タージさんはリゾネイターがお好き

時は67年 ハリウッドのクラブ、ウィスキー・ア・ゴー・ゴーの客席にいた
ミック・ジャガーは出演していたタージ・マハールに感激してこう言ったとか

「ねえタージ、今度ロンドンに来て、俺らのバンドとテレビ出演しないかい?」

これが68年の12月に行われた『ロックンロール・サーカス』の序章である
ザ・フー、ジェスロ・タル、EC、ジョン・レノンなどなど錚々たる番組出演者たち
のなかで 殆ど無名だったタージ・マハールが抜擢された背景には ミックの
こうした”会ったとたんに一目惚れ”があったのだ

その際の素晴らしい演奏は現在CDやDVDで確認出来るのでここでは多くを
語らないが そのイベントの少し前に発売されたタージのセカンド・アルバム
『ナッチェル・ブルーズ』(67年)のことを今日は少々メモしておきたい

というのもゲイリー・ギルモア(b)、チャック・ブラックウェル(ds)という
リズム隊は勿論のこと ジェシ・エド・ディヴィスのギターをフューチャーしたこの
カルテットが『ナッチェル〜』のベーシック・メンバーであり また『サーカス〜』
でタージを囲んだ人たちだったから

実際アルバムを聞いてみると ホーマー・バンクス作の重厚なR&B「a lot of
love」(ザ・バンドも『アイランズ』で演奏していたっけ)やウィリアム・ベルの
スタックス・ソウル「you don't miss your water」(ザ・バーズも『ロデオ』で
披露)から伝承曲「colina」まで タージが育ってきた音楽地図を一望出来る

演奏面での肝はやはりジェシのギターかな

それほど目立ったリード・プレイはしていないものの指弾きで随所にいい
オブリを付けていたり  レズリー・スピーカを通してちょっと面白い残響音
で何ともファジーなリズムを刻んだりと まさに影武者の如し

そのジェシと上手くコントラストを描き出しているのがタージ自らが弾く
リゾネイター(鉄製の共鳴盤付きギター)であり また何ともレイジーに吹く
ハープだろう このアンサンブルが恐らく重過ぎずされどカントリー・ブルーズ調
ともまた違うサウンドスケープの秘密だと思う

本作のなかで最も有名になった曲といえばブルーズ・ブラザーズが取り上げた
「she caught the katy and left me a mule to ride」だろう 重心の低い
リズムに支えられながら タージとジェシそれぞれのギターが自然に交差して
いく瞬間は思わず息を飲むほど

ところでこの「she caught〜」はタージのオリジナルだが 作者のクレジットに
何気なくヤンク・レイチェルの名前を加えている点にも注目したい(それとも
実際にヤンクと共演したことがあったのだろうか?)

ご存知の通りヤンクはスリーピー・ジョン・エスティスの相棒として広く知られる
けれど こんな気遣いにもタージの人となりがよく現れているのでは

そう、タージもまたライ・クーダーと同じように自分たちの音楽がどういうところ
からやって来たのか まるで足跡を辿るように記していたのだ

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今回はあえて米盤とは異なる英directionレーベルのジャケットを
ヒップスターともいうべき若き日のタージである
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by obinborn | 2011-06-08 20:23 | one day i walk | Comments(6)  

Commented by こまつざき at 2011-06-08 20:50 x
小尾さん、こんにちは。ご無沙汰です。
僕はなぜか、タジ・マハールといえば、(ザ・バーズの「ロデオ」期のドラマー、故ケヴィン・ケリーやライ・クーダーとやったライジング・サンズや「テイク・ア・ジャイアント・ステップ」の頃、つまり初期なんかも好きですね。
あっ、それとブログ、引っ越しました。ここです。

