江上剛『非情銀行』

江上剛の『非情銀行』(04年 新潮文庫)を読了。今年13冊
め。

露骨なリストラをする経営陣に反抗すべく会社トップの総会
屋との癒着やフィクサーとなるヤクザへの不正融資を暴いて
いく若手銀行員たちの活躍が痛快であり、溜飲を下げる企業
戦士の方々も少なくないだろう。

解説によって思い出したのだが、バブルの只中〜衰退期であ
る80年代後半から90年代前半にかけては銀行の頭取や支店長
が相次いで射殺されるという衝撃的な事件があった。それは
言うまでもなくバブルに目が眩んでの先行投資や過剰な貸し                   出し故に起きた負のストーリーだった。

そんな銀行がバブル崩壊後には一転して貸し渋りと強引なま
での回収に走るのだから、銀行が”人でなし”と陰口を叩かれ
るのも仕方あるまい。中小〜零細企業の社長らが金策に困り
自殺する事件も幾度かあるが、それも元を正せば銀行の自己
保身に遠因があることは誰も否定出来ないはず。

普段ATMを通して入出金や通帳記入をするくらいしか銀行と
の接点がない私には内部告発という意味でも勉強になったが、
それ以上になりふりかまわぬ上昇志向や人間関係の魑魅魍魎
には愕然としてしまった。アンタそんなに偉くなりたいの?
その先に何があるの? である。

最近一般紙でも大きく報じられるようになった人材能力開発
室とは名ばかりの”退職勧告”部屋のことも、今からおよそ10
年前に出された本書で触れられている。そこで精神的に追い
詰められ自殺してしまう脇役の存在にも心が痛んだ。会社や
組織というものは、かくも人間性を歪めてしまうのか?

ちなみに作者の江上剛氏は元銀行員。第一勧業(現みずほ)
銀行在職中に匿名で書いたこの『非情銀行』でデビューした。
本書はそんな江上氏の叫びが聞こえてくるような一冊である                   と同時に、拝金主義に翻弄された私たちの負の物語でもある。

私自身も微かな痛みとともに会社員時代をふと思い起こした。

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by obinborn | 2013-04-17 18:02 | 文学 | Comments(0)  

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