懐かしい故郷のように、帰るべき家のように。

やっぱりここに戻ってしまう。そんな懐かしい実家のような、
久しく帰っていない故郷のような音楽が誰にでもあるだろう。

オイラにとってグリース・バンドはそんな筆頭格かな。ジョ
ー・コッカーのバックバンドから始まり、69年の8月にはあ
のウッドストック・フェスティヴァルにジョーとともに出演
して、「With A Little Help My Friend」などをプレイした。
のちにジョーから離れバンドとして独立。71年にこのデビュ
ー・アルバムを出したのさ。米国でのレーベルがレオン・ラ
ッセルとデニー・コーデルが共同出資したシェルターだった
ことも彼ら周辺の人脈を物語るかのようだね。

それにしても懐の深い演奏だ。とくに印象的なメロディがあ
るわけではないし、派手なリフで押しまくるわけでもないの
だが、じわ〜っと押し寄せてくる泥臭い音の波にいつの間に
か心を奪われ、時間さえ忘れてしまう。

そうそう、とくにギターのヘンリー・マカロックはオイラに
とってマイ・ヒーローのような存在なのさ。早弾きが持て囃
されていたギター・ヒーローの時代に、ヘンリーやデイヴ・
メイソンの”遅弾き”はオイラに隙間とか余白といった気持ち
を教えてくれたんだ。ジェシ・エド・ディヴィスやロン・ウ
ド、あるいはジョージ・ハリソンについても言えることだけ
ど、彼らのギターにはいわば人間性がきちんと刻印されてい
るのだと思う。

ヘンリーさんで一番有名なギター・ソロは、やはりウィング
スの「My Love」だろう。主旋律から次第に離れていきつつ、
彼ならではの朴訥としたシングル・ノートを丁寧に丁寧に紡
ぎ出してゆく。その歌心に一体何度涙したことか。

写真に挙げた『Grease Band』はそんなヘンリーの最初のマ
スターピース。ギター同様にこの人の不器用丸出しのヴォー
カルがまたいいんだ。悲しいことにヘンリーは未だ闘病中だ
という。いつかまたぼくらのまえでギブソンを抱えながら、
しっとりと歌い始めて欲しい。

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by obinborn | 2013-06-02 16:00 | one day i walk | Comments(0)  

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