http://ameblo.jp/milkwoodrecords/

たまには遊びに来てくださいね~。

それと震災後の海外ミュージシャン(スポーツ界もそうですが)の来日中止に対する一部日本人からの反応について。
僕も小尾さんと同じことを思ってました。
来日中止を決断したミュージシャンに対する糾弾のようなもの、いびつなナショナリズムとまでは言わないまでも、なんかマッカーシーの「赤狩り」にも通じるものがあるような期がしますね。それこそピート・シーガーらも巻き込まれたときのような。
Commented by obinborn at 2011-06-08 22:46
およよ、きみは小松崎くんではないか(笑)
実は今日気になって貴logを拝見したらちょうどお引っ越しされて
いたところでした 勿論新しいlogも観させていただきました(新装
開店おめでとうございます)
来日中止の音楽家たちに対する文句ばかり並べ立てる人達を
見ていてぼくは気持ち悪くなってしかたありませんでした
適切な言い方かどうかわかりませんが ああ、この人たちは単に
自分が見たいミュージシャンを観れないというだけでバッシング
するような心の狭い(相手の気持ちを汲めない)神経の持ち主
なんだなと思ったのでした
それにしてもバーズ人脈からケヴィン・ケリーの名前が出てくる
なんてこまっちゃんらしいですね ぼく自身うっかり忘れていました
Commented by Almost Prayed at 2011-06-09 20:45 x
てっきり自分は“She Caught The Katy~”という曲は、ヤンク・レイチェルの曲を後にタージ・マハールが改作か何かしたものだと思っていましたが、実際のところはどういう事情だったのでしょうかね。よくはわからないのですが。

それはさておき、レコードとかで外部からブルーズを真似して学習していったという経緯は、言ってみれば白人のブルーズ・ロック勢と同じ立場ですが、それを逆に自身の音楽的な姿勢の強みとして活かしていったのがタージ・マハールの素晴らしいところですね。そうした立場からブルーズに接していったからこそ、変に硬直した「ルーツ」に対する固定概念から離れることができたのでしょうね。すでにこの時点で正面切ってサザン・ソウル方面の曲を取り上げたあたりが彼の面目躍如たるところですね。

後にドン・ニックスのプロデュースでマッスル・ショールズでの録音で、アルバート・キングも“She Caught The Katy~”をカヴァーしていますが、学究派のタージ・マハールが逆に本流のブルーズマンやサザン・ソウルに対して影響を返していった、と。そうしたことが起こるのが音楽の面白いところですね。
Commented by obinborn at 2011-06-10 01:33
エル・テッチさんも書かれていたのですがアルバートの『lovejoy』
アルバムでしたね ぼくはまだ同盤でのヴァージョンを聞き返して
いないのですが きっとアルバートならではの”太い”仕上がりだった
ろうな、と
タージのキャリアを俯瞰していくと”気付き”のような立ち位置で
素直にブルーズにもサザーン・ソウルにもアプローチしているん
ですね! 確かタージは大学も卒業しているし 時代的にはまさに
60年代初期のブルーズ/フォーク・リヴァイヴァル以降の世代に
属しています そんな意味ではヨーマ・コウコネンやジェリー・ガル
シアそして勿論ライ・クーダーに近いところにいた人なんだな、
と認識を新たにしています

Commented by てるきん at 2011-06-14 17:34 x
 お久しぶりです。
 大好きなタジの記事なので思わずコメントします。
 良くタジは学術的と言われますが、知性・好奇心を持ちながら自分のアイデンティティを掘り下げ、血肉化しながら大河の流れのように現在に至ってきていると思います。
 私もそうやって自分の人生を楽しんでいきたいと思います。
Commented by obinborn at 2011-06-14 17:55
お久し振りです 
そうですね、タージの場合は学術的といっても頭でっかちな部分は
なく音楽にグルーヴ感が漲っているのが素晴らしいですね
今すぐにCDは出てこないのですが 近年では今をときめくジョン・
クリアリーと共作していたり やはり彼の周囲にはいいミュージシャン
が沢山いますね 久し振りに『music fuh ya』を聞きたくなってきま
した

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