静かな情熱〜ジェシ・ウィンチェスターのこと

ジェシ・ウィンチェスターの近作『Love Filling Station』
は何度聞いても素晴らしい。少し前のこと、ぼくはそのC
Dの国内配給盤のライナーノーツを書かせて頂いたのだが、
通常4,000字前後の規約である原稿を確か倍以上の分量に
も亘って書き進めさせてもらったのだった。

そのライナーでは年齢とともにどんどん良くなっていく彼
の音楽のこと、かつてベトナム戦争の兵役を逃れるために
彼がカナダへと亡命したこと、またそうした時代背景を感
じさせる小説としてティム・オブライエンの『本当の戦争
の話をしよう』に関しても紹介させて頂いた。オブライエ
ンとジェシとはほぼ同世代。こういう大事なことは是非と
も書き留めておかなければ。

好むと好まざると、意識しようがしまいが、音楽には時代
の影が差し込む。とりたてて政治的でない人にとっても家
族や友人が脅かされ、見ていたはずの普通の景色が一変す
る。ジェシの歌にとくに戦争を糾弾したり平和を声高に叫
んだりするものはないが、その何気ないラブソングやスト
ーリーテイルのなかにさざ波が生じる。不穏な空気が差し
込む。彼の歌とはそういうものだと思う。

『Love Filling Station』にはまるで春の陽射しのように、
かけがいのない音楽が溢れている。穏やかに、その人の
呼吸や温もりが歌やギターを通して静かに伝わってくる。
そしてまたこの境地に達するまでには長い道のりがあった                    ことを伺わせる。強さとは何も威圧や強弁やスローガンに
あるのではない。

ジェシのしなやかに弾む歌の数々が、暗黙のうちにそのこ
とを告げている。

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by obinborn | 2013-04-03 18:59 | one day i walk | Comments(0)  

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