9月6日
第二次世界大戦に於ける一人の男の人生を係累である”僕”が
運命の糸を辿るように解き明かしていく。
「戦争に行った人たちが歴史の舞台から消えようとしている。まさにこの時
にこの調査を始めたことは、何か運命的な巡り合わせのようだ」
作者が文中で”僕”にこう言わせているように、21世紀になってからの
史実再発見であり、暗い時代に翻弄された人々の泥臭い人間ドラマでもある。
戦後はイデオロギーの対立それ自体に価値があるかのような風潮も強かったが、
当然ながら人間という生きものは理論武装で生きながらえるものではない。
そこらへんの怒りにも似た感情もきめ細かく描写されている。
史実の精度に関しては疑問も残るだろうし、判で押したような表題からは
好戦的との印象も招きかねないだろうが、丹念に内容を読み込みたい。
26歳のニートである”僕”がある日祖父の過去を辿っていき、
そのことで彼が過去との連続線の上で生かされていることを学んでいく。
また祖父の戦友だった男たちの述懐は多様であり、とても一つには括れない。
当たり前のことだが、すべての人が同じ方向を向いているわけではない。
本書の最後に被さってくる女性の目線も考えてみればなおさらだろう。
ぼくも死ぬ前の父親からあの時代の話をもう少し聞いておけばよかった。
by obinborn | 2011-09-06 21:33 | 文学 | Comments(2)
しばらく活字を追っていてもなかなか頭に入っていかない状態で
今年は読むペースがかなり遅くなってしまったのですが、ここの
ところ遅れを取り戻すべく?固いものから柔らかいものまで読ん
でいます。百田さんに関してはまだ『永遠の0』しか知らないの
ですが、他の作品も読んでみたいと思っています。