テデースキ・トラックス・バンドが音楽をすくっと見渡していく

「わあ~、アメリカン・ロックだなあ~!」テデー
スキ・トラックス・バンドの新作『Made Up Mind』
を聞いてまずはそう感じた。力強く剛胆しかも鷹揚。
それでありながら繊細な表情もふと覗かせるのだが、
視界はどこまでも果てしなく広がっていく。こんな
ダイナミズムはぼくが20代の頃夢中になっていたデ
ッドやオールマン、ドゥービーズやフィートを思わ
せるほどで、懐かしさと同時に「いやあ~バンドっ
てこういうもんでしょう~(笑)」と周りの迷惑も
省みず思わず吹聴したくなるほど爽快だ。

思えばグランジ/オルタナティヴの嵐が吹き荒れた
90年代前半の後、にわかに注目され出したのがデ
レク・トラックス・バンドだった。ちょうどジャム
・シーンがブームになり始めていた頃のことであり、
演奏自体の価値というか、フリーにどんどんインプ
ロヴァイズされていく長尺プレイが時代を一回りし
た時点で改めて見直された時期でもあった。デレク
はいわば血統書付きの名馬であったが、それ以上に
彼自身が過去の音楽遺産に対して自覚的だったこと
がいつしかぼくの胸に届いた。ギターは勿論上手く
思わず溜め息が出そうなくらいだが、この若者はア
フロ・アメリカンの音楽の成り立ちに理解を示そう
としていたし、驚くべきことにアラブ地方のチャン
トにさえ敬意を表していた。

彼の姉女房のテデースキをヴォーカルに迎えてから
は第2作となるこの『Made Up Mind』。優れたベ
ーシストのオテイル・バーブリッジ(新生オールマ
ンズの要でもあった)が家族のためにツアーは困難
だと宣言し脱退してしまったのは何とも残念だが、
それでもバンドとして進捗著しいところを聞かせる。
テデースキの歌を活かすためだろうか。アルバム表
題曲である「Made Up Mind」や「Part Of Me」
そして「It's So Heavy」などではギターは控えめで
むしろソング・オリエンテッドな方向性へと舵を取
っているのだが、そうした歌を含蓄あるバンド・サ
ウンドが際立たせていく。まるでアリーサ・フラン
クリンの魂が憑依したような「Sweet And Low」
では、短いフレーズながらデレクが極上の一絞りを
繰り出すといった具合に。

トラックス=テデースキのソングライター・コンビ
に加えて、時折ドイル・ブラムホール2世や元ジェ
イホークスのゲイリー・ルーリスなど外部チームが
がっちりと曲作りに協力している点も見逃せないと
ころ。どこか頭出っかちになりがちなアメリカーナ
・シーンのなかで、テデースキ・トラックス・バン
ドは溢れ出る血と肉とで音楽と向き合っている。そ
の真剣さ。自分たちの音楽を過去との連綿とした連
なりのなかで理解していこうとする謙虚さ。尊厳の
気持ち。そうしたものがぼくをテデースキ・トラッ
クス・バンドへとどこまでもどこまでも駆り立てて
いく。

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by obinborn | 2013-08-24 19:35 | rock'n roll | Comments(0)  

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