歌と想像力

かつて69年に「自衛隊に入ろう」という反語的な歌が流行り
ました。学園闘争やベトナム戦争で大きく揺れていた当時の
厭世観として、このような皮肉めいた歌への共感があったこ
とは理解出来ます。しかしながら、ある一定の職業を揶揄す                   るようなこうした歌を私はどうしても好きになれません。ま
たこうした歌が時代を超えて「長持ち」するとも思えないの
です。

公平を記すためにも歌詞を書いておきますね。一番の歌詞
に続く「自衛隊に入ろう入ろう〜」の部分がリフレインで
す。

 *     *     *

「自衛隊へ入ろう」作詞と歌:高田渡

みなさん方の中に 自衛隊に入りたい人はいませんか
ひとはたあげたい人はいませんか 自衛隊じゃ人材求めてます

自衛隊に入ろう入ろう入ろう 自衛隊に入ればこの世は天国
男の中の男はみんな 自衛隊に入って花と散る

スポーツやりたい人いたら いつでも自衛隊におこし下さい
槍でも鉄砲でも何でもありますよ とにかく体が基本です

鉄砲や戦車や飛行機に興味を持っている方は
いつでも自衛隊にお越しください 手とり足とり教えます

日本の平和を守るためにゃ 鉄砲やロケットがいりますよ
アメリカさんにも手伝ってもらい 悪いソ連や中国をやっ                    つけましょう

自衛隊じゃ人材求めてます 年令学歴は問いません
祖国のためならどこまでも 素直な人を求めます


*     *     *

憲法9条も国防も非常にデリケートな問題です。とくに
そのことをここで同列に扱うつもりはまったくありません。
繰り返しますが、どんな大義名分や高邁な思想があろうと
も、私は人を貶めるような(少なくとも私にはそう感じる)
歌がイヤなのです。そのことを言いたいがためにこのテキス
トを書いてみました。

余談ですが、震災時に献身的なまでに働かれた自衛隊の方々
に感謝しています。それは政治観や主義主張の問題ではなく、
人としての基本的な思いや想像力なのでは、と私は考えてい
ます。

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*フェイスブックの方には現時点(16日の午後)で以下のような
コメント&やりとりがあります。ご参考まで。


職業の揶揄などあってはならないことです。真摯に働いている方に対して失礼です。


本当にそうですね。当時の時代背景として自衛隊への皮肉が受け入られたのだとしても、けっして誉められた態度ではないと思います。恒久平和・戦争放棄の訴えも大事でしょうが、国防のことも現実的に見つめなければ、というのが私の基本的な考え方です。

こんなことを書くと大いなる誤解を受けそうですが、自衛隊不要論というのも反原発と相通じるような気がします。理想は理想としてそれを実現するための努力は必要ですが、現実を踏まえた上での議論、解決策が必要だと考えます。

ぼくも以前指摘したことなのですが、反原発運動家のなかの一部の勢力にはちょっとユートピア指向に過ぎる部分を感じています。ノーニュークス〜戦争放棄〜憲法の批准をセットにして語るのは確かに理想主義的ですが、ぼくの感覚としてはちょっと無理があるのでは?との疑問があります。ヒステリックにただ叫ぶだけではかえって一般の人々の原発への関心を遠ざけてしまいかねません。

ワタシは自衛隊に抵抗がありません。
地道に自衛隊で働いている人を身近に知ってもいますしね。
職業に貴賤なしです。


机上の空論で自衛隊アレルギーみたいな人もいますが、ちょっとそういうのはどうかな?とぼくも思います。

それが人間としてごく自然な心持ちだと思いますし、そうだと信じたいですね。

解って頂き嬉しいです。ありがとうございます。

本当にその通りですね。極限状態では主義主張とか言っていられませんね。青臭いかもしれませんが人が人を思う気持ちを信じたいです。

コメントありがとうございます。こういうテキストはリスクもあるし、改竄されたり誤解されたりする危険もあるのですが、書かずにはいられませんでした。
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by obinborn | 2013-05-15 17:57 | one day i walk | Comments(15)  

