規定されないこと。自由であること。
いという想い。あるいはとてもやんちゃな動機。
そんなことを不言実行しているのがコスモポリ
タン・カウボーイズだ。むろんこのバンドで標
準となるのはカントリー音楽だが、剥き出しの
ロック・ビートを伴いながら英語詞を独自に翻
訳した、ときに辛辣で、ときにユーモアを込め
た歌詞がどこまでも率直に届く。ぼくが彼らと
知りあったのは、6,7年まえになるだろうか。
そんなカウボーイズのライヴを5日に中野坂
上のAjaで観た。多くの場面で指導権を握るハル
宮沢ではあるが、一方でメンバーのインスピレ
レーションを大事にする。そんな彼の立ち位置
と、即座に反応するメンバーもさすがは百戦錬
磨というべきか、多くの修羅場をくぐり抜けて
きた人たちだけに、タフで変幻自在な表情を見
せる。むろんリハーサルの段階である程度の約
束ごとは決められるのだろうけれど、いざ本番
が始まれば、より奔放に走り始めるのがハル宮
沢という風雲児だ。そこに喰らい付いていくメ
ンバーたちの力量に改めて驚かされる。
苦み走ったヴォーカルと、クライ・ベイビー
を始めとする各種エフェクターを駆使したスト
ラトキャスター・サウンド。パパふんじゃらこ
と藤原弘昭のフィドルとバンジョーを伴ってい
るとはいえ、やはり広範なロック体験が根っ子
にあるのだろう。「俺のハンクはこれだ!」と
言わんばかりにハンク・ウィリアムズの曲を大
胆に改変した「Hey Good Lookin'」や「I Saw
The Light」にしても、ボブ・ウィリズの「サ
ン・アントニオの赤い薔薇」にしても、確かな
リズム・セクションのじゃいあん&東野りえに
支えられながら、強靭なロック心が舞い上がっ
てゆく。この日は残念ながらバリトン・サック
スとクラリネットの多田葉子は欠席だったが、
それでも大いに満たさせた内容だった。
原発事故のことを暗喩的に言い含めた「木偶
の坊」からイアン・マッコールの「Dirty Old
Town」(ロッド・スチュワートやポーグスで
おなじみですね)へ。さらに宮沢の奥底に流れ
る主張(反レイシズムや融和の感情)が込めら
れた「オレタチの旅」へと進んでいく曲順にも
曲と曲とが互いに連鎖し合いながらスケール感
を生み出していく広がりがあった。そしてアイ
リッシュ・トラッドの語法とカントリー音楽の
結び目も鮮やかな「ラグラン・ロード」が終盤
を締める。何でもこの曲は宮沢がダブリンを旅
した際に着想したそうだが、東野りえのマーチ
ング・ドラムと抑制されたリム・ショットがよ
り情感を醸し出していた。
ニール・ヤング&クレイジー・ホースやガー
ランド・ジェフリーズの話に目を細めた終演後
のハル宮沢は、ちょっと歳を喰ったロック青年
といったところだろうか。その姿はあなたでも
あり、またぼく自身の写し絵でもあるだろう。
音楽的に固定されたくないという気持ちは、言
うまでもなく自由でありたい、自由になりたい
という想いと同義だ。そんなことに気が付く時、
コスモポリタン・カウボーイズの音楽はきっと
あなたに微笑むだろう。
(終演後、ドラムス担当の東野りえさんと)
by obinborn | 2012-11-06 09:23 | rock'n roll | Comments(2)
許される多少のツッコミも、初めての人には辛辣に感じられてしまったり
します。ぼくのフィロソフィーはtwitterにせよfbにせよ過度に依存するの
は良くないよ、ということです。どういうやりとりがあったかは解りませ
んが、実際のハル宮沢氏はとても気さくでいい奴ですよ。80年代以降の東京アンダーグラウンド・シーンではかなりの有名人です(笑)。