Stories We Could Tell
個展にはオレンジ・カウンティ・ブラザー
ズの面々をはじめ、多くの関係者やファン
が駆けつけたようだ。その様子は以前ブロ
グに記したのでここでは繰り返さないが、
きっと数々の再会や交歓に満たされたこと
だろう。ぼくも何とか最終日の夕方に駆け
付けることが出来た。
(ファースト・アルバムとオブジェ。そこには
ARMADILLO 1976 KIKKOと彫られている)
ひとつのグループの音楽をトータルに言
い表す時、アルバムのジャケットもまた重
要な役割を果たすことは言うまでもあるま
い。だいたいちょっと振り返ってみても、
『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』
といい『デジャ・ヴ』といい、あのジャケ
ットと切り離してザ・バンドやCSN&Yを
語ることは、少なくともぼくには出来そう
にない。CDの時代になってデザイナーやイ
ラストレイターの方々が口々にこぼすのは、
縮小されたサイズに変換しなければならな
い寂しさだったりする。
70年代の後半に4枚のアルバムを残した
オレンジが、すべて中尾紀久子によるイラ
ストレーションとデザインで統一されてい
たのは、バンドにとっても、ファンにとっ
てもきっと幸福なことだったに違いない。
アメリカ南部のイメージというか、もう少
し具体的に言うと、テキサスやメキシコそ
してルイジアナ一帯の匂いを、そのジャケ
ットは憧れとともに上手く言い当てていた。
ファースト・アルバムで登場したアルマジ
ロ、セカンドで仄めかされた飯田雄一の肖
像、サードでのコズミックな空間と交信す
る再度のアルマジロ、そして優れたスタジ
オ・ライヴを記録した最終作にしても、ラ
イヴ作にありがちなステージ写真ではなく、
デザート地帯を遠景に置きながら微笑むサ
ボテン君なのだった。このデフォルメされ
た陽気な”彼”もまた、実によくオレンジ
の音楽を言い含めていたと思う。
会場では原画は勿論のこと、中尾さんが
近年情熱を傾けられている幾つかの陶芸作
品もさりげなく置かれ、ぼくたちを楽しま
せてくれたが、今日はそのなかで販売がさ
れていたアルマジロとコーヒー・カップの
写真を載せておこう。音楽と絵画との幸福
な関係。それを築くのは双方の思いに他な
らない。そんな空気をたっぷり吸い込みな
がら会場を後にしたぼくも、いつしか幸せ
な気持ちになっていた。
(こちらも会場で販売されていたコーヒー・
カップ。サボテン印が光っている)
by obinborn | 2012-10-21 12:57 | rock'n roll | Comments(0)