虹をつかむ人
ことを言っている。「ある特定の音楽家がまったくゼロの地
点からオリジナルな表現を生み出してきたというよりは、互
いが影響を受け合いながら、刺激し合いながらシーンを築き
上げてきたんだと思います。そう考えるほうが自然です」と。
その思いはずっと変わらない。ロネッツの「Be My Baby」が
あったからこそビーチ・ボーイズの「Don't Worry Baby」が
生まれた。”ぼくの恋人になって”という気持ちが、時を経て
”気にするなよ、ベイビー”に。それはすごく美しい循環のよ
うなものだ。
佐野さんの楽曲に思いを巡らせていくと、「Be My Baby」
の切なさや願いが、あの懐かしい「Someday」に「月夜を
往け」に、そして新作の「虹をつかむ人」へと姿や形を変え
ながらも、しっかりと呼吸し合っていることに気が付く。
むろん時の流れは残酷だ。かつてのティーンエイジャーも
いつかは20代になり30代になる。自分だけは防弾チョッキ
を着ていないと胸を張り、雨のなかを傘も持たずに飛び込ん
でいったのは一体いつのことだろう? 人を値踏みするよう
な目でビジネスをやり取りしていないだろうか? 小さなも
のや形になりにくい想いにきちんと耳を傾けているだろうか
?
そのような問いに「月夜を往け」や「虹をつかむ人」はヒン
トを与える。”誰もが砂糖の山では10代のままでいられる。
でもそれはいつか崩れる”そんな風に歌ったのはニール・ヤン
グだったっけ。
忍び寄る歳月に負けないで。人と意見が違ってもいいではな
いか。むしろ深く沈めば沈むほど、遥か彼方の声が聞き取れ
るのではないだろうか。
そんな思いとともに今ぼくは「虹をつかむ人」を聞いている。
いい時も悪い時もある。背後にはまるで夢のかけらのように
「Be My Baby」がこだましている。
by obinborn | 2013-03-14 18:47 | rock'n roll | Comments(2)