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9月18日〜桐野夏生という不条理

桐野夏生『錆びる心』(文春文庫 2000年)を読了 今年の25冊め

桐野さんの小説はたぶん殆ど読んでいると思うし 池袋のリブロで行われ
たサイン会にも抽選券を貰って行ったくらいなのだが 何故かこの短編集
は未読のままだった 長編作家にとって短編とはとかく長い物語を書くた
めの習作になりがちだし この『錆びる心』にもそうした要素がないわけ
ではないけれど、、、

もしも人の人生を 規範的な生き方とそうではない(アウト・モラルな)
それとに大別出来るのであれば 桐野さんが登場させる主人公なり脇役の
生き方はまさにアウト・モデルであろう

不実 嫉妬 復讐 憎悪 そんな感情がまるで当たり前だと言わんばかり
に 彼女は文章という嵐を反規範的に吹き荒らす
その苦みを果たして何といったらいいのだろう

ありていに言えばA君にはA君の真実や実感があり B君には彼が発見した
彼のリアルがあり譲れない感想がある
A君とB君との間には圧倒的な距離があり 私たちはいつもそのことに悩み
打ちのめされ ときに絶望する

きっとそういうことなのだろう
ニューヨークから眺める憎しみとバグダットの目を通した戦争の実感が違う
ように

離婚した主婦がいつしか家政婦として他人の家族のなかに収まり そこで
驚くべき”家族の物語”を発見する そうした内容の表題作はまるで心に
錨を降ろすかのようだ

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by obinborn | 2011-09-15 18:01 | 文学 | Comments(0)  

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