冬の日のオーティス

ダレル・バンクスのノーザン・ソウルでふと思い
出したのが、オーティス・クレイのワンダーフル
・レーベル時代のことだった。ミシシッピ州生ま
れのクレイだが、60年代にはシカゴへと赴き、こ
のワンダーフルに何枚かのシングル盤を吹き込ん
でいる。

そんな時代のなかでもとくにお気に入りの曲が、
私の場合「That's How It Is」だ。イントロ部で
のスネア一発!に導かれながらクレイが丹念に、
情熱を込めて歌い込んでいくミディアム・バラー
ドであり、演奏陣はまったく不明ながらここには
シカゴ・ソウルならではの引き締まったグルーヴ
があり、満たされる思いは大きい。

このシングル盤と思わず巡り会えたのは比較的近
年のこと。そう、今では店舗部門を閉められてし
まった江古田のワン・インチ・レコードでのこと
だった。このお店のお二人も一人がボ・ディドリ
ーのコレクターであったり、もう一人の方がガレ
ージ・ロックのマニアであったりと、店内に入る
だけでそれはもう強烈な磁気を放っていたのだが、
むろんこうしたソウル古典への目配りも当然のこ
とながら為されていた。

それはともかく、オーティス・クレイである。思
えば彼ほど日本で親しまれてきたソウル・シンガ
ーもいないのではないだろうか。クレイと言えば
70年代のハイ・レーベル時代がまず語られる。む
ろんハイでクレイは黄金時代を迎えたと筆者も思
う。でも、その助走としてこのワンダーフル吹き
込みのことも忘れて欲しくはない。

ひたむきな歌唱はどこか融通の効かなさと紙一重
でもあるが、こんなにも聞いていて心洗われる人
は、そういるものではあるまい。まるで冬の風に
逆らうようにじわじわと歌い込んでいくオーティ
ス・クレイ。その姿はまるで合わせ鏡のように私
のなかにある邪心やら卑近な感情やらを解き放ち、
すくっと遠い場所までを見渡すことを促していく。

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by obinborn | 2012-11-30 04:37 | one day i walk | Comments(0)  

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