San diego Serenade

ラルフ・マクテルは名曲《Street of London》を生み出して知られるようになった英国のフォーク・シンガーです。マクテルという芸名はブルーズ歌手のブラインド・ウィリー・マクテルに因んで付けられたとも語られていますが、いずれにしてもイギリスのシンガー・ソングライターのなかでも傑出した存在です。彼のすべてのアルバムを持っているといったコアなファンではないのですが、個人的にはトニー・ヴィスコンティがプロデュースした72年のリプリーズ盤【Not Till Tommorow】など大好きで、今もときどき聴き返すことがあります。

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今回取り上げたのはマクテルが76年にワーナー・ブラザーズから発売した【Right Side Up】というアルバム。初期の作品に比べてあまり話題に登ることはないのですが、フェアポート・コンヴェンションのデイヴ・ペグ、ペンタングルのダニー・トンプソン、あるいはリンディスファーンのロッド・クレメンツなど“同士たち”とともに、いい味を出しています。76年頃になると多くのミュージシャンが売るために厚化粧を施したサウンドを作るようになっていったと記憶しますが、そうした事態からは免れていたので心に残ったのかもしれませんね。アルバムの一曲めが何とトム・ウェイツの名曲《San Diego Serenade》で始まるのですが、このカヴァーが秀逸な出来。ウェイツのヴァージョンには作者としての強さや思いがあるのに対して、マクテル版はもう一歩引いた視点というか、第三者的に歌の物語を俯瞰しているようなニュアンスがたまらなく魅力的です。

他のオリジナル曲にしても全体的に抑制が取れたアレンジ、隙間を活かした風通しがいいサウンドがくっきりとマクテルの歌を際立たせています。そうそう、《Tequila Sunset》という曲も収録されているんですが、これまたテキサスなんか行ったことがない英国人が夢の続きをスケッチしているような響きがあって、大好き。


*昨年末、奥山和典さんのサイト『酒富デザイン』に寄稿した「私の秘蔵盤」を転載させて頂きました。あらかじめご了承ください。

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by obinborn | 2013-01-18 03:46 | one day i walk | Comments(0)  

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