tedeschi trucks band/revelator

想像以上にスーザン・テデースキの歌へと寄り添ったアルバムだ 

大所帯の編成からしてぼくは果てしなくインプロヴァイズしていくようなジャム
演奏を勝手に予測していたのだが デレク・トラックス・バンドで試みてきたそう
した実験的な部分よりも ぐっとソング・オリエンテッドな仕上がりになっている

計11人が声となり音となり まわりの空気を震わせているのだが けっして厚ぼ
ったくならず むしろスモール・コンボのように抑制されたアンサンブルを響かせ
ていることに驚いてしまった

むろん細部に耳を当てていけばホーンズもいればドラムズもツインズ体制だっ
たりとそのサウンドスケープは豪胆かつ複雑なのだが それらすべてを風通し良
くさらりと聞かせていく これはひとえにテデースキの歌心ゆえであり またデレク
が音楽全体をすくっと見渡しているからだろう 

中村まりのヴォーカルもすごく素直だが ここでのテデースキの歌にも虚飾が
まるで感じられない 全編を聞いて思ったのはまずそのことだった

そうした力の抜け具合がかえって歌に膨らみを与えていく
それを何よりも物語るのが「midnight in harlem」であり「simple things」
であり メンフィス・ソウルの語法を借りた「until you remember」だ

熱っぽい歌唱はときに熱狂出来ない聞き手を置き去りにするけれども
掌で歌をじわりと温めていく人には 明日もまた会いたいと思う
この人は果たして一体どんな痛みを携えながら音楽に向き合ってきた
のだろうとかと

ぼくが言いたいのは たぶんそんなことだ

あるいはデレクの音楽的視野を「these walls」に感じ取ることも出来るだろう
サードゥとギターが同じ弦楽器どうしで対等にフレーズを繰り出すかと思えば
タブラの音色が抑えたスネアと手を携えながら そっと笑みを交わす

言葉でも分析でもなく 音楽を聞いてきて良かったと思わせるのは
いつもきまってこんな瞬間だ

振り返ってみれば 過去の栄光を模倣するようになったオールマン・
ブラザーズ・バンドに新しい風を送り込んだのがデレク・トラックスだった

かつてのオールマンズで斬新だったのは何もデュエイン・オールマンのギター
ばかりではない 変拍子を多用するジェイモとブッチの打楽器がそうだったし
ベリー・オークリーが繰り出していく ときにルートから逸脱していくベース・ラ
インがそうだった

恐らくデレクはそうした部分こそをしっかりと見届けてきたのだろう
だからこそ自由な動きをする現オールマンズのベーシスト、オーテル・バーブリ
ッジに本作で白羽の矢を託したのだと思う

もう遙か彼方の光景になってしまったが ロック音楽がもっと自由で雄弁だった
時代があった

ものすごく解りやすく言えば ブライアン・ジョーンズはハウリン・ウルフのフレー
ズを習得したけれども それに満足することなくモロッコまで出向き そこで現地
の祝祭的な音楽に触れていく

あるいはブライアンが結成したローリング・ストーンズの歩みはどうだろう
彼らは自分たちに足りないことを少なくとも自覚していたし そうした思いは
ライ・クーダーやグラム・パーソンズとの出会いをもたらし
オリー・E・ブラウンのパーカッションをチャーリーと同期させてもいった

そんな心のありかのようなものを このテデースキ・トラックス・バンドは
ときに罪のように ときに喜びのように描き出していく

「過去から逃れて私はこの街にやってきたの」

そう歌われる「midnight in halem」でのテデースキのヴォーカルに
澄み渡るような音色でデレクのスライド・ギターがしっかりと応える
そしてコフィ・バーブリッジのハモンドB3はどこまでも どこまでも
遠景を追いかけていく

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by obinborn | 2011-06-14 01:53 | one day i walk | Comments(2)  

Commented by NOAH at 2011-06-14 22:24 x
毎日、繰り返し聴いています。

Midnaight・・・・は、ものすごく
ここちより夏の風を運んでくるような歌ですね。

是非、LIVEで聴いてみたいです。
Commented by obinborn at 2011-06-15 00:04
凄いアルバムが生まれたものです ぼくも購入以来毎日聞いています
「midnight in harlem」はほんといい曲ですね!
「come see about me」でコフィのクラヴィネットがせり上がってくる
部分などは 音楽は少し違いますが鈴木茂の『band wagon』を初めて
聞いたときの興奮に近い匂いがあります!

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