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ローウェル・ジョージの34回忌に寄せて

今年もまた6月29日がやってきてしまった。そう、ローウェル
・ジョージの命日である。忘れもしない79年の夏のことだ。
当時三軒茶屋にあった先輩の家で一晩を明かしたぼくは、翌朝
その先輩宛てに掛かってきた電話でその悲劇を知る。「おい、
驚くなよ、ローウェル・ジョージが死んでしまった」待望だっ
た初来日公演をちょうど前年の夏に観ていただけに、今も生々
しいくらいに覚えてる。あれからもう34年が経ってしまった。

桁外れの存在感を放っていた人だと思う。ヴォーカル、ソング
ライティング、ギター。そのすべてがトータルに融合されて唯
一無比の個性を形作っていたのだと思う。当時はハイ・ポジシ
ョンを駆け巡る彼のスライド・ギターに耳を奪われがちだった
けれども、それだけではなく年月とともにローウェルならでは
のタイム感とか息遣いのようなものがその音楽からくっきりと
伝わってきた。たとえば『Dixie Chicken』(73年)に収録さ
れた「Roll'em Easy」はどうだろう。寄る辺ない旅人の心情を
汲むようなローウェルの歌とギターが弾き語りに近いスタイル
で演奏されているだけに、そのタメや隙間に感じ入ったものだ。
音のない空間にこそ音楽が宿る。そんなワビ・サビにも似た世
界が確かに感じられた。ぼくは当時よりももっと彼のことが好
きになっていった。

「Roll'em Easy」に関しては、リンダ・ロンシュタッドのヴァ
ージョンも素晴らしい。作者のローウェルがスライドを弾くば
かりでなく、リンダの張り切った声が別の角度からこの曲に光
を与えているから。ボニー・レイットの『Takin' My Time』
ではプロデューサーに抜擢されながらも、レコーディング中に
レイットと喧嘩してしまい降板する事件もあったローウェル(
オーリアンズのジョン・ホールがその後を継いだ)だが、けっ
して妥協しない人間臭さがまた何とも彼らしい。

オーリアンズとリトル・フィートとのパッケージ・ツアーでは
興行が怪しくなり、プロモーターがオーリアンズを切るという
事態にもなりかけた。その時のローウェルはこう言ったという。

「オーリアンズと一緒でなければ、俺たちも演奏しないよ」

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by obinborn | 2013-06-29 01:25 | rock'n roll | Comments(0)  

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