友部正人/ロックンロール

ぼくが一番歌いたかったとき
ぼくのまわりには歌いたい歌なんか全然なかった
だからぼくは茂みに隠れたり
墓石を叩いたりした

ぼくがやっていることを歌っている歌なんて全然なかった
だからぼくには昔を振り返る歌がない
ぼくは線路のうえをどこまでも歩く夢を見たし
バスの窓から見える景色を何枚も取り替えた

そうさ ぼくには昔を振り返る歌がない
赤い傘をさした女の子がいるだけだ
ぼくはいつもくるくる回っていた
夢を早く現実にしたくって

そうさ ぼくには昔を振り返る歌がない
だけどそんななかで知り合ったたくさんの人たちがいた
たぶん その人たちがぼくの歌なんだろう
そのなかの何人かの人たちは今でも友だちさ

ぼくはぼくがやっていることを自分で歌にした
誰もぼくのやっていることなんか歌わないから
ぼくはぼくのやっていることを歌い続けた
だからときどき とても寂しくなるんだろう

ジョン・レノンが1975年に出したレコードには
ジョンの昔のことが歌われている
それはジョンが作った歌じゃないけど
ジョンの昔のことがとてもとく解るんだ


友部正人「ロックンロール」
アルバム『カンテ・グランデ』(84年)に収録
『クレーン』(2010年)では東京ローカル・ホンクを従えて再録音された

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ひょっとしてこの時期の友部はヤング マーブル ジャイアンツやレインコーツを
聞いていたのかな? 
そんな風にしてフォーク音楽のフォーマットから少しだけ離れてみたサウンドは
前作『ポカラ』と肌合いを同じくするものだ

この「ロックンロール」には 他者のなかに自分を発見していこうとする態度が
あり 歌のなかでリヴァプールと”自分の町”とが柔らかい輪郭を描き出しなが
ら交差する

そして聞き手たちは他人の歌が自分の歌でもあるという真実を
きっと噛み締めることだろう
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by obinborn | 2011-01-23 20:21 | rock'n roll | Comments(0)  

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