Songs To Remember

07年の夏に拙書『Songs』がちょうど十年ぶりに増補改訂版
として出版されました。その時に敬愛する音楽評論家の天辰
保文さんが好意的な書評を寄せてくださったことは、今なお
私の心の糧になっています。自分のことで、またちょっと古
いことで申し訳ない気持ちもありますが、まだ目を通されて
いない方々もいらっしゃると思いますので、ここで紹介させ
てください。掲載されたのは『CDジャーナル』誌です。

 *       *       *

97年の著書に書き下ろしを加えての増補改訂版ということ
だ。70年代アメリカン・ロックの風景と副題にあるように、
ジャクソン・ブラウンやニール・ヤングが取り上げられて
いるが、マーク・ベノにアル・グリーン、エルヴィス・プ
レスリーにアーサー・アレクサンダー、ロニー・レインに
佐野元春と、必ずしもその風景は整然としておらず、秩序
立てて論じられているわけでもない。

それでも、不自然さがなく、ここに出てくる音楽が過去の
ものに聞こえないのは、小尾隆という人が情報にふりまわ
されず、自分との関わりのなかで音楽を論じることに徹し
ているからだ。そして、音楽がもたらしてくれたものを考
え、それに対して自分はどうなのか問いかけていく。しか
もそのための隙間というか、部屋のようなものがこの人の
文章にはいつも寄り添っている。

それは小さくて、華やかでもないが、彼が正直に自分自身
と向き合うことができて、時に友人を迎える扉があって、
風が通り抜ける窓もある。慌ただしさを避けて立ち寄りた
くなる空間だ。彼はそこで大声を上げるでもなければ、知
識をひけらかすでもなく、奇抜な論説を投げかけるでもな
い。そうした驚きはないが、それらに勝る時間の流れをこ
の本は有している。それをどう例えればいいか分からない
が、書き手がこうやって独自の時間の流れを獲得する、そ
れこそが音楽と向き合ったときの誠意のひとつかもしれな
いな、とぼくはそんなことを思った。     天辰保文

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by obinborn | 2013-05-19 13:14 | one day i walk | Comments(2)  

Commented by caorena at 2013-05-19 22:17
まさに今読んでおります!
ほーほーなるほど、と頷きながら。
そこここで感動しながら。
Commented by obinborn at 2013-05-19 23:19
ありがとうございます。ゆっくりと気になった章から読み進めて頂ければと思います。すごく嬉しいです!

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