ビル、聞こえるかい?

「そこにいい音楽があるならば、いい紹介者もいなくて
は」佐野元春のメディア論はいつだって簡潔で清潔だ。

そこでぼくがいつも思い起こすのはビル・グレアムのこ
と。ロック音楽の創世記である60年代半ばに彼は西のシ
スコと東のニューヨークにライヴ劇場を作り、それを運
営していった。それがフィルモア・ウェストであり、フ
ィルモア・イーストであった。ロック黎明期の優れたラ
イヴ・レコーディングの多くがこれらの会場で為された
こと。その事実は多くの人が知るだろう。

記憶が正しければ、ビルは確かトルコ人の末裔であり、
戦火を逃れてアメリカという新大陸へと渡ってきた多
くの人々のなかの一人だった。そんな彼がロック音楽
の新しい動きを紹介する水先案内人になったことに、
ぼくは大いなる興味を抱いた。

かの『ラスト・ワルツ』を巡ってスコセッジ監督と激
しくやり合ったというエピソードも彼らしい。スコセ
ッジとロビー・ロバートソンが結託して”綺麗にまとめ
上げた”ことに、ビルは思いっきり反発した。彼の言い
分はおよそこういうものだった。「ウィンター・ラン
ドに集まった観客たちが映っていないじゃないか!」

そんなことひとつひとつが胸に突き刺さってくる。
音楽とは、ロックとは果たして一体誰のためのもの
なのだろう? 

生前のビルはこう繰り返していたという。「Always
With Audience!(いつだって聴衆とともに!)と。

返すべき言葉が見つからない。

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by obinborn | 2013-01-23 01:43 | rock'n roll | Comments(2)  

Commented by noah at 2013-01-24 11:30 x
気がついたら、ロックを描いた映画には、なんらかの形で彼が関わっていました。なかでも、あのストーンズを呼び込むあのシーンは、忘れられません。
Commented by obinborn at 2013-01-24 11:43
かつてビル・グレアムの自伝も『ロックを創った男』(大栄出版)として
翻訳されていましたね。以前はどこか山師的なイメージもあった彼ですが、ミュージシャンたちから信頼されているのがよく解る良書でした。

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