どこにも属したくない。

 朝刊を何気なくめくっていたら、袋麺の活
況を伝える記事に目が止まった。いわゆるイ
ンスタント・ラーメンと呼ばれる自宅で煮込
む麺のことであり、むろんカップ麺とは異な
る趣きがあるのだが、カップ麺にすっかり市
場を奪われてから久しい。ところが東洋水産
の「マルちゃん正麺」が爆発的な売上げを記
録してから、その立場が20数年ぶりに逆転し
たというのだ。大ヒットの理由としては、生
麺のようになめらかでコシのある食感を実現
したことにあるとか。

 詳しくは朝日朝刊の土曜版Beに詳しい記事
が掲載されているので子細は譲るが、ぼくも
こうした”袋麺”には懐かしい思い出が詰まっ
ている。学校が半ドンだった中学や高校時代
の土曜日にきまって母親が作ったのはこうし
たインスタント麺にあり合わせの具を入れた
ものだったし、受験勉強の深夜に台所で一人
ひっそりとこさえたのも、こうした袋麺だっ
た。首都圏のブランドとして筆頭格だったの
は「チャルメラ」「サッポロ一番」「出前一
丁」あたりだろう。それらでも醤油味から味
噌味、塩までヴァリエーションもなかなかに
豊富だったと記憶する。とにかくほうれん草
からモヤシまで、キャベツからしなちくまで、
熱湯のなかに何でも放り込めるのもまた魅力
だった。

 そんな袋麺ことインスタント・ラーメンの
誕生が1958年、つまり昭和33年だったこと
を知らされると、何とも不思議な感慨が湧き
上がってきた。戦後から10数年あまり。もは
や戦後ではないとの池田首相の掛け声のもと
に所得倍増論が打ち出され、日本はその後に
高度成長の時代を迎えた。東京オリンピック
が開催され、新幹線が開通し、大阪万博が盛
大に執り行われた。まるでその影のように忌
ましい事件が立て続けて各地で起こった。何
しろ時代が左か右か、体制か反体制かで激し
くクラッシュしていた時代のことだった。

 ものすごく正直に言えば、ぼくはそのどち
らも遠巻きに眺めていた。主義主張がどうで
あれ、そのどちらにもけっして属したくはな
かった。だいいちそんな紋切り型や二者択一
の論理とやらで一体どれだけ本当のことが語
られるのだろうか。そんな風に思っていた。
そんな日々をぼくはインスタント・ラーメン
とともに過ごした。親元を離れて一人暮らし
を始めてからもずっとそうだった。

 たかがラーメンのことから話がつい飛躍し
てしまったけれど、思えばぼく自身もそんな
ラーメンにも似た大量生産~ベビー・ブーマ
ー時代の落とし子だったのだ。

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by obinborn | 2012-11-10 16:43 | one day i walk | Comments(0)  

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