Let The Best Man Win

「ヘイ・ジュードのセッションでウィルソン・
ピケットはジョージのデモを聞いた。ピケット
は言った。歌える奴だね!と。ピケットはリッ
ク・ホールにそう言い、同じことをジェリー・
ウェクスラーやトム・ダウドらアトランティッ
クのチームにも言い放った。この子の歌をレコ
ーディングするべきだよ!ピケットはそう言う
のが精一杯だったけれど、お陰で少なくとも私
はジョージ・ジャクソンという存在を知ること
が出来たのだ」

ジョージ・ジャクソンのFame録音集に寄せら
れたディーン・ラッドランドのライナーノーツ
は、こんな風に書き出されている。ウィルソン
・ピケットの『ヘイ・ジュード』といえば、69
年にマスル・ショールズのFameスタジオで録
音されたアルバムであり、そう言われて筆者も
慌ててそのLP盤を引っ張り出してきたのだが、
なるほど、ジョージは他の人物との共作という
形ながら、アルバム中の4曲にソングライター
として関わっていたのだった。

e0199046_5175284.jpg


ダン・ペンのテキストでも書かせて頂いたこと
だけれど、60年代後半から70年代初頭にかけ
て時代を彩ったサザーン・ソウルの幾多の名曲
を作者版で聞ける喜びは格別だ。それは何もマ
ニアックな需要に応えてのものであるばかりで
はない。むしろ作者ならではの素朴な歌でサザ
ーン・ソウルあまたの名曲群を味わえる喜びは
何者にも代え難いのではないだろうか? しか
もそれらが驚くほど”歌えている”のだからたま
らない。

この『Let The Best Man Win』はそんなジョー
ジ・ジャクソンの歩みに光を当てた裏面史でも
あるだろう。冒頭に引用したピケットに照らし
合わせれば『ヘイ・ジュード』の頭を飾った「
Save Me」の作者版が聞ける。キャンディ・ス
テイトンでお馴染みの「I'm Just A Prisoner」
がジョージの歌で蘇る。筆者が知らなかった「
Victim Of The Foolish Heart」や「Two Wron
gs Don't Make A Right」その他多数の歌にも
確かな息遣いが感じ取れる。そして歌伴の鑑の
ようなロジャー・ホーキンスが叩くドラムスの
鼓動といったら!

冬が始まっている。木に残った葉もあとわずか
といった感じだ。何しろ午後四時を過ぎれば、
あたりの空はすぐに群青色へと染まっていく。
慌てて洗濯物をしまい、浴槽を掃除し、風呂を
湧かすような繰り返しの毎日だ。そこに目当た
らしさは皆無であろうし、他ならぬぼく自身が
そのような斜陽に晒されながら朽ち落ちていく
のかもしれない。そんな時、ふとぼくは考える
のだった。

そう、表舞台に立つことがなかったソングライ
ターの事情について。その作者版の意外といい
歌に関して。そして歌が作者からシンガーへと
バトンを渡されていく際のソウルへと。

e0199046_3394843.jpg

[PR]

by obinborn | 2012-12-09 03:47 | one day i walk | Comments(2)  

Commented by レシーブ二郎 at 2012-12-10 07:18 x
obinさん、おはようございます。
ジョージ・ジャクソンのvol.1は持っているのですが、こちらはまだ持っていませんでした。obinさんの記事を拝見して注文することにしました。それにしても、先のダン・ペンといい、最近のKENT/FAMEの仕事は素晴らしいですね。
Commented by obinborn at 2012-12-10 11:59
二郎さん、こんにちは。いいですね〜ジョージ・ジャクソン。この週末は
呆けたようにこればかり聞いていました(笑)個人的に驚いたのはロジャー・ホウキンスがシャープなバックビートを叩いていること。彼に関してはぼくの場合70年代半ばのレイドバック・スタイル(とくにサイモン、スキャッグス、スチュワート、トラフィックなど)のイメージが強く焼き付いているのですが、思えばホウキンズのFANE時代の代表的な演奏はピケットの「ダンス天国 Land Of 1000 Dances」でしたものね。若さもあったでしょうけど、シャープにしなるようなドラミングに惚れ惚れしてしまいました!むろん70年代中盤のゆる〜いプレイも大好きですけど、こんなホウキンズもいいなあ、と思って。ライナーノーツもさすがに毎回読ませますね!

<< Spirit In The Dark 陽のあたる通りで >>