2月14日

昨年の暮れから読み始めた山崎豊子『運命の人』の四巻〜完結編を
読了しました 今年4冊め

テーマは以前にもここで書きましたが 1972年の沖縄返還に伴う日米
の”密約”に関するものです
それを新聞記者である主人公、弓成が暴くのですが 国家権力による
壁は厚く 望みを繋いだ司法の場でも最高裁で彼は敗れてしまいます
第四巻はすべてを失い失意の底に落ちた弓成の再生への道が描かれて
いきます

佐藤内閣のもとでの72年当時の”密約”が公文書として残っていた
そのことが近年スクープされたことは記憶に残っている方も多いと思いますが
図らずもその記事によって弓成の”失われた30年”は救われ 僅かな光明
を見出していくのです

あえて正論めいたことは書きませんが 戦後仕事を探してブラジルまで
渡った沖縄の一家の物語や あの忌まわしい沖縄決戦の様子
あるいはハーフという出自に苦しむ娘の姿なども丹念に書き込まれていて
襟をたださずにはいられません

「55年といえば本土ではもはや戦後ではないという言葉が聞こえ始めた頃
であるのに 沖縄では敗戦のツケを背負わされた人々が 生活のすべてを奪
われ喘いでいたのだった」

この一言は今なお重くのしかかってきます
そう、普天間基地問題など 今なお沖縄は戦後を生きているのですから

音楽を楽しむのは大いに結構 自分もまたそれを享受しています
しかし 想像してみる力 過去から学ぶ姿勢は忘れたくないものです

著者の山崎さんは大正13年生まれとのことですから ぼくの父親とほぼ
同じ時代を生きてきたことになります

山崎さんがしっかりと”戦後”を書き留めてくれたことに感謝します

e0199046_20414410.jpg


05年にこの大作を書き始めてからの途中には入院することもあった著者ゆえに
主人公に言わせる「書く時間はそれほど長く残っていない」という科白はリアルだ
[PR]

by obinborn | 2011-02-14 20:55 | 文学 | Comments(2)  

Commented at 2012-08-21 10:47 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by obinborn at 2012-08-21 11:51
こちらこそブログがここのところ停滞気味ですみません。でも過去の記事
を読み返して頂ける方がいらっしゃるのは嬉しいものですね。たまたまこの時期に読んでいただけですけど(笑)

<< 2月15日 火の玉ボーイ >>