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1972年のブリンズリー・シュウォーツ

ザ・バンドのフォロワーで思い出すのが英国だとやはりブリン
ズリー・シュウォーツだろうか。メンバーの自宅に8トラック
の機材を持ち込んでレコーディングしたり、好きなオールディ
ーズをカバーする温故知新な選曲にもそれはよく顕われている。
何でもザ・バンドが英国ツアーした際にリハーサル用の家を提
供したらしく、そこに居合わせたボブ・アンドリュースがガー
ス・ハドソンを讃えるべく「素晴らしいです!その価値にあなた           は気が付いていないみたいだけど」と発言し、ガースのプラ
イドをひどく傷付けてしまったとか(笑)

そうした誤解はともかく、ブリンズリーたちのザ・バンド風合
いが最も色濃く反映された作品が72年の『Nervous On The R
oad』だと思う。バンドにとっては4枚めのアルバムに当たる
もので、前作『Silver Pistol』から初参加したイアン・ゴムの
ギターや居場所もいよいよこなれてきたという感じだ。アンド
リュースのオルガンはもとより、演奏全体の何とも埃っぽい匂
いや情感はまさにザ・バンド的であり、さらに下町エレジーを
感じさせるところは、はちみつぱいの『センチメンタル通り』
を思い起こさせたりもする。

ジャケットの中央に映っているのはマーティン・ベルモントだ。
彼は当時ブリンズリーのローディだった男で、のちにダックス
・デラックスやグレアム・パーカー&ザ・ルーモアのギタリス
トとして大成するのだが、そんな彼を何気にジャケットに収め
てしまうところに、ブリンズリーズの何ともファミリー・ライ
クな雰囲気を感じてならない。クリス・ケナーのニューオーリ
ンズR&B「I Like It Like That」が消えると、次に控えるのは
まだ20代だったニック・ロウが書いた「Brand New You, Bra
nd New Me」だ。まるで今までのお祭りが終わり、夜が明け
て、早朝の汽車で一人旅立っていく男のような歌。窓辺に差し
込んでくるその日初めての陽の光が彼を照らし出す。汽車は轍            を描きながら昨日のことをそっと線路の脇へと置いていく。そ
してまた歌が静かに滑り出してゆく。


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by obinborn | 2013-10-06 01:54 | rock'n roll | Comments(0)  

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