2月12日

さすがは木下弦二! そう思わずにはいられないソロのワンマン・ライヴ
だった。

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ナチュラルな音響に定評があるため、アコースティックに心を砕く音楽家たち
から重宝され評価が高い下北沢のLeteだが、そこに今回初登場した弦二は
いささかも物怖じすることなく普段通りに自分の世界を醸し出し、やがて
聞き手たちを快いウネリのなかへと引っ張っていった。

アンプに直結されたセミアコ一本とマイクを通さないヴォーカル。そんな
ある意味一切逃げ場がないスタイルで通した故に、声にしてもギターに
してもちょっとした強弱や陰影がうまく伝わり、歌の輪郭が際立つ結果
となった。スタッフの目見論は恐らくLeteという場所でどれだけ弦二
の歌が届くかどうかにあったと思うが、これは大成功だったと思わずには
いられない濃密な2時間となった。

東京ローカル・ホンクのファンとしては、弦二がバンドに持ち込んだ曲たち
の生成過程をつぶさに目撃するレアな体験であり、気の置けないデモ録音の
ようでもあり、ちょっと贅沢なリヴィングルーム・コンサートでもあったはず。

久し振りに歌われた「心の行進」と「湯けむりの街」。あるいは本編の最後を
そっと照らし出した「おいのりのうた」などは、うずまき時代の曲が今なお
弦二が辿ってきた確かな足音であることを伝えていたし、ここ最近演奏する
ことが多いヴァン・モリソンの「Bright Side Of The Road」は、いつもぼく
に暗い時代の明るい歌のことについて考えさせる。

吟味されながら最終的に絞り出されたであろうシンプルな歌詞の奥行き
(「ヒコーキのうた」「昼休み」「冬眠」など)に関しても、こうした弾き語り
にかかると、彼が書いた歌の最初の聞き手になったかのような錯覚に陥って
しまうほどだった。あるいは「聞きたいこと」での真剣さや広がりについて
も然り。

誰もが自意識という厄介な生き物を抱えている。恐らく弦二も最初はそうで
あっただろう。その迷宮の罠に陥ったことも、その周りをただ彷徨うばかりの
時もあったはずだ。果たして今の彼はどうだろうか。たとえ少なく見積もった
としても、弦二が今響かせている音楽は自分のためというよりは、遥かに人と
向き合いながら懸命に語りかけるものではないだろうか。名前がないものに心     
を寄せ、静寂のなかに多くの声を聞き取りながら。

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by obinborn | 2012-02-13 01:46 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

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