6月18日

佐野元春&ザ・ホーボー・キング・バンドを有楽町の国際フォーラムにて

思えば昨年3月の”アンジェリーナの日”を皮切りに始まった30周年の
アニヴァーサリーは 井上鑑らとのスポークンワーズからコヨーテ・バンド
とのクラブ・サーキット・ツアーへと広がりを見せながら 今回のファイナル
を迎えたのだ

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多彩なゲストを迎えたという3月の大阪公演とは異なり 一切の祝祭性を排
したような引き締まった演奏ぶりがむしろ清々しい
実際に描かれていくサウンドスケープにしても長田進のアグレッシヴなギター
も手伝って近年では一際ソリッドな印象を残す

T.Tシスターズの二人、竹内宏美と田中まゆ果による女声コーラスをあえて
起用しなかったことも この1年のホーボー・キング・バンドの特徴だったのか
もしれない

とくに「コンプリケイション・シェイクダウン」に導かれるように「99ブルーズ」
そして久しく演奏されることがなかった「欲望」といった警告的なナンバーが続け
ざまに歌われていく樣は緊迫感も相俟って この日のハイライトだった

ことさら”震災後”の延期公演ということを意識したわけでもないのだろうが 
ご祝儀の排除といい ヴァン・モリソンのように壮大な「きみを連れてゆく」を狂おし
いまでに熱唱する姿といい 佐野元春の”現在”を感じずにはいられない

振り返ってみれば 佐野はロック音楽が死に絶えたような1980年に 歩くよりも前に
走り出してしまった人だった

しかも彼は同時代的なパンク/ニューウェイヴと共振するというよりは むしろ
かつてのロックが導き出していったロマンティックな光景にこそ価値を見出して
いった

ワルツでゆったりと円を描き出すニュー・ヴァージョンの「レイン・ガール」も
演奏されたが  佐野はシンプルなリリックのなかに喜びや悲しみ 怒りや焦燥まで
を同時に促していく その動き出していく言葉たちを美しいと思いたい

どんな分野であれ 大抵の人々は世の中の流れに沿いながら生きていく
そのほうがリスクも少なく一定の保険があり まあ言ってみれば楽だから

しかしながらその流れが風向きを間違えていたら一体どうする?
その趨勢の陰で置き去りにしてきたものがあったら一体どうする?

つまり佐野元春の場合は真逆だった

流れに逆らっていくそんな彼の姿はときに無謀であり ときに孤独であり
またときにシニシズム(冷笑主義)の波に晒されたことも少なくはなかった
そんな風に孤軍奮闘する佐野の姿に ぼくはニール・ヤングのそれを思い
起こさずにはいられなかったのである

そうした意味では遅れてきた世代の不器用さや振幅の激しさを窺わせたが
佐野は丁寧に辛抱強く言葉を束ねながら こちらがいささかためらってしまう
ような日本語にアクチュアル(動的)な生命を吹き込んでいったのだ

もう遙か彼方の陽炎のようにしか思い出せない日々があった
傷跡が生々しく疼く今日があり 諦観に覆われた明日もきっとあるに違いない

それでも佐野元春は歌っていくことだろう

外がどしゃ降りになる前に

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by obinborn | 2011-06-19 07:25 | rock'n roll | Comments(6)  

Commented by NOAH at 2011-06-19 09:41 x
同じ夜、2F席の後ろで揺れていました。

R&Rナイトの演奏のあと、いつまでも拍手が鳴りやまなかった。

その時になんか、ああ今日は佐野元春を観ていたんだ
ということを実感してしまいました。

いつも通りのステージでなにかそれがすごく安心して見ていました。
Commented by obinborn at 2011-06-19 10:09
佐橋、長田と新旧のギタリストが揃い踏みした以外は華美な演出も一切
のゲストもなく それ故に演奏に集中する気迫が伝わってきましたね
そうした普段通りの姿が良かったとぼくも思いました!
Commented by kofn at 2011-06-20 16:54 x
父の日の昨夜、5歳と9歳の息子を連れて見てきました。
家族で最高のロック・ショ―を楽しむことが出来て満足です。
「欲望」のパフォーマンスは素晴らしかったですね。前半の山だったと思います。
それまで溜めていたものが「ロックンロール・ナイト」で落ちました。
終演後の楽屋で佐野さんとダディ柴田さんの再会があったようです。
その話を伊藤銀次さんのブログで今日知ってまた落ちるものが(笑)
Commented by obinborn at 2011-06-20 18:35
おお、kofnさん&お子様たちもご覧になったのですね  嬉しいです
ぼくは19日の方はあいにく行けなかったのですが 18日だけで大満足
でした ダブっぽい残響がガンガンとヴォーカルに被さる「欲望」はまさに
圧巻でした  むろん「ロックンロール・ナイト」でのシャウトも凄かったし
めったにやらない「新しい航海」を聞けたことも収穫でした !
Commented by NARU at 2011-06-20 23:30 x
18日にはご挨拶が出来て良かったです!!

今回 2Days に参加して、改めて佐野元春のファンであることに誇りが持てました。いつまでも走り続けていて欲しい存在です。元春を見失わないように、自分自身も歪んだ人間にならなくて済むような気がするんで(笑)
Commented by obinborn at 2011-06-20 23:43
19日も行くと言っておきながら果たせずすいませんでしたが
気迫に満ち溢れた素晴らしいライヴでしたね!
借りを返したと言わんばかりの「ヤングブラッズ」のブランニュー・アレンジ
が聞けたこともぼくは嬉しかったです

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