ワン・マン・バンド

プリ・プロダクションのまんまとも言うべき『マッカートニー』(70年)を傑作と呼ぶ
ことにはやはりいささかの抵抗を覚えますが 時間の濾過を経てこうした手作り感が
ミュージシャンを中心に支持されていったことは確かです

バンドというものが集合音楽の粋ならば 『マッカートニー』にあるのはそれとは
対照的な”ひとり感”だと思います

もともと50年代に活躍したジョー・ヒル・ルイスのように歌/ギター/Dsを同時に
1人でこなす”ワン・マン・バンド”スタイルは昔からあったのですが
ここにまたその方法論を実践したミュージシャンがいます

それがウィルバート・ハリソンのLet's Work Togetherの再録音(70年)です

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スリム・ハーポのような脱力ハーモニカといい 小学生が叩いているようなdsといい
全体のアマチュアっぽい質感がなかなか斬新であり  のちにガレージ・ロック愛好家
から再評価された理由もどうやらそこらへんにあるようです 曲自体もミディアムで
押していくシンプルな構成のR&Bといったところです

写真ではやや解りにくいかもしれませんが ウィルバート・ハリソンの下の部分に
ワン・マン・バンドとわざわざ表記しているのも興味深いところ
いわば究極の節電ロックです(笑)

ウィルバートの「カンザス・シティ」をかつて熱唱していたポールが奇しくも同時代
にこうしたプリ・プロ感丸出しの音作りをしたウィルバートに刺激されたかも?
と想像しながら『マッカートニー』を聞いてみるのも悪くないでしょう

やはり『マッカートニー』も『ラム』も傑作という大袈裟な言葉よりも”ひっそり感”が
似合っています むろんその蒼茫感の彼方にあったのはビートルズという巨大な
神話だったことは言うまでもありません

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ビートルズ解散の汚れ役を一人で引き受けたような感のあるポールが
スコットランドの自宅に4トラックのレコーダーを持ち込んで作った元祖”宅録”集
美しくも儚い「junk」の背後に彼の孤独が透けて見える
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by obinborn | 2011-07-03 14:39 | one day i walk | Comments(6)  

Commented by ジーン at 2011-07-03 15:40 x
小尾さん、初めてコメント入れさせていただきます。

学生時代に読んだレココレのThe Band のソロアルバムの欄を担当されていたのが小尾さんでその時から、小尾さんの文章と音楽に対する愛情にシンパシーを感じ続けております。

また、小尾さんのUKレコーズも楽しく拝読しました。
USレコーズも必ず手に入れたいと思います。
『マッカートニー』の横にさりげなく置いてあるニックの新譜、
小尾さんはもうお聴きでしょうか?これはアナログで注文入れました!
とても楽しみでございます。 また、コメント入れさせ頂きます。
Commented by obinborn at 2011-07-03 18:08
ジーンさん、こちらこそ初めまして
もはや懐かしい拙文ですが 読んで頂きありがとうございます
ニック・ロウの白盤(サンプル)を一足先に聞かせていただいています
(すみません) 近年の落ち着いた味わいの延長にある作品だと思いま
すが珠玉のメロディは満載だし 何より自分の年齢(61歳!)
に逃げも隠れもせず きちんと向き合っている姿が素晴らしいと思います
勿論ぼくも発売されたらちゃんと製品を購入します そう、今回はLPも
出るというのが嬉しいですね
Commented by ジーン at 2011-07-03 21:18 x
小尾さん、奇しくも同時期にライ・クーダーにジョン・ハイアットもアルバムが出るようですね。
リトル・ヴィレッジのセカンドは、やはり夢なのでしょうか?

ジョン・ハイアットは大好きなアーティストですが、相当のへそ曲がりなのでしょうか?
小尾さん、8月にニックに会う機会がありましたら、その辺のトコ突っ込んでいただきたいです(笑)。
Commented by obinborn at 2011-07-03 22:23
う〜ん、ニックさんにお会い出来るかどうか微妙です
遙か昔 レコ会社主催のパーティで拝見させて頂いたときは
やたら背が高い!チェック柄のシャツをお洒落に着こなしているなあ〜
という印象でした それにしてもハイアット、ライの新作も楽しみです
Commented by Almost Prayed at 2011-07-03 22:48 x
好き嫌いで言えば、個人的にこの“McCartney”はポール・マッカートニーのアルバムの中で最も好きな作品です。以前から自分は、本作には1960年代後期のUKにおけるブルーズ・ロックのブームに影響された部分も大きかったのでは、と思っています。相当にブルージーな方向に振れた曲がかなりあって、彼自身のブルーズに対する嗜好が非常によく表れている作品ですね。

ワン・マン・バンド形式で演奏する人といえば、当時のUKにはダスター・ベネットという傑物がいましたね。当時、ポール・マッカートニーは彼の作品を耳にしていたのでしょうかね。“McCartney”には、ダスター・ベネットの1968年発表の最初のアルバム“Smiling Like I'm Happy”と相通じる色があるように思えるのですが。ダスター・ベネットの作品はもっと一般的にも正当に評価されてほしいものですね。
Commented by obinborn at 2011-07-03 23:14
以前、ダスターがチャック・ベリーの「too much monkey bigginess」
を弾き語っている音源を聞き 何てかっこいいんだ! と思った記憶があり
ます ジョン・レノンも相当影響を受けたというダスターなので やはりポー
ルの視界にも入っていたのでしょうか
ダスターとかゴードン・スミスとか当時マーク・ヴァーノンの周辺にいた
人達はいつも気になる存在です
思えばビートルズの「sun king」はもろフリートウッド・マックの「アルバ
トロス」ですものね

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