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転がる石のように

「金持ちの女が落ちぶれていく物語。
たったそれだけの歌がどうしてこんな
にも人々の関心を引き付けるのだろう」
ボブ・ディランの「ライク・ア・ロー
リング・ストーン」に関して、佐野元
春はこう言及している。

 本当に不思議な歌だ。ミス・ロンリ
ーという傲慢な女性に対する歌い手の
態度はどこまでも容赦なく辛辣であり、
”どんな気がするんだい?”(How Doe
s It Feel?)という問いが、激しいロッ
ク・サウンドのなかで何度も何度も繰
り返されている。

 巨大なものや権力に対する反抗の歌
と解釈することも出来るだろう。しか
し、それだけには終わらない栄枯盛衰
や諸行無常まで忍ばせているのがこの
曲の広さや大きさだと思う。

 もし音楽が自分を映し出す鏡のよう
なものだとしたら、この曲で歌われる
”まるで石ころのように一人ぽっちで
いることはどんな気がする?”という
リフレインを、他ならぬ自分自身に置
き換えてみる想像力が必要かもしれな
い。そこら辺に転がっている石ころ。
それは乾き切ったオフィス街で他人に
話を合わせているだけのぼくの姿だ。
それは喧噪を逃れてやって来たはずの
田舎で孤独に苛まれるあなたの姿だ。
この自分もそんなものではないだろう
か? と気付いた時、旅はきっと始ま
るのだろう。

 そして旅に出たぼくたちは今日もハ
イウェイ61を南下し、廃墟の町を彷徨
いながら、痩せっぽちの男のことを考
えながら、辿り着くべき黄金の心を探
し続けている。

転がる石のように_e0199046_122966.jpg

by obinborn | 2012-10-24 01:30 | rock'n roll | Comments(0)  

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