12月12日

「FAMEの音がこれほどまでに個性的かつ魅力的な最大の理由は、ひとつには
この空気感(アンビエント)にある。どれでもいい、黄金期のFAME録音のボ
リュームを上げてみれば、部屋が文字通り”息をしている”のが聞こえてくる
はずだ。リック・ホールが言うとおり、まさに3D的効果だ。ロジャー・ホーキ
ンスのファットバック・ドラムの強烈な一音一音が、たとえば『ダンス天国』
でもそうだが、壁に跳ね返る音波によって有機的に拡大され、それをすべての
オープン・マイクが拾っていく、という仕組みだ」

(『フェイム・スタジオ・ストーリー1963〜1973』より 
文:アレック・パラオ 翻訳:新井崇嗣)

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少しずつ聞き始めている3枚組CD『フェイム・スタジオ・ストーリー』は
アラバマ州フローレンスに建てられた小さなスタジオの大きな物語
リック・ホールたちが立ち上げたこのフェイム・スタジオで録音され 各地
のレーベルに配給されていったその音楽は やがてソウル音楽の標準となり
目指すべき最高の指針となっていったが その歴史を俯瞰したこのボックス
に興奮せずにはいられない

たとえばジャクソン・ハイウェイ3614番地に枝分かれしていったマスル・
ショールズ・サウンドの愛好者にもその源流として無視出来ないものであるだ
ろうし 目まぐるしくメンフィスやナッシュビルに移動していったバック・
ミュージシャンに関しても 今回のライナーでもう少し把握出来るようになった
たとえばノバート・プットナムをナッシュビルのベーシストとして理解している
(ぼくを含めての)ファンは多くいるだろうが 彼が初代のフェイムに属してい
たことを知るというように

それはともかく肝心の音楽の素晴らしさよ! 「ダンス天国」から「恋のあやつり
人形」といったおなじみの曲から オーティス・クレイが精魂を込めた「Do Right
Man」まで これもあれもフェイム録音だったのかと再認識させられるナンバーも
数多く アラバマ・ソウルの裾野の広がりや豊かさを一望出来るだろう
ぼく個人としてはボビー・ムーアの「Searching For My Love」が懐かしかった
モーリス&マックのデュオ・ソウル「Why Don't You Try Me」をライ・クーダー
のヴァージョンで知った人も少なくないはず
スワンプ・ロックのファンにはダン・ペンやジニー・グリーンが歌った曲も気にな
るところだろう

「レコーディングはたいてい、曲を書いた者とミュージシャンとの打ち合わせ
から始まり、続いてアレンジはほぼ毎回その場で練り上げた*。全体の進行役は、
細部にまで目を光らせるリック・ホールが担った。彼らにとって大事だったのは
時計ではなくあくまでパフォーマンスであり、ジェリー・ウェクスラーといった
大物らはそこを評価し、そして大いに利用したのだった」

(冒頭と同じく『フェイム・スタジオ・ストーリー』のライナーノーツより)

*いわゆるヘッド・アレンジのこと
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by obinborn | 2011-12-13 04:29 | one day i walk | Comments(0)  

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