楽という抽象を捉まえるための問いだけがそこに残ってしまった
モハービ砂漠のハウリン・ウルフは もう永遠に答えてはくれない
2010年の冬に
小尾 隆
さようなら、牛心隊長
by obinborn | 2010-12-19 03:25 | rock'n roll | Comments(4)
亡くなってしまいましたね。ビーフハート。
近年は音楽活動していなかったようですが、ザッパと一緒に残した作品は彼にしかない色が加わってザッパバンドだけの作品とはまた違う味わいでした。
『bongo furay』(75年)でのザッパとの共演がぼくにとって初の
牛心隊長の体験でした やはりザッパは自分にはないものをビー
フハートに求めていたのだと思いますが 二人の相乗効果も素晴ら
しいですね! こういう奔放な個性がもうシーンに現れないかと思う
と寂しいです
最初は難解でしたが、ある日突然大好きになり、一応オフィシャルのアルバムは全部集めました。彼の音楽には、いかに「前衛」の衣をまとっていようとも、根底にブルーズが感じられます。自分にとっては彼は最も独創的なブルーズマンです。1984年頃を最後に音楽のシーンから姿を消しましたが、やはり戻ってこなかったですね。そういうところも彼らしいと感じました。
ぼくもまったく同感で ある日突然牛心隊長が降りてきたんです(笑)
彼について書かれた文献は難解(ここら辺の問題は同業者のはししくれとして考えなければいけないのですが)なものが多かったのです
が 音そのものはもっとストレートにずしんと響いてきたのです
本当に広義の”ブルーズ”だと思います 形式(format)のなかで
演奏するのではなく 彼自らが新しいスタイルを導き出していく
これが圧倒的に違うことなんだなあ、、、としみじみ
『カラスのためのアイスクリーム』(virgin 82年)も大好きな
隊長のアルバムですが 音楽シーンの堕落とともに引退した
のも本当に牛心隊長らしくって 何だか涙が出てきます