デラニー&ボニーの置き土産

「もしロック音楽家が現代の吟遊詩人だとすれば、モーテル
はさしずめ彼らの水車小屋であり、隊商宿であり、路傍の小
屋なのかもしれません」

挿入された歌詞カードのなかにそんな一節があるデラニー&
ボニーの『モーテル・ショット』(71年)は、ツアーの合間
を縫ってレコーディングされた”裏記録”だ。地下のゲーム部
屋で、ツアー・バスのなかで、誰かの着替え部屋で行われた
その気楽なセッションからは、正規の録音とはまた違う寛い
だ味わいがあった。

ピアノとギターにタンバリンといった最小限の楽器とともに
歌とコーラスが繰り広げられていく。そんな意味ではゴスペ
ル音楽を想像される方々も少なくないだろう。クレジットこ
そされていないが、そのコーラスのなかにはジョー・コッカ
ーやスティーヴン・スティルスの声も聞き取れる。

実際に歌われるのも「Will The Circle Be Unbroken」や「
Talkin' bout Jesus」「Rock Of Ages」といったゴスペル
・ナンバーが多い。宗派はいろいろあるが、ブルーズととも
にゴスペルは俗と聖のような形でアフロ=アメリカンの礎と
なってきた音楽だ。

そうしたゴスペルや自作曲の数々をデラニー&ボニーと彼
の仲間たちが歌う。アコースティック楽器と肉声のみで構
成されているだけに、彼らの素の部分に触れられるのが嬉し
い。69年から71年といえばデラニー&ボニーは人気の絶頂
期でありツアーに明け暮れていた。むろん演奏のいい時も
悪い時もあっただろう。笑顔に満たされた時もあれば疲れ果
てて望郷の念に駆られたこともあったろう。そんな日々のな
か、楽屋裏やツアー・バスのなかでテープは回され、この
貴重な記録が残った。

そう、まるで旅の先々での置き土産のように。

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by obinborn | 2013-03-22 00:15 | one day i walk | Comments(4)  

Commented by てるきん at 2013-03-22 16:47 x
 映画「Ray」でも”ハレルヤ~”の演奏中、クリスチャンから「悪魔の音楽」呼ばわりされるシーンがありましたが、演奏スタイルはゴスペルと同様ですよね。
 そんな俗と聖の区別の厳しさは日本に住む私として、体感としては実感しにくい話ですね。
Commented by obinborn at 2013-03-22 17:17
ぼくも昔から気になっていたことなんですよ。ブルーズ(俗)と
ゴスペル(聖)の関係は。でも表裏一体というか向こうのアメリ
カ人は思っているほど意識していないんじゃないかなあ〜。ゴス
ペル出身のサム・クックが『Night Beat』のようなブルーズ・ア
ルバムを出したりして。でもやはり文化圏が違うのでてるきんさ
んがおっしゃるように実感としては掴みにくい話ではありますね
Commented by てるきん at 2013-03-22 20:27 x
 小尾さんがそう仰ってくれるとおぼろげな自分の仮説に自信が付きます!
 私の場合、リチャード・マニュエル、ダン・ペン、グラム・パーソンズ、ドニー・フリッツ、スティーブ・マリオットに惚れこむ事により、最近逆にレイ・チャールズの素晴らしさを再認識し、聴きこんでいくとゴスペル、カリブ、C&W、ニュー・オリンズとの融合を感じました。
 これはアーサー・アレキサンダーやパーシー・スレッジと一緒の黒人からのコモン・ストックの自然な形ではないかと思います。
 当然ゴスペルは特に南部では白人・黒人プリーチや宗派が色々あったでしょうが大きなコモン・ストックと考えるのがアメリカ以外の人々がその音楽を深く理解するキーワードではないでしょうか?
Commented by obinborn at 2013-03-22 23:46
細かい宗派・ジャンルはあれど、やはり共通分母に思いを馳せるのが
重要かと思います。以前お話しさせて頂いたレイ・チャールズのカントリー・アルバムなどが好例でしょうね。そしてプア・ホワイトや
マリオットのようなイギリス人たちがブラック大好き!といったことも含めて。

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