ホンクは今日も歌う

やはり東京ローカル・ホンクは最高のバンドだ!
そんな風に改めて思わずにはいられない演奏を29
日は吉祥寺のスターパインズ・カフェにて。今年
の夏ツアーはオオルタイチ+ウタモとともに名古屋、
浜松と回って東京に戻るという比較的短いもので、
この日はさらに先頃デビュー・アルバムを発表した
ばかりの森は生きているを加えたスペシャルな一夜
だったが、ホンクは気負わず、照れず、普段着のま
まで彼らならではのステージを繰り広げた。オオル
タイチ+ウタモを加えた「昼休み」を序盤に用意し
ながら、本編では季節柄ぴったりの「サンダル鳴ら
しの名人」のア・カペラで客席との距離をいきなり
取っ払い、「車のうた」「お手紙」「四月病」など
を元気に弾ませる。

そんな何の変哲もないロック・カルテットにもかか
わらずアンサンブルやコーラスの含蓄深さはどうだ
ろう。四人それぞれが自分の役割を果たしながら、
見事なまでに一枚の絵へとすっぽり収まっていく。
とくに印象深かったのは「おいでおいで」だろうか。
ソングライターである木下弦二がMCで言っていたこ
とをぼくなりに翻訳すれば、今の暗く不穏な世の中
でもあえて明るく肯定的な歌を歌いたい、というこ
とに着地するのだが、どこまでも明晰な発声はこち
らの曇った気持ちさえ晴れ渡らせていくかのよう。

思えば弦二の歌には社会を直截に糾弾したものが一
曲もない。高い社会意識を持ちつつも彼がそれを暗
喩するのは、以前取材でも語ってくれたように歌を
長持ちさせたいが故だろう。この日は選曲されなか
ったが、例えば「目と手」や「いつもいっしょ」の
慈しみの彼方には、遠い国の戦火や身近なフクシマ
の廃墟が見える。そのように考えていくと彼がソン
グライティングに託した思いが、より鮮明に浮かび
上がってくる。ジャム・バンドとしての実力を遺憾
なく発揮した長大なインプロヴィゼーション曲「カ
ミナリ」でも、最後の最後まで端正で綺麗に響く日
本語が小躍りしていた。

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by obinborn | 2013-08-30 02:48 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

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