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31歳の肖像

黄金期を支えた名ギタリストであるミック・テイラーが脱退
し、新たなギター弾きを探しながら録音されたのが76年の
『ブラック&ブルー』だ。そんな過渡期の作品だっただけに、
全体に漂う隙間が切ない。結局正式にストーンズへ加わるこ
とになったフェイシズのロン・ウッドにしても、まだまだ水
に馴染んではいない。

ここには重量級のファンクがあり、お茶目なレゲエがあり、
いつものようなロックンロールがあるけれども、メンバー全
員が未来を前に立ち尽くしているような印象を受ける。

レコーディングが始まった時、ミックもキースもすでに31歳。
世界一のロック・バンドになった。使い切れないほどの金を
稼いだ。好きなだけ女たちと寝た。シャンパンの風呂にも浸
かった。ひどく内気なギタリストと決別した。俺たちを知ら
ない奴はいない。

しかし、自分の子供に不倫をなじられるという設定の「愚か
者の涙〜Fool to Cry」にミック・ジャガーの迷いが投影され、
ハンナ・ハニーという女の子を巡る回想録とでも言うべき
「メモリー・モーテル」に、彼らが通り過ぎてきた歳月が染
み渡っている。

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*拙書『UK Records』に掲載したテキストを加筆・訂正しました。
あしからずご了承ください(facebookとも同期しています)。

by obinborn | 2012-10-14 10:27 | rock'n roll | Comments(0)  

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