5月23日
愛おしい理由を自分なりに考えてみると
それが”低予算ロック”の先駆だったからなのだった
ポールはスペクターが自作バラードに弦アレンジを施すことに我慢出来ず
ウィルバートは元祖テクノのようにR&Bの「レッツ・ウォーク・トゥゲザー」を
再演していた
時は変わり80年代半ば これはメンフィスの物語
アレックス・チルトンもまた低予算ロックの寵児となりつつあった
過去の業績はともあれ
後押ししてくれたのはREMなどのカレッジ・シーンのみだったことは想像に
難くない
西や東の都市からは産業ロックがテレビを覆った
基本の相方はドラムズのダグ・ガーリソンであり
音の質感はまさにスカスカ
その力学(というか脱力)はまんまギター・スリムでありときにスリム・ハーポ
のブルーズにも似ている
むろんパンク・ロックの勇ましい伝説に関しても この人はただただ照れるだけ
なのだった
自分のしたいことだけをするという行動原理には とても困難な責務が伴う
言わずもがなのことだが それは
自分が嫌いだと思ったことは絶対にしない! という哲学と同義なのである
いや もっと正確に言おう
陽が昇り今日が始まり 陽が暮れて今日が終わる
そのことに関してアレックス・チルトンという人はとても正直だったのではないか
とぼくは思っている
どんなに年輪を重ねたとしても またいかに知恵を付けたとしても
この人の歌は いつだってそれを”まっさら”へと戻してゆく
by obinborn | 2011-05-24 01:24 | rock'n roll | Comments(0)