巨星堕つ。追悼ボビー”ブルー”ブランド

巨星堕つ。まさにそんな言葉が相応しいだろう。
ボビー”ブルー”ブランドが23日、メンフィスの自宅で息
を引き取ったらしい。享年83歳。
ここ数年は体調が思わしくなく、いつかこういう日が来てし
まうのではと不安ではあったが、もう二度と彼の歌を聞けな
いと思うと、心に隙間風が吹くような気持ちになってしまう。

最初彼の良さが全然理解出来なかったのは、ひとえにぼくの
未熟さ故だったろう。それでも青年期がゆったりと過ぎ去り、
現実社会の荒波に揉まれ、それなりの苦みを覚えるようにな
った頃、ある日突然寄り添ってくれたのが彼のブルーズだっ
た。すべてを包み込むような器の大きなヴォーカリストであ
り、その歌には皮膚に直接染み渡るようなきめ細かい襞が感
じられた。

ロックとの接点でいえば、グレッグ・オールマンもリチャー
ド・マニュエルもダグ・サームも、その歌い方という一点に
関してはみなボビーの係累であり、コクのあるサザーン・ヴ
ォイスの継承者であり続けようとした。彼らはボビーの持ち
歌を、順に言えば「Stormy Monday」「Share Your Love」
「Ain't That Loving You」といった具合にカヴァーしていっ
たし、今現在は独特のポジションを確立したヴァン・モリソ
ンにしろ、若い頃は憧れ一杯に「Ain't Nothing You Can Do」
を熱唱していたっけ。

ブラック・ミュージックの戦後史としても、ボビーはジュニ
ア・パーカーやB.B.キングと並び称されて語られてきた。と
くに最後の最後までチトリン・サーキットにこだわり、黒人
の聴衆たちのために歌い続けてきたのは賞賛に値する。つま
りそれはボビーが最も彼らしくいられる場所でもあったはず
だから。レコード・レーベルでいえばデューク/ピーコック時
代の濃密でダークな音はどれも必聴だが、後年マラコに迎え
られてソウル・シンガーとして柔らかさが加わった姿には、
彼自身の人生と経験がそっと映し出されていた。

心よりご冥福をお祈り致します。リトル・ブルー・ボーイ、
あなたの歌に出会えて良かった。

e0199046_3571899.jpg

[PR]

by obinborn | 2013-06-25 04:14 | blues with me | Comments(2)  

Commented by Almost Prayed at 2013-06-26 15:38 x
お久しぶりです。最近の音楽生活の調子はいかがでしょうか。

さて、ボビー・ブランドが亡くなったわけですが、フォロワーであるリトル・ミルトンもタイロン・デイヴィスもマーヴィン・シーズも既に亡くなったことも加えて、言葉そのものの意味での「ソウル」の時代がずっと過去のものになったことを改めて感じます。近年だとミック・ハックネルが“Tribute To Bobby”という、ボビー・ブランドの曲で固めたカヴァー曲集を出したわけですが、(音作りも含めて)情感の深さや雄大さにおいて本家とは全く勝負にならなかったことを考えると、やはりボビー・ブランドは本当に凄いシンガーだとつくづく感じます。

ブルーズに限ったことではないでしょうけど、やはり「歌」そのものの表現力や説得力に関して、麻痺あるいは無頓着になってしまっていることは、日本の聴き手や評論筋における絶望的なまでの問題点でしょうね。そういう人々は「初音ミク」の歌でも十分なのでしょう。
Commented by obinborn at 2013-06-26 17:23
ご無沙汰しています。音楽のほうは古いR&B〜ブルーズの7's中心に
追いかけています。それなりに聞いてきたつもりでもまだまだ研究の
余地が沢山あるという感じですかね。21世紀も最初の10年が過ぎて本当に20世紀の音楽が過去のものになりつつあるといった印象を受けます。ハックネルのそれはまだ聞いていませんが、開拓者と模倣者とではそもそも出発点というか背負っている時代がまるで異なるのでしょう。ブランドの死は美空ひばりのそれにも匹敵するくらいの事件だと思うのですが、マスメディアの扱いが殆どないことに悄然とされ
られたりしています。今日は少し時間が取れそうなので故人の音源を
聞いて偲びます。

<< ローウェル・ジョージの34回忌... 試合が終わってからの投手のように >>