sail away

アメリカには食べ物がたらふくあるぜ
アフリカみたいにジャングルを駆け回る必要もないんだ
さあ、神に感謝してワインを飲もう
ああ、アメリカ人になることは素晴らしい

ライオンも虎もいない マンバもいないぞ
スイカにそば粉ケーキが美味しいぞよ
努力すればするほどハッピーになれるんだ
さあ、黒ん坊どもよ  私とともに出港したまえ

船出するよ 大海原を超えて  チャールストン港へ
出港するぜ 大海原を超えて チャールストン港へ

アメリカでは誰もが自由なのだよ
家を持ち家庭を築くには最適なんだ
猿の木に登る猿のように あんたは幸福を見渡せる
ああ、アメリカ人になるって 素晴らしいぞよ!

さあ、黒ん坊どもよ
この奴隷船に乗って出港するんだ
大海原を超えて
チャールストン港へ行くんだ

(ランディ ニューマン「セイル アウェイ」)

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ランディ ニューマンの72年作『セイル アウェイ』は奴隷船が出港する歌で始まり
神が人類を高笑いする歌で終わるという 空恐ろしく 受け止め方によっては尊大
なアルバムだ

元々この人は二律相反というか 綺麗なメロディに皮肉な歌詞を乗せるのが巧
みであり そういえば自ら弾くピアノはリリカルなのに 歌はぶっきらぼうな伐採屋
といったところだ こんな分裂感もファンにはたまらないのである

歌詞はディランほどイメージの飛躍があるわけではなく むしろシンプルに言葉を
選び取っているくらいなのだが 「私が」「ぼくが」といった一人称での語りかけ
であっても けっしてニューマン本人の情感ではないところがミソ

ある時はシナトラ(「ロンリーアットザトップ」)になり ある時はアル中おやじ
(「ギルティ」)になり またある時は中流階級の主人(「リヴィングウィズ
アウトユー」)になり、、、と変幻自在に主人公を入れ替え この客観性が物語を
作るための何よりの助走となっているのだ  

自己憐憫的なフォークや好きだ愛してるだをまるで盛りの付いたサルの如く
吠えるJポップばかり聞いていると そういう想像すら思い浮かばないのかも
しれない(余談めくが 愛とか恋とかいう言葉を使わずにその感情を表現
するのが優れた音楽や文学ではないだろうか?)   
                                                                            
叔父のアルフレッド ニューマン(映画音楽家)の影響だろうか ランディの作風も
また映像的な喚起力があり それはピアノの弾き語りでも オーケストレーションが
施された曲でも存分に活かされている

アルバム『セイル アウェイ』に立ち返れば
佳き日々を慈しむような「デイトン、オハイオ1903年」などの小品がいい例だろ
う 皮肉や嘲笑のなかに隠されたランディの最もピュアな部分が溢れ出ているこ
とを ぜひ聞き取りたい

他にもこのアルバムには老人、石油王、高圧的科学者、サイモンスミスと彼の熊
などが曲ごとに登場し 結果的に20世紀のアメリカを鳥瞰してみせた
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by obinborn | 2011-01-07 01:47 | rock'n roll | Comments(0)  

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