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普段着の言葉と音楽〜東京ローカル・ホンクのこと

シンプル極まりないロック・カルテットなのに
音はどこまでも豊か。その流れに身を委ねてい
るだけでとても幸せになってくる。そんな東京
ローカル・ホンクのライブを7日は青山の月見
ルにて。彼ら四人にとってはまるで手となり足
となった曲の数々であり、ぼくにとってもすっ
かり聞き慣れたナンバーばかりだったが、それ
でもじわっと凝縮された無駄一つないアンサン
ブルはいつもフレッシュで、また同時に通り過
ぎてきた歳月を感じさせるもの。例によって客
席に降りてきてノンマイクで歌うアカペラの「
サンダル鳴らしの名人」に始まり、普段着の言
葉を丁寧に慈しんでいく「お手紙」や町の景色
や人々の気配をユーモラスに切り取った「拡声
器」などへと束ねてみせる。終盤ではメッセー
ジ色の強い「社会のワレメちゃん」と生命讃歌
とでも言うべき「おいでおいで」とをいつもの
ように対にすることで、木下弦二の歌に対する
思いがより逞しく届いていった。

華美なサウンド・スペクタルがあったり、めく
るめく仕掛けが用意されているわけではない。
それでもぼくは物欲しげに他の音楽に気持ちを
移そうとは思わない。それはたぶんホンクたち
がぼくと同じように町の匂いを感じ、人々の温
もりを思い、今日もいい日だったなあとしみじ
み振り返りつつ眠りに就くような毎日の感覚を
大事にしながら演奏しているからだ。大切なも
の、愛おしいと心を動かされること。それらを
昨日と地続きのように感じられるかどうか。た
とえそうした光景がある日突然失われ、無慈悲
なまでに打ち砕かれたとしても、ぼくは彼らの
音楽とともに歩んでいくことだろう。

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by obinborn | 2013-10-07 23:13 | 東京ローカル・ホンク | Comments(0)  

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