3月10日

「詳しいことはもう覚えていないけれど、ぼくはジミ・ヘンドリクスと
一緒に誰かのアパートメントで、ディランの新作『ジョン・ウェズリー・
ハーディング』(68年)を聞いた。もう本当に驚いてしまったんだ」

以前デイヴ・メイソンにインタヴューした時、彼はおよそこのような旨
を語ってくれた。その衝撃はジミが「見張塔からずっと」をレディランド・
アルバムでカバーしたことでも裏付けられるし、その曲でアコースティック・
ギターを弾いていたのは他ならぬメイソンなのだった。しかもメイソンは
のちに「見張塔」をソロ・アルバムに収録している。

フェイシズが70年の3月に発表した『ファースト・ステップ』の1曲め
がディラン「ウィッキッド・メッセンジャー」であることも、当時の英国
での『ウェズリー』アルバムの浸透力を物語っているのではないだろうか。

その理由はシンプリティへの回帰であり、それ以上にディランが自己発露
ではなく、物語のなかに自分を滑り込ませていたことなのだろう。つまり
地主(Landlord)や、フランキー・リーやジュダース・プリーストの語り部
として。浮浪者(Hobo)や邪悪な伝道師(Wicked Messnger)として。

『ファースト・ステップ』は『ウェズリー』と釣り合う埃っぽさを示す。
またロック音楽のデビュー・アルバムに若さを持ち込むのではなく、
老成やある種の諦観を漂わせたという意味でも、少なからず心に染み入る
音楽だった。

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by obinborn | 2012-03-10 19:01 | one day i walk | Comments(0)  

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