いつもいっしょ

爽やかな余韻に包まれた一夜だった。それはとくに昨日と
変わるようなものではなかったし、明日になって劇的に変
貌を遂げるものでもないだろうが、今日もまた東京ローカ
ル・ホンクを聞いて良かったなと、しみじみ思わずにはい
られなかった。そんな彼らのライヴを24日は下北沢のフラ
テアにて。

手を伸ばせばステージに届いてしまうような小さな会場で
のアコースティック中心の演奏は久し振りのこと。ときに
木下弦二はマイクを通さずに歌ったし、新井健太、田中ク
ニオ、井上文貴によるコーラスに至っては全編ノンマイク
で通したが故に、普段にも増して親密感が溢れ出す。隅々
にまで歌が響き渡っていく。

あの懐かしい「ヒコーキのうた」で始まった第一部は、ホ
ンクの前身バンドである”うずまき”時代からのファンには
たまらないものだっただろう。小さな音でどれだけ伝えら
れるか。そのことに対し誰よりも一生懸命に取り組み、と
きに若さ故に過敏なまでになっていたという”うずまき”時
代の彼らをぼくは体験出来なかったのだが、しかしフラテ
アという会場の空気がそうさせたのだろうか、ホンクはう
ずまき時代の「海辺の家の一週間」や「心の行進」「おに
ぎりソング」などを束ねていく。それらの歌たちは今なお
無邪気なままであるけれども、イノセントをことさら強調
するメッセージ・ソングとはまったく異なる光と影を、月
と星を、昨日と明日との間をほのかに照らし出す。無垢を
声高に、あるいは説明的に言うのではない。ホンクたちは
むしろ言葉にならない小さな声に耳を澄ませ、音という絵
の具を使って、その日々をどこまでも柔らかくスケッチし
ていく。

「お手紙」で始まった第二部はエレクトリック編成による
逞しい響きが加わり、より膨らみのあるバンド・サウンド
が全開に。「お手紙」に続く「目と手」の鮮やかな光景が
愛おしい。この歌が子供に捧げられたものであれ、愛する
人との関係を言い含めるものであれ、「目と手」には少な
くとも他者との関係のなかで自分を発見しようとする弦二
の心映えがある。いつかぼくも沸き立つ雲のように昨日を
を思い、今日や明日の行き先を考えられたらなあ〜。

ステージはどんどん進んでいく。「いつもいっしょ」が言
い含めるものは、”いつもいっしょ”にいられなくなった人
たちのことでもあろう。昨日まで毎朝一緒にご飯を食べて
いた人が突如失われてしまうという残酷な物語であるかも
しれない。そうした含みにいつしか気が付く。明るい歌に
悲しみの表情が携わっていく。影が差し込んでいく。

最後の最後に奏でられたのは「車のうた」。「ハイウェイ
ソング」と並ぶホンクのこのロード・ソングには思いっき
り陽性の匂いがした。そう、彼らのハイエースを祝福する
かのように。

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by obinborn | 2013-05-25 03:55 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

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