荒地の何処かで

剥き出しのギター・サウンド。骨太のバンド・グルーヴ。
その音はどこまでもやんちゃで無鉄砲だった。
新たに藤田顕のギターを加えた佐野元春&コヨーテ・バンドのツアー初日を
6月3日横浜Blitzで見た。

つい先月までホーボー・キング・バンドと一緒にビルボードで三ヶ月に亘る公演
を行ったばかりの佐野だが、音の位相がまったく異なるコヨーテ・バンドとともに
新たなロードに出る。その行動力にまずは敬服したい。”Early Summer Tour"
とシンプルに掲げられたツアー名からは、たとえ新作を伴わなくとも聴衆たちと
ともに今現在を確かめ合いたいという気持ちが伝わってくるし、より充実したコヨ
ーテ・バンドの現在を知らしめるには十分な仕上がりだった。エッジが立ちまくる
粗めのサウンドのなか、最近ではカーネーションのツアーでも知られるようにな
ってきた渡辺シュンスケのキーボードがメロディアスな輪郭を描くといったアンサ
ンブルの広がりが素晴らしい。

今日始まったばかりの全国ツアーだけに楽曲紹介は避けたいが、新曲2つの初披露
からお馴染みのナンバーまでの全24曲がどれも生き生きと呼吸していたこと。それ
が嬉しかった。ビートを張った曲で固められていくなかでも、8ビートで録音され
ていたものが新たに16打ちへと改変されていたり、細かいニュアンスの変化もたっ
ぷり。そして感じ入ったのは07年の春に発売された『Coyote』アルバムの生命力の
ことだったりする。そこに収められた歌たちは雨に耐え、風に負けることもなかった。

あのアルバムからはや5年。私たちは思っていた以上に残酷な景色に直面しているし、
気が付かないふりをしていたことに気が付かざるを得ないことに慄然とする。でたら
めな言説にこれを消費せよと言わんばかりの態度。街は歌に溢れているけれど、誰も
きみのブルーズを歌ってはくれない。そんな荒地で私たちは今日もまた溜め息を付き、
暮れなずむ街並に立ち尽くす。

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by obinborn | 2012-06-04 00:05 | rock'n roll | Comments(0)  

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