音楽から友情が聞こえてきた

神々しいまでの演奏がどこまでも続いていった。
その流れは一切淀むことなく次第に逞しくなり、
最後に河口へとしっかり辿り着いていく。その
場面場面を反芻するだけで愛おしくなってくる。
そんな東京ローカル・ホンクのライヴを17日は
青山の月見ル君想フにて。

アカペラの「サンダル鳴らしの名人」から始まり、
「いつもいっしょ」「お手紙」「四月病」がしな
やかに束ねられていく。田中クニオのリム・ショ
ットが次第に輪郭を描き出し、ミキシング・エン
ジニアのHALKによるダブ処理とぴたりと呼吸す
る「昼休み」を場面転換のようにしながら、後半
は「夜明けまえ」や「お手手つないで」といった
新曲を交えつつ、「おいでおいで」「社会のワレ
メちゃん」「すんだこと」が解き放たれていった。
その一つ一つの場面が鮮やかで、もう一度聞き直
したいくらい。

ギター2本にベース、ドラムスというたった四人
の演奏が雄弁に語る。無駄なものは一切ない。む
しろシンプリティの極みのようなサウンドなのだ
が、それらに込められた含みや含蓄はもう圧倒的
なまでに清々しい。フロントマンの木下弦二は最
近よくMCで「同じメンバーで20年もバンドをや
っていると家族以上にいい部分も悪い部分も見え
てきます」といった旨を語るのだが、こうした緊
密でしっかりと連携が取れた演奏は、ぼくに友情
という懐かしい言葉を思い起こさせたほど。とく
に今回は音響が秀逸であり、新井健太のプレシジ
ョン・ベースがどれだけホンク・サウンドを支え、
綺麗な裏メロを紡ぎ上げているかを腹の底まで感
じることが出来た。寡黙なベーシストは多くを語
ることはしない。その代わりにアラケンはまるで
歌の影絵へと、そっと歩み寄っていく。

普段の暮らしがある。それは昨日のように今日も
また続き、きっと明日となって更新されていくの
だろう。そこに突然裂け目が出来る。のっぴきな
らない事態が発生する。明るい歌に影が宿る。繋
いだはずの手が綻びを見せる。普段の暮らしを描
いたホンクの明るい歌が感じさせる悲しみとは、
そういうものだ。「いつもいっしょ」の明るい響
きのなかで、ぼくはいつも迷子になる。

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by obinborn | 2013-07-18 01:39 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

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