Days Like This

ヴァン・モリソンの95年作『Days Like This』は
とてもいいアルバムだ。シャノン・モリソンやブ
ライアン・ケネディをガイド・ヴォーカルに配し
ながら力みのない歌を聞かせる。そんなことだけ
でもこっちの気持ちは満たされる。

本人が言うところのケルティック・ソウル。思え
ばヴァンの歩みはその実践の連続だった。早くは
74年の『Veedon Fleece』辺りから芽生え始めた
アイリッシュ音楽への思いは、ブルーズやR&Bな
ど彼が憧れてきた音楽と次第に折り重なり合いな
がら募っていった。そんな指向が具体的に現われ
たのはチーフタンズとの共演を果たした88年の『
Irish Heartbeat』だったが、それ以降もたとえユ
ーリアン・パイプやティン・ホイッスルといった
楽器がない場面でもブリテン諸島の旋律が息遣い
ているのだから、これはもうヴァンの体のなかで
血となり肉となっている証しなのだろう。

とくにこの『Days Like This』ではヴァンの吹く
ハーモニカの柔らかさが印象的で、硬軟取り混ぜ
たアンサンブルのちょっとしたアクセントになっ
ていると思う。スタンダードの「You Don't Kno
w Me」なんかもすっかり肩の力が抜けているだけ
にすっと肌に染み込んでいく。

最新作と一体どこが違うんだ? なんていうのは
すごく愚かな質問。味が変わらないからこそ人々
は今夜もまた同じ店の暖簾をくぐる。いつも見て
いる景色が大事だからこそ、それを妨げるものに
は抵抗する。そうした営為は大向こうを張ったり、
奇抜な論議をふっかけたりすることより、ずっと
大切なことだ。

ヴァンの長いキャリアのなかで代表作という訳で
はないし、ときに忘れられがちではあるけれど、
この『Days Like This』はふとした折に聞き直し
たくなるアルバムだ。そう、たとえば今日のよう
な何でもない秋の一日に。

e0199046_1842238.jpg

[PR]

by obinborn | 2012-11-11 18:07 | one day i walk | Comments(0)  

<< ホンクのこと。 Arrive On Arrival >>