歌詞を書けない天才

08年の最新作『ナイン・ライヴス』でもリズムへの多彩なアプ
ローチが光っていたスティーヴ・ウィンウッドだが、トラフィ
ック時代のサイド・プロジェクトとして忘れられないのがサー                  ド・ワールドだ。

73年の5月にレコーディングが開始されたこの『Aiye-Keta』
のメンバーは、ウィンウッドに加えナイジェリア出身のパー
カッション奏者レミ・カバカと、アフロ・ロック・グループの
オシビサで管楽器を吹いていたラフティ・アマオの計3人。と
くにカバカは、かの音楽闘争家フェラ・クティと関わっていた
り、ポール・マッカートニー&ウィングスのラゴス録音集『バ
ンド・オン・ザ・ラン』やポール・サイモンの『リズム・オブ・                 セインツ』にも参加していたので有名だろうか。

アルバムの内容はアフリカ色が濃厚なインストゥルメンタル集。
変拍子の波がじわりじわりと押し寄せてくるのだが、威嚇的で
はなく、どこまでもゆるやかなヴァイブに満ちている点が素晴
らしく、ウィンウッドらしい抑制された美意識も感じる。

ロックというフォーマットに飽き足らず、第三世界の音楽に目
を向けていく。70年代初期にはそんな動きが少なからずあった
が、その一端としてもエポックな作品だろう。トラフィックで
もガーナ出身のリー・ボップのパーカッションを取り入れたり、                 マスル・ショールズのフォー・リズムを引き連れてツアーを行
ったり、ウィンウッドはとくにリズムに対する探究心が旺盛だ
った。

そんな彼が試行錯誤の果てに傑作『ナイン・ライヴス』が生み
出した。そのことを思うと、ウィンウッドの地味ながらも確実                  な歩みに感動してしまう。自分で歌詞を書けないこの”天才”は
リズムという濃やかな波のなかに音楽を託しているかのようだ。

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by obinborn | 2013-04-23 19:16 | one day i walk | Comments(0)  

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