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向こう見ずなままに

どこまでも逞しく奔放な演奏が続いた。ときにサイケデリック                  な夢幻があり、ある場面では楽器同士のチャーミングな交歓が
ある。そんなコスモポリタン・カウボーイズのライヴを17日は
池袋のフリーフロウ・ランチにて。

オープニングを飾った伝承曲「The Water Is Wide」では最高
時のニール・ヤングのようにノイズの嵐が吹き荒れたし、ハン
ク・ウィリアムズの「Hey Good Lookin」と「I Saw The Ligh
t」は日本語のオリジナル歌詞によって新たに生命を吹き返した。
アンコールで歌われた「Raglan Road」はヴァン・モリソンと
チーフタンズの共演作ですっかり有名になった曲だが、このバ                  ンドのリーダーであるハル宮沢は、ここでも自分の歌を取り戻
すべく、オリジナルの歌詞を連ねていく。そうしたひどく真剣
な思いとユーモアとが絶妙に混じり合いながら、他の誰のもの
でもないカウボーイズの音楽へとなっていく。

震災後のメタファーも「木偶の坊」や永六輔の作詞となる「遠
くに行きたい」などで仄めかさせた。とくに後者では原曲を大
胆に改変したジャズ・ロック的なアレンジが秀逸であり、宮沢
の抑制されたギター・ソロには彼の辿ってきた道のりがしっか
りと刻印されていたと思う。通俗的なカントリー曲「Country
Road」でさえ、宮沢の手に掛かるととたんに羽根を伸ばしたり
毒を入れまくるのだから面白い。

いつだったか、ハル宮沢とクラッシュからフラーコ・ヒメネス
までを、クレイジー・ホースからガーランド・ジェフリーズま
でを語り合ったことがある。ステージを降りた彼はこっちが
心配になってしまうほど、ロック好きとしての素顔を無防備な
までに晒け出す。

彼のぶきっちょなヴォーカルはハイスクールにいた無口な青年
のようだ。その激しいエレクトリック・ギターは一人で嵐へと
立ち向かっていく賢者のようだ。

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by obinborn | 2013-04-18 01:57 | rock'n roll | Comments(0)  

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