Commented by 大塚 at 2013-05-16 19:13 x
この歌はオレが思うにあまりにも一人歩きしすぎているように思う
高田渡の価値基準や評価といったものがまずは自衛隊に入ろうを経由して
この歌が好きか嫌いかみたいなところから始まっているような傾向にあるように思う
防衛庁からPRに使わせてくれと申し出があった一方で労働組合の集会で歌ったりすると
なんでこんな自衛隊賛美の歌を歌うんだと非難されたりしたらしいが
何年か後に高田渡はこの歌を歌うことをやめてしまった
この歌の役割が終わったからだということらしいのだが
この役割というのが何だか知りたいけど本人はもういない
ある自衛隊員の人が宴会で自衛隊に入ろうを歌ったら除隊させられちゃいました
というのを高田渡が聞いてさすがにいくら無礼講でも花と散る〜と歌うのはまずかったな〜と書いている
個人や組織といったもの直接的に非難した歌はこの時代にはいくらでもあるが
この歌はけっして自衛隊員個人を揶揄したものではないと思う
1968年に小学生だったオレには実のところはこの時代の空気は計り知れないが
Commented by obinborn at 2013-05-17 00:54
まだ当時は高田も若かったからその点は時代背景とともに考慮したい
と思います。のちにこの歌を引っ込めたことについても納得する部分は少なくありません。つまり政治的(それも具体的)なことを歌うのは、歌手にとって良くも悪くもそれほどまでに色が付いてしまうことに他ならないと思います。私個人としては音楽家にはもっと”長持ち”する歌を歌ってほしい。それが私の審美眼です。
Commented by 鈴木カツ at 2013-05-17 08:46 x
高田渡さんの「自衛隊に入ろう」を、短絡的に“ある一定の職業を揶揄”と結びつけるのは、いささか早計のような気がします。あの時代の空気を読み取ることができた優れた“パラドックス・ソング”と高く評しております。ある意味“国家権力に対する痛烈な皮肉を投げかけた歌”といっても良いと思います。ということで、けっして自衛隊員個人を揶揄したものではないと思っております。日本の音楽家で政治的なメッセージを歌うことは、タブーのような風潮がありますが、渡さんや忌野清志郎さんのような気骨のある歌手がいたということは、むしろ褒められることだとおもいませんか?小尾さんのお考えとは裏腹に、この歌は今日では反戦ソングとして高く評価されております。それでいいと思っております。歌の解釈は、時代によって変化します。それだからこそ、歌い続けられるのですから…。
Commented by obinborn at 2013-05-17 18:48
残念ながら私の考えは真逆ですね。むしろ「自衛隊に入ろう」は時代とともにどんどん経年劣化していったという印象を受けます。また
時代の気分・ムードとしてこのような歌が受け入れられたことが信じられない若者も多いでしょう。繰り返しになりますが、高田氏がこの曲を後年歌わなくなった気持ちも汲みたいところ。作詞者の意図にかかわらずその歌が共感を呼ぶ反面で、その歌によって傷を負ってしまう人も存在するのです。それは何も「自衛隊に入ろう」に限ったことではありませんが、時事的な歌(Topical Song)をこのように具体的に歌う場合はどうしても聞き手によって二面性が生じてしまいます。「風に吹かれて Blowin' In The Wind」や「激しい雨が降る A Hard Rains A- Gonna Fall」が暗喩的(具体的に誰かを糾弾するのではない)故に長持ちしていることもぜひ考え併せてください。
Commented by 江古田 渡 at 2013-05-17 20:18 x
高田渡さんのファンとして、僭越ながらコメントさせていただきます。小尾さんは、自分が好きでもなく、「長持ち」もしないと思う歌をなぜ今わざわざ取り上げて論評するのでしょうか。小尾さんが40年以上も経ってから取り上げること自体、この歌の生命力と、それを生み出した高田渡さんの眼差しの鋭さ、長さを証明するものではないでしょうか。小尾さんの仰ることは自己矛盾していると思います。
私はむしろ、わざわざ今この歌を取り沙汰す小尾さんの態度に「政治的」なものを感じます。小尾さんの音楽的知識や情熱には感服する部分もあるだけに、残念です。
Commented by 江古田 渡 at 2013-05-17 23:32 x
「連投」になってしまい恐縮ですが、字数制限のために書けなかったことで、小尾さんにお伝えしておきたいことがあるので、再度コメントさせていただきます。
ある歌が「長持ち」するかどうかを判断するのは、音楽ライターの「審美眼」なのでしょうか。「長持ち」したかどうかは、結果として歴史が証明するものではないでしょうか。私は「自衛隊に入ろう」は、40年以上「持った」と思います。複数のアーティストにカヴァーされ、今もこうして賛否両論話題になっているのですから。
公平を期すため、1969年(前後)の日本の楽曲で、小尾さんが今日まで「持った」あるいは今後も「持つ」であろうと考える楽曲を具体的にご教示ください。
Commented by 鈴木カツ at 2013-05-18 07:16 x
加川良さんの「教訓Ⅰ」ですが、高田渡さんの「自衛隊に入ろう」と同じように過去、現在も、反戦ソングとして高く評価されております。ここでの歌詞は、渡さんの「自衛隊に入ろう」と同じスタンスだと、ぼくは強く思っております。ここに歌詞カードを添付しておきますので、ぜひ小尾さんのご見解をお聞かせください。

