カヌーがしっかり舟を漕いだ、ホンクがまるで鳥のように歌った。

14日はパイレーツ・カヌーと東京ローカル・ホンクのツーマンを
高円寺のJIROKICHIにて。この組み合わせの首都圏編は昨年同会場で
行われて以来、およそ一年ぶり。

おざなりのツーマンではなく、互いに敬意を払っている様子が実際ステージの
隅々から伝わってくるのがまず気持ちいいし、カヌーとホンクの共通点をあえて
探るとしたら、やはりその大振りではない語り口やケレン味のなさだと思う。

昨年と同じくまずホンクが一曲前口上としてアカペラで歌い、カヌーの面々を
招き入れるという心憎いオープニングで始まる。昨年は「サンダル鳴らしの名人」
だったが、今回は「すんだこと」が選ばれ、愛憎半ばといったごく普通の感情が
オン・クラーベのビートとともに歌われていく。歌に無理矢理結論を求めないのは
木下弦二の昔からの作法だが、この「すんだこと」のコンサヴァなニュアンスも
捨て難いほど。

セカンド・アルバムを携えたカヌーは、昨年も強く感じたことだが、音楽に向き合う
気持ちがひたすら初々しい。編成はドブロ・ギター、ギター、フィドル、マンドリン
など弦楽器の優しい響きを活かしたものなのだが、けっしてバタ臭いブルーグラスに
走るのではなく、まして高速フレーズ云々といったテクニックの罠に陥るわけでもなく、
どこか日本的な情感が零れてくる辺りが愛おしい。そこに静謐なコーラスや創意に富ん
だドラムスがなだらかな起伏を描いていく。そうした部分にたまらなく惹かれてしまう。

次のホンクは、インプロ序曲に続いて今回「お休みの日」が選ばれ「犬」へと束ねて
いくという意外な滑り出し。通常のリストでも最近の核となる「目と手」や「はじま
りのうた」、あるいは明るい曲調がかえって哀しみを伝える「いつもいっしょ」など
メロディのフックが秀逸なナンバーを敢えて外してくる。それもこれも弦二の今現在
の心境に正直な結果なのだろう。彼のMCを借りれば「意味のない歌を一生懸命歌いた
い」だけのこと。だからこそ序盤の「お休みの日」と後半の「お散歩人生」がセット
となり、昨日までとは少し違う商店街を活写していく。「引っ越し娘」で描かれる光景
がダンボールへと詰めた歳月までをいちいち染み込ませていく。木下弦二というソング
ライターはきっと照れもあるのだろうが、悲しさや切なさといった感情をむしろ遠近法
を用いながら、聞き手のイマジネーションへと委ねていくのだ。

ライヴは終盤に向かう。心からの拍手が会場から沸き上がる。
カヌーとホンクが合体したアンコール・セッションではリトル・フィートの「Willin'」と
アラン・トゥーサンの「あの娘に何をさせたいの? What Do You Want The Girl To Do」
が選ばれ、この時ばかりは”洋楽大好き!”みたいなノリが全開に(笑)。
ソロ回しが行われ、井上文貴が音数を絞り込んだギター・ソロを奏でて、弦二と笑みを
交わし合う。

音楽を聞いていて良かったと思える瞬間だ。
私はそれを帰りの地下鉄のなかでただただ反芻するのだった。

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by obinborn | 2012-07-15 01:17 | one day i walk | Comments(0)  

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