イングィ兄弟がアラバマ州に赴く

大好評のアトランティックR&B1000円シリーズもいよいよ
第4弾めとなったが、そのなかでも断トツに輝いているのが
ソウル・サヴァイヴァーズの『Take Another Look』だ。
69年にATCOから発売された彼らのこのセカンド・アルバム
は、そのレア度から見ても音楽的なクォリティの高さから
振り返ってみても、まさに幻の名盤と呼ぶに相応しい。

チャーリーとリッチーによるイングィ兄弟は50年代からNY
でドゥワップに親しんでいたイタリア系のアメリカ人。そん
な意味ではローラ・ニーロやヤング・ラスカルズと共通する
背景を持ったブルー・アイド・ソウルの人々だ。そのイング
ィ兄弟はやがてデディケーションズを結成し、次第にソウル
・バンドとしての音を固めていく。そして67年のある日フィ
ーリー・ソウルの先駆となるギャンブル&ハフに見出され、
「Expressway To Your Heart」でデビュー。同曲は67年の
9月23日に何と全米チャートの4位へと躍り出たのだった。
やがてブルーズ・ブラザーズがカヴァーしたこの曲を覚えて
いらっしゃる方々も少なくないだろう。

同曲をフィーチャーしたクリムゾン・レーベルでのファース
ト・アルバムに続いたのが、この『Take Another Look』だ
った。ギャンブル&ハフが引き続き制作したNY録音のシン
グル盤2曲を含みつつも、レコーディング・ロケーションを
南部、それもアラバマ州のフェイム・スタジオに移して臨ん
だ本作は、彼ららしいノーザン・ダンサーぷりとサザーン
・フレイヴァーとが何ともいい具合に折り重なっている。

ヤング・ラスカルズを思い起こさずにはいられないイングィ
兄弟による自作曲「Jesse」や「Mama Soul」の美しさ。
デュエイン・オールマンのスライド・ギターが右チャンネル
から飛び出して唸りを上げるやはり兄弟自作の「Darkness」
の突発力。そしてエタ・ジェイムズでおなじみのフェイム
録音「Tell Mama」を改題した「Tell Daddy」のグルーヴ感。
どれも60年代後半ならではの崇高な理念(愛と平和)に満た
された”ソウル”に他ならない。

グループはこの後シングル盤を発表しつつ、サード・アルバ
ム『The Soul Survivours』をTSOPレーベルから発表。再度
ギャンブル&ハフに制作を委ねてシグマ録音らしい洗練され
た音となったが、まだまだ野性味があったこのATCO盤には
若者らしい伸びやかさや切迫感が詰まっていて、私の胸をど
こまでも締め付けてゆく。イタリア系の白人だったイングィ
兄弟にとっては同じマイノリティであるブラック・ミュージ
ックへの共鳴は、きっと切迫した感情だったはず。その魂の
断片がこの『Take Another Look』には溢れ返っている。

なお本作のライナーは最近メキメキ腕を上げている気鋭のラ
イター、日向一輝氏によるもの。文字数の制限はあったと思
うが、簡素かつ的確にソウル・サヴァイヴァーズの歴史を紐
解いてくれていて嬉しくなった。

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by obinborn | 2013-06-07 01:01 | one day i walk | Comments(0)  

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