転がる石のように
乞食に10セントを投げたりして いい気になっていたね
あんたはお高い所にいた
そうじゃなかったとは言わせるものか
気をつけろ いつか落ちぶれてしまうんだぜ
あんたはそこら辺の連中すべてを軽蔑し笑い者にしていた
ところで今のあんたはroud(大声)で喋れない
ところで今のあんたはproud(自慢)も出来やしない
次の飯にありつくのがやっとだろう
ねえ どんな気がする?
どんな気がするんだい?
指し示す家がないということが
帰る家がないことが
お嬢さんは一流大学に行っていた
でも気がついたのかい? 搾られて慣らされるだけの場所だったのさ
誰も宿無しの人生なんか教えちゃくれないんだよ
ねえ どんな気がする?
どんな気がするのさ?
まるでずっと暗闇のなかにいて
自分の家すら見つからないってことが
決して振り向かなかったよね
道化師たちのマジックを むしろあんたは嘲笑していたくらいだ
良くないことだぜ
あんたに他人の楽しみを奪う権利はないだろう
たとえあんたがクローム付きに乗馬していたとしても
どんな気がする?
指し示す家もなく ひとりぽっちでいることを
どんな気がする?
まるで転がる石のように 誰にも知られていないことは
いつかあんたは貴婦人たちと塔の上で宴を開いていた
上流階級の人たちと富をむさぼっていたシャンパンを開けていた
搾るだけ搾りとってね
まさか「うまくしてやったり」とか思っていたんじゃないだろうな?
そのダイヤは質屋に入れたほうがいいぜ
いつかあんたはナポレオンの話を面白がっていたよな
ボロ切れを纏った彼と 彼の勇敢さをまるで知的玩具のように扱っていたね
ならば 今すぐナポレオンの場所へと行くべきさ
呼んでいる 呼んでいるのさ
目に見えないし隠す必要もないけれど
呼んでいるんだぜ
ねえ、どうな気がする?
どんな気がする?
指し示す家もなく
まるで石ころのようにひとりぽっちだということを
(ボブ・ディラン「Like A Rolling Stone」 1965年)
黙示録的な「ライク・ア・ローリング・ストーン」を冒頭に据えたディランの65年作
アルバムは暗喩的な「やせっぽち男のバラッド」を折り返し地点として表題曲の
「61号線の再探訪」へとロックし 最後はイメージが奔放な飛躍を見せる長尺曲
「廃墟の町」で幕を下ろす
by obinborn | 2011-02-26 01:50 | rock'n roll | Comments(0)