密な洋楽体験と夕焼け楽団

別掲したボビー・チャールズの60年代集で
ジャケットを手掛けたのが八木康夫氏だっ
たが、そんな八木さんのイラストレイトで
幾つかオレのなかで連鎖したのが、夕焼け
楽団だった。彼らのアルバムの『ディキシ
ー・フィーバー』『セカンドライン』そし
てライヴ・アーカイヴ集『リズム・ロマン
ス』が八木画伯によるものだったから、夕
焼けとは浅からぬ縁があったのだろう。ポ
ール・ディヴィス風のスーパー・ナチュラ
リズムをもう少しデフォルメしたタッチが
すごく印象的だった。

夕焼け楽団もいいバンドだった。欠点とい
えばドラマーがなかなか固定しなかったこ
とくらいで、オレンジ・カウンティ・ブラ
ザーズとともにオレをアメリカの深い部分
へと誘うきっかけを与えてくれた。また、
それだけではなく彼らの音楽自体が気持ち
良く風にそよぐものだったのだ。ハワイで
録音された『ハワイ・チャンプルー』も、
ニューオーリンズR&Bに特化した『セカン
ドライン』も、あるいは久保田麻琴のナイ
ーヴな面がそのまま染み込んだ彼のソロ『
まちぼうけ』も大好きなアルバムだが、彼
らの良さが一番バランス良く収まっている
のは77年の『ディキシー・フィーヴァー』
かもしれないな。

ニューオーリンズ出身のピアニスト、ロニ
ー・バロンがこの時点で招き入れられ、し
かも彼らの音楽と自然に溶け込んでいる点
にも驚かされたし、こうした日米の音楽家
のコラボレーションの先駆として、のちに
バロンの優れた『スマイル・オブ・ライフ』
が作られもしたが、それはともかく、『ディ
キシー・フィーヴァー』は何よりも曲が粒揃
いだ。先ほどバランスのことに触れたが、
リーダーの久保田麻琴だけでなく、藤田洋
麻が「星くず」を書き、井上ケン一が「
チャイナタウン・ブルーズ」と「一つだけ
光るもの」を書くなど、ソングライティン
グにぐっと幅が出て来たことが、このアル
バムの価値を高めている。

ところで話はいきなり飛躍するのだが、エ
イモス・ギャレットのギターを形容する時
によく”星くずのような”という言い回しが
使われる。オレ自身は国分寺のレコード店
『珍屋』の田村英男さんが話されていたの
が初めてであり、いいフレーズだな、とし
んみりと感じ入ったのだが、その後彼以外
にもいろいろな人が使い始めたという記憶
がある。

『ディキシー・フィーヴァー』で聞けるケ
ンちゃんのギターは、やはりときにエイモ
スのそれを思い起こさせる。何もコピーと
か真似とかいう意味ではない。むしろ憧れ
から音楽を始めた人が、いつの間にか取り
込んでいったような軌跡であり、その人の
個人史にふと触れるような瞬間だ。恐らく
ここに収録された「星くず」というタイト
ルと、ケンちゃんや洋麻さんが弾くギター
と、当時ベターデイズやジェフ&マリアな
どを聞き始めてエイモスに驚愕していった
人々の体験がいつの間にか結びつき一つに
なっていった故の『エイモス=星くず』説
ではとオレは踏んでいる。日本とアメリカ
の違いはあったとはいえ、70年代当時はそ
れだけ密に養われた洋楽体験があり、そこ
から多くの日本のバンドマンが何かを学び
取っていったのだ。
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by obinborn | 2013-01-06 12:26 | one day i walk | Comments(1)  

Commented by noah at 2013-01-07 10:44 x
そもそもニューオールリンズの沼に
どっぷり引き込んだのはこのバンドの「セカンドライン」でした
そこから今の今まで夢中ですね

星くずは、ヨーちゃんのボーカルできけた
京浜ロックが感動的でした

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