命はひとつ 人生は1回
だから命を すてないようにネ
あわてるとついフラフラと
御国のためなのと言われるとネ
青くなって しりごみなさい
にげなさい かくれなさい
御国は 俺達死んだとて
ずっと後まで残りますよネ
失礼しましたで終るだけ
命のスペアはありませんよ
青くなって しりごみなさい
にげなさい かくれなさい
命をすてて 男になれと
言われた時にはふるえましょうよネ
そうよあたしゃ女で結構
女のくさったのでかまいませんヨ
青くなって しりごみなさい
にげなさい かくれなさい
死んで神様と 言われるよりも
生きてバカだと言われましょうよネ
きれいごとならべられた時も
この命をすてないようにネ
青くなって しりごみなさい
にげなさい かくれなさい
Commented by obinborn at 2013-05-18 07:34
「自衛隊に入ろう」同様に国家主義、全体主義を牽制したり批判したりする歌だということは勿論理解しています。ただ私がそれほど好き
になれないのは、言葉にはもっと豊かな連なりとか響きがあると思っているからかもしれません。余談ですが、高田氏が日常をスケッチした歌などは私も好きです。彼の名誉のためにも付記しておきますね。
Commented by 鈴木カツ at 2013-05-18 08:22 x

ご見解、ありがとうございました。近々、中川五郎さんが「We Shall Overcome」を独自の歌詞で、日本語で歌っております。こちらもご見解をお聞かせください。映像がアップされておりますので。ぜひ参考にしてください。
http://www.youtube.com/watch?v=9x5EfwlhGIM
Commented by obinborn at 2013-05-18 11:35
反核であれ反戦であれ、その思いとはまた別に私たちは一概にこっち
が正義で向こうが悪とか、特定の相手に非があるとかを言い募ったり断定したりは出来ない複雑で込み入った(complicatedな)社会で暮らしています。五郎さんの思いは思いとして、私は彼と手を携えてこの歌を歌おうとは思いませんし、その場所(デモ現場やライブ会場)を共有したいとも思いません。むろんこれは私個人の感覚から派生する問題ですけれどね。
Commented by 大塚 at 2013-05-18 12:19 x
高田渡の著書バーボン・ストリート・ブルースからの引用です

そもそも僕は集団の中に入って何かをするというのがあまり好きではない。たとえばデモに行くのだったら、自分一人でゼッケンを引っ掛けて行くのが本来の姿だろうと思うのだ。印刷したゼッケンをみんなでぶら下げて行くようなものは、デモでもなんでもない。
それはただの残業である。

これは当時のフォークゲリラに対しての記述のようです
オレもデモってちょっと苦手だな
Commented by 江古田 渡 at 2013-05-19 16:20 x
小尾さんが自衛隊や国防のあり方について一家言あるのなら、素直に自説を展開されるべきだと思います。それなのに、憲法や国防については「デリケート」との理由で言及を避け、自衛隊のあり方については「余談」として暗示にとどめることで巧妙に「自衛」した上で、既に亡くなられてご本人は反論のしようもない方の歌を我田引水的に利用するから、私のようなファンが怒るのです。
小尾さん、あなたは言わば、人のふんどしを裏返しにして相撲を取っておられるのです。かつて雑誌などで小尾さんの原稿を読ませていただいた者として、小尾さんのそんな取り組みは観たくありませんでした。
Commented by obinborn at 2013-05-19 18:35
フェイスブックのほうに書いたように、私は国防や災害時のためにも
自衛隊の存在に意義を見出しています。むろん恒久の平和や憲法9条
の批准を願ってもいますが、いざ現実に立ち返れば北朝鮮の脅威もあ
り、尖閣諸島の問題などもあります。それらをきちんと引き受けること。夢想的にユートピア〜理想郷を語るのではなく、代々の子供たちに何を残していけるのかを考えること。そこに政治的な主義主張や思惑などありません。あまり人を追いつめないでください。あなたに守るべき生活があるのと同じように、私にも大事な日々があるのです。
Commented by 江古田 渡 at 2013-05-19 22:46 x
私は小尾さんを「追いつめる」つもりはありませんし、本来ネット上でのこうした議論も好まない人間ですが、私にとって大事なアーティストの歌を小尾さんがあまりに一面的に解釈され、ご自分に都合よく引用されていることに違和感を感じたので、コメントさせていただきました。
Commented by 鈴木カツ at 2013-05-19 23:16 x
♪小尾さんのお考え、よくわかりました。結局、何かを問題を論議するときに、ご自身の自尊心が傷つかないように防御するのですね。また正義」とか「悪」というキーワードを直ぐに思い浮かべるようですね。残念ながらそうした思いは、ぼくにはまったくありません。ぼくは原発反対者です。70歳を迎えて重い腰を引きずりながら原発反対デモに参加しております。それは原発が必要ないからです。お亡くなりになった高田渡さんは、反論もできませんよ。五郎さんの歌う「We Shall Overcome」の日本語ヴァージョンにも痛く感銘を受けております。茅ヶ崎の若い音楽家は、きっとYOU TUBEにアップされているこの歌を歌う五郎さん映像に感銘を受けて覚えたのでしょう。歌っている姿を何度か観ました。これもご報告しておきます。あなたの音楽ライターとしての資質、これからもずっと重く疑っていきます。

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