中村とうようさんのこと その3

先日馴染みの中古レコード屋さんに行ったら 開口一番
「とうようさん、死んじゃいましたね」と言われた
こうして今日もまた日本中のどこかでとうようさんのことが
語られているのだろう
「ガンコな人だったけれど ああいう人がいなくなっちゃうのは寂しいね」
と言ったレコード屋店主の一言は実感を伴ったものだった

ネット上で中村とうようさんの追悼文を幾つか拾ってみたりしている
いろいろな音楽を紹介してくれたと素直に気持ちを吐露しているものもあれば
追悼文と称して単に自分がとうようさんといかに親しかったとか
ミュージック・マガジン社とどれだけ関わりがあるかとかを自慢げに披瀝するだけ
のものもあったりする 

そんなものは大切な人を失った悲しみでも喪失感でも何でもない
とうようさんというブランドに寄りかかった薄暗い功名心や自己満足に過ぎない
悼辞を表す場合 このような文章が唾棄すべき最低のものであることは言うまでも
あるまい

その一方で清々しい文章にも出会った

ぼくは文章を書くうえで一番大事なのは何よりも抑制や距離感だと思うのだが
天辰保文さんが書かれた一文には とうようさんはこういう方だったけれど
自分はもう少し違う角度から音楽を見て書いていきたかったという旨が
さっぱりと しかし毅然と書かれていて気持ちが良かった

自分と対象との距離をしっかり推し量るとは つまりそういうことだ

文章とはある意味その人の性格が一瞬にして透けて見えてしまうだけに怖い
ネットで誰もが気軽に言葉を発信出来るからこそ とくにものを書く立場に
いる人は 言葉を選び 推敲し より思慮深くならなければと思う

多くの日本人が今 呆然と立ち尽くしている
根拠のない情報 答えのない問い 覆う雲には少しも晴れ間が見えない
そんな時代だからこそ 中村とうようさんにはもっと物事を見てほしかった
もっともっと語ってほしかった

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『マガジン』76年7月号では「歌詞とは何だ?」という刺戟的な特集が組まれた
表紙はピーター・ウルフ またとうようさんは同号で「チームワークがっちり、最強の
J.ガイルズ6人衆」という一文を寄せ 彼らのライヴ盤『Blow Your Face Out』
を熱く讃えた
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by obinborn | 2011-08-10 04:03 | one day i walk | Comments(2)  

Commented at 2011-08-11 04:41 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by obinborn at 2011-08-11 05:41
聞き手であることに徹し、丁寧に聞き、想像力をもつこと
そうした地道な作業の積み重ねをけっして怠らない方ですね
素晴らしい方だと私も思